温室効果ガス算定(Scope2)で使う電力の排出係数はどう使う?算定方法の解説

企業の温室効果ガス(GHG)排出量の算定において、Scope 2は特に重要な指標となります。
Scope 2とは、企業が外部から購入する電力や熱、冷暖房による間接的なGHG排出を指し、その削減は脱炭素経営の大きな課題の一つです。
排出量の算定には「ロケーション基準」と「マーケット基準」の2種類があり、それぞれ異なる視点で排出係数を適用します。
ロケーション基準は、企業が所在する地域の平均的な電力排出係数を用いるのに対し、マーケット基準は企業が契約する電力の種類を考慮し、再生可能エネルギーの導入を反映させることが可能です。
GHGプロトコルやCDPなどの国際基準に沿った正確な算定が求められ、企業の環境戦略の透明性や信頼性を確保するためにも、最新の排出係数を活用した適切な算定が不可欠です。
本記事では、Scope 2の概要から排出係数の算定方法、企業が取るべき削減施策について詳しく解説します。

Scope2とは
Scope 2は、企業がエネルギーを自ら生成せず外部から購入することで、間接的に排出する温室効果ガス(GHG)の量を指します。
具体的には、企業が電力会社などから購入した電力、蒸気、冷暖房用のエネルギーを消費することで発生するGHGです。
これらは企業の施設内で直接排出されるのではなく、エネルギー供給を担う外部の発電所や供給事業者によって排出されます。
Scope 2に含まれるGHGには、主に二酸化炭素(CO₂)やメタン(CH₄)、亜酸化窒素(N₂O)が挙げられ、企業のエネルギー消費量に応じて排出量が決まるため、企業の間接的な環境負荷を評価する重要な指標となっています。
▼参考:メタンとは? | 温室効果ガスとしての特性と削減策を解説
Scope 2排出量を削減するには、再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率の向上が効果的な手段となります。
再生可能エネルギーの利用では、例えば電力会社から太陽光、風力、水力などのグリーンエネルギーを調達することで、排出量を実質的に低減することが可能です。
また、エネルギー効率の向上としては、企業内で省エネ機器やシステムを導入することで、消費エネルギーを削減し、その分Scope 2の排出量も削減できるようになります。
たとえば、高効率の空調機器やLED照明、エネルギー管理システム(EMS)の導入が挙げられます。
こうした取り組みによって、企業はエネルギー消費による環境負荷を軽減し、脱炭素経営の推進にも寄与できます。
上記のような施策は、脱炭素と共に経費の削減も行えることから、脱炭素経営を実践するにあたって比較的早くに実行されるケースが多いです。
Scope 2排出量の算定には、GHGプロトコルに基づく「マーケットベース(market-based)」と「ロケーションベース(location-based)」の2つの手法があります。
マーケットベースの算定は、企業が購入する再生可能エネルギー証書(RECs)や非化石証書などを考慮して排出係数を調整し、特定の電力源の選択による排出削減効果を反映させることができます。
これは、企業がグリーン電力を積極的に導入した場合に、その排出削減努力を評価できる方法です。
▼参考:非化石証書とは?仕組みと購入方法:企業が知っておきたい基本情報
一方、ロケーションベースの算定は、企業が所在する地域の平均的な電力排出係数を用いるもので、エネルギーの調達元にかかわらず、その地域特有のエネルギーミックス(例:再生可能エネルギーと化石燃料の比率)に基づいて排出量が算出されます。
この2つの手法により、企業は自らの排出削減努力を適切に報告でき、ステークホルダーに対して信頼性のある環境情報を提供できます。
▼参考:エネルギーミックスとは | 日本の現状と未来を考える
Scope 2の算定と報告は、多くの企業にとって持続可能な経営戦略の一環であり、国際的な報告基準(例:GHGプロトコルやCDP)においても推奨されています。
企業にとっては、Scope 2排出量の削減が単に環境負荷を低減する手段にとどまらず、投資家や顧客の信頼獲得、企業価値の向上にもつながるため、その重要性は年々高まっています。
これにより、Scope 2の管理は企業の競争力強化にも貢献し、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みとして広く認識されています。
温室効果ガス算定で使う電気の排出係数とは?
排出係数は、その活動量に対してどれぐらい温室効果ガスが排出されるかの係数になります。
Scope2電気の場合は、発電の際に排出するCO2排出量から計算されます。
▼参考:排出原単位(排出係数)は何を使う?データベースの選び方と活用事例
それぞれ電気に関しては、以下の2つの基準があります。
ロケーション基準
日本全体での排出係数など地域共通の排出係数
電力が消費される地理的な地域(国や地域)全体の平均的な電力供給構成に基づく排出係数を使用します。
メリット:
- 計算が比較的簡単で、必要なデータが容易に入手可能。
- 地域ごとのエネルギーミックスの変動を反映できる。
デメリット:
- 企業や組織が利用している特定の電力供給契約や再生可能エネルギーの購入を反映できない。
- 電力会社から購入する電力が特定の電力源に依存している場合、その実態を反映しない。
海外の算定を行う時も、ロケーション基準の係数は発表されていますので、そちらを算定に使います。
ただ、無料で手に入れられるデータは少し前の年度の係数になっており、最新年度の係数を活用したい場合は、IEAから購入できるデータベースを活用します。
▼参考:IEA(Emissions Factors 2024)
※国際エネルギー機関(IEA):エネルギー安全保障や持続可能なエネルギー政策の推進を目的とする国際機関で、1974年に設立されました。主にエネルギー市場の分析や政策提言を通じて、各国のエネルギー移行を支援しています。
マーケット基準
電力会社との契約しているプランの排出係数を使用して、電力消費によるGHG排出量を算出します。
企業や組織が購入している特定の電力源(例:再生可能エネルギー、特定の電力供給契約)に基づく排出係数を反映します。
利点:
- 企業や組織の実際の電力購入契約や再生可能エネルギーの利用を反映できる。
- 再生可能エネルギーの利用促進や企業の環境配慮を明確に示すことができる。
限界:
- 必要なデータの収集や契約内容の詳細な把握が必要。
- 複数の供給契約がある場合、計算が複雑になることがある。
マーケット基準での算定を行なう時に、購入している電力の電力契約(メニュー)が分からないことがありますが、電力会社に問い合わせすると答えていただけることがほとんどです。
CDPやSBTが準拠しているGHGプロトコルでは、両方の基準での報告が求められます。
▼参考:SBT認定を目指す企業必見!申請で押さえるべき重要ポイント
▼参考:CDPをわかりやすく解説:具体的な取り組み方とそのポイント
※GHGプロトコル:企業や組織が温室効果ガス排出量を測定・報告するための国際的な基準です。Scope1(直接排出)、Scope2(購入電力による間接排出)、Scope3(その他の間接排出)に分類して排出量を報告します。
これにより、温室効果ガス削減に向けた透明性と一貫性が確保されます。
▼参考:Scope3とは?最新情報と環境への影響と企業の取り組み
排出係数を探す時に参照するところ
電気の排出係数は、環境省のHPで発表されています。

例えば2023年度にの算定に使う係数は、2023年度の12月に発表されましたが、その年の実績から電力係数は作られている形になっています。
2023年4月時点では、2023年度の電力係数はまだ発表されていないので、前年の係数などを使って算定しておき、当年度の排出係数が発表された後に係数を選び直す企業もあります。
最新年度提出用まで用意されており算定したい年度にあった排出係数を使いましょう。
それぞれの年度のPDFもしくはExcelのデータベースを開くと、全国の電力会社の調整後排出係数の欄に各メニューにおける排出係数が並んでいますのでマーケット基準で算定したい場合はこちらを使います。
日本のロケーション基準での算定に使う全国平均係数は、データベースの一番下部に載っております。
参考までに直近5年の全国平均係数に
全国平均係数(t-CO₂/kWh)
令和6年度(令和7年度報告用):0.000423
令和5年度(令和6年度報告用):0.000438
令和4年度(令和5年度報告用):0.000434
令和3年度(令和4年度報告用):0.000433
令和2年度(令和3年度報告用):0.000445
令和2年度以前は、沖縄電力も入れた代替値のみとなっておりますので、沖縄電力以外の電力事業者の基礎排出係数が全国平均係数とイコールとして活用ください。
ロケーション基準での算定
ロケーション基準では、上記の排出係数を使いますので、
例えば、令和5年度の実績で5,000kwh使った場合は、
5,000kwh×0.000438=2.19(t-CO₂)
という形になります。
拠点数が多い企業は、こちらのロケーション基準で全てまとめて算定するケースもあります。(徐々にマーケット基準と両方算定される企業が増えていますが)
マーケット基準での算定
マーケット基準では、下図のオレンジ枠の部分調整後排出係数を使っていきます。

例えば、
エバーグリーン・リテイリング(株)社:メニューB(残差)で算定する場合、
※(残差)はメニュー別係数を公表している電気事業者から電気の供給を受けている場合であって、供給を受けている電気に関するメニュー別係数が公表されていない場合に使用する係 数です。
排出係数が、0.000437となっていますので、
5,000kwh使った場合は、
5,000kwh×0.000437=2.185(t-CO₂)
という形になります。
排出係数の更新頻度
更新の頻度は、例年1月中には発表されることが多くなっておりますが、2025年は3月18日に更新されました。
また、7月や9月頃に数値の追加や数値の修正が行われることが多くなっておりますので、最新の数値で算定を行いたい場合は更新を確かめてから算定を行いましょう。
例えば、令和5年度提出用ですと、令和5年1月24日に発表され、5月26日に一部修正が入っており、さらに6月20に補正率追加、7月18日に一部追加と更新が行なわれています。
昨今、温室効果ガス排出量を算定する企業が増えていることから、早めの発表が行なわれるようになっており、発表後に随時更新していく形になっています。
▼参考:環境省 算定方法・排出係数一覧
まとめ
Scope 2は、企業が外部から購入する電力や熱の消費により発生する間接的な温室効果ガス(GHG)排出を指し、その算定と削減は持続可能な経営の重要な要素となっています。
排出量の算定には、地域の電力供給構成を反映する「ロケーション基準」と、企業が契約する電力の種類を考慮する「マーケット基準」の2種類があります。
各基準の適用方法や排出係数の選定は、GHGプロトコルやCDPの国際基準に準拠し、企業の環境情報の透明性向上に寄与します。
Scope 2排出量を削減するためには、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上が有効であり、これらの施策は環境負荷の軽減と同時にコスト削減にもつながります。
また、排出係数の更新頻度や選定方法を適切に管理し、最新のデータを活用することが、企業の脱炭素戦略を強化する鍵となります。
