SBT認定を目指す企業必見!申請で押さえるべき重要ポイント

気候変動対策への企業の取り組みが世界的に注目される中、科学的根拠に基づいた温室効果ガスの削減目標であるSBT(Science Based Targets)への関心が急速に高まっています。

SBTは、パリ協定に沿った温室効果ガス排出量削減の国際基準として、信頼性の高い目標設定を可能にする枠組みです。
企業がSBT認定を取得することで、ESG評価の向上や投資家からの信頼獲得、さらには新たなビジネス機会の創出にもつながります。

SBTの資料はこちら  

本記事では、SBT認定の基本的な仕組みから申請の流れ、中小企業向けの特例制度、費用、取得のメリットまで、実務に即した視点で詳しく解説します。

持続可能な経営の第一歩として、ぜひご活用ください。

目次

1.SBT認定とは何か?

SBTとは、正式にはScience Based Targetsといって、「気候科学に基づく温室効果ガスの削減目標」のことを指します。
これは、パリ協定によって定められた世界共通のCO2削減目標の基準です。

SBTに基づいてCO2削減の目標を定めていれば、外部公表の際にも納得感のある削減目標が設定されていると評価されることから、多くの企業で採用されています。

SBTの水準と整合した目標を企業も設定し、国際環境NGOのCDP(Carbon Disclosure Project)や世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)によって設立されたSBTi(SBTイニシアティブ)に申請を行うと、整合性のある目標であることの承認を受けることができます。
承認を受ければ、SBT認定企業ということがSBTiウェブサイトでも公表されます。

▼参考:CDPとは!?2024年版の変更点について詳しく解説

2.SBTのCO2削減目標基準

短期目標と長期目標がある

目標は具体的に定められており、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える努力をする」と示されています。
そのために必要な削減目標は長期と短期またはそのどちらかで計画します。
短期目標は、基準年から5年以上10年以下となります。
長期目標はネットゼロ以外認められないことから、ネットゼロ目標とも呼ばれています。

ネットゼロ目標は最長でも2050年に達成する基準での削減が求められており、基準年から目標年までを直線的に毎年削減する計画を立てる必要があります。

※中小企業版は基準年が2018年以降となります。

算定範囲と削減目標の基準

SBTの申請には通常SBTと中小企業版の2つが用意されています。
中小企業版については、条件が優しくなっています。

中小企業版の申請条件

  1. スコープ1とロケーションベースのスコープ2全体で10,000t-CO2e未満である
  2. 金融機関 (FI)および石油・ガス (O&G) セクターではない
  3. セクター特化のガイダンスが無い
  4. 通常のSBT検証で検証される親会社の子会社ではない
  5. 以下の3つ以上に該当する 従業員数250名未満売上高 <5,000万ユーロ(約80億円)総資産 <2,500万ユーロ(約32億円) FLAG セクターに属さない

▼参考:中小企業版SBT認証を目指す企業必見!申請基準(2025年2月現在)と申請ポイント

▼出典:SBTiサイト Setting a target as an SME(chromeの翻訳機能で日本語へ)

セクター別ガイダンスも活用

セクターガイダンスやFLAGセクターというのが出てきましたが、これは業界毎に別途基準が開発されており、該当する場合はそちらのガイダンスに沿った形で目標設定を行えます。

開発状況がHPにも掲載されていますので、申請前に下記URLから確認をしておきましょう。(2025年4月現在)
https://sciencebasedtargets.org/standards-and-guidance

3. SBT認定の取得状況

2025年4月現在、認定とコミット(2年以内にSBTの認定取得を目指すことを宣言すること)を合わせて世界10,299社(うち⽇本企業1,525社)がSBTに取り組んでいます。

また、2023年2月から約2年で3.6倍超まで増加していることから、日本企業が非常に積極的にSBT申請を行っていることが分かります。
取引先から取引条件にSBT認定の取得が必要なケースも増えており、そういった背景からも増加傾向にあると思われます。

▼出典:環境省 SBT(Science Based Targets)について

4.SBT認定に取り組むメリット

ここまでSBT認定に関しての概要に触れてきましたが、その取得によってどのようなメリットがあるのかを整理しました。

・CDP評価の向上

CDPとは、温室効果ガスの排出量や気候変動への取り組みに関する質問書を企業に出して情報を収集・評価し、公表をしている国際NGOです。
気候変動へ関心のある機関投資家から支持されています。

CDPの質問書にはSBTに関する質問もあり、評価対象になっているためスコアリング結果にも影響してきます。

▼出典:環境省 SBT(Science Based Targets)について

▼参考:CDPとは!?2024年版の変更点について詳しく解説(2025年のスケジュール発表)

・投資家からの信頼

機関投資家は、中⾧期的なリターンを得るために企業の持続可能性を評価します。
前述したようにCDPの採点においても評価されるため、投資家からのESG投資の呼び込みに役⽴ちます。

実際に、SBT企業の185社の企業の役員へアンケートを実施した結果、52%が信頼向上につながったことを実感したと回答しています。
([出所]Science Based Targetsホームページ)

・ビジネス機会の獲得

大手企業ではサプライヤーへSBT目標の設定を依頼している企業もあります。
SBT認定を取得していれば、新しい顧客の開拓や顧客離れのリスクの低減にもつながると考えられます。

コスト削減やイノベーションの機会

排出量削減目標の達成に向けて、企業が省エネルギー製品や再エネルギー製品の開発、業務効率化に取り組むきっかけを作り、コスト削減やイノベーション促進につながる可能性があります。

・企業のイメージアップ

環境問題への取り組みは私たちの生活を持続可能なものとするためにも必要不可欠です。
特に日本全体のCO2排出量のうち企業活動が占める割合は80%以上と言われています。
企業として温室効果ガス削減に努めていくことは、環境問題に貢献できる上にブランドイメージや社員の意識を高める働きも期待できるでしょう。

5.SBT認定にかかる費用と必要書類

SBT申請費用

以下は2024年6月時点の費用です。(SCIENCE-BASED TARGETS TARGET VALIDATION SERVICE OFFERINGS

最新の費用はSBTi HPから確認するようにしてください。

  • 短期目標(初回申請)  $11,000
  • Net-zero目標(初回申請)  $11,000
  • 短期目標またはNet-zero目標の更新  $5,500
  • 短期目標(初回申請)とNet-zero目標をまとめて申請 $16,750
  • 短期目標(再申請)とNet-zero目標をまとめて申請 $14,750
  • FLAG目標の申請 $8,500 ※FLAG目標を設定する場合に追加で必要
  • FLAG目標の更新 $4,250
  • 金融向けSBTの申請 $16,750
  • 金融向けSBTの更新 $8,500
  • 中小企業向け短期目標 $1,250
  • 中小企業向けネットゼロ目標 $1,250

SBT申請に必要な書類

目を通すべき資料(2024年4月時点)

  • Corporate Near-Term Criteria(V5.2)→短期目標の要件
  • Corporate Net-Zero Standard(V1.2)→Net-Zero目標の要件
  • Procedure for Validation of SBTi Targets →目標の検証プロセス手順
  • SBTi-Target-Setting-Tool →短期目標値を設定できるExcel
  • Net-Zero-tool →Net-Zero目標を設定できるExcel
  • SBTi Criteria Assessment Indicators →提出するExcelの評価基準を解説
  • SBTi Corporate Target Submission Form →SBTiに提出するExcel
  • SBTi Criteria and Recommendations(V5.1)→必須・推奨事項の説明

セクターガイダンスやFLAGツールなどは、対象企業の場合別途確認してください。

6.SBT認定を受けるまでの流れ

コミット表明(任意)

前述した通り「コミット」とは、2年以内にSBT⽔準の排出削減⽬標を設定し、SBT運営事務局に申請することを、対外的に宣⾔することです。

コミットしたい企業は、ウェブからダウンロードできるレターに企業名・⽇付・場所・署名を記入し、事務局の担当窓口へ送付します。
コミットを⾏うことでSBT運営事務局のウェブサイトに企業名が掲載され、対外的に企業が脱炭素に取り組む姿勢をアピールできます。

温室効果ガス排出量の把握

Scope1〜2の範囲である事業者⾃らの排出量や、Scope3といわれる事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量の把握・削減が求められます。

温室効果ガス排出量算定に関しては専門知識が必要だったり社内での情報収集の手間がかかるなど、作業負担の多い作業にもなりますので、専用の温室効果ガス排出量算定ツールを用いるなどで算定にかかる負担を減らして取り組むのがおすすめです。

目標の設定と申請

目標年・基準年・対象範囲・目標水準などの項目ごとに要件があります。
要件を満たすように、目標を設定します。

質問・検証・承認

申請書を提出します。SBT事務局による⽬標の妥当性確認が⾏われ、認定基準への該否を審査され、メールで回答されます。
晴れて⽬標が認定された場合、SBT運営事務局のウェブサイトに企業名及び⽬標が公開されます。
ちなみに不合格の場合は、SBTiとのミーティングが可能です。

7.まとめ

SBT(Science Based Targets)は、パリ協定に整合した温室効果ガス削減目標を設定できる国際認証制度であり、企業が持続可能な経営を進める上で欠かせない仕組みです。

認定を受けることで、ESG評価の向上や投資家からの信頼獲得につながり、ビジネス機会の拡大やブランド価値向上も期待できます。

申請には短期目標・ネットゼロ目標の設定が必要で、Scope1・Scope2に加えScope3を含む場合もあります。
特に中小企業には申請基準を簡略化した制度が用意されており、取り組みやすさが高まっています。

費用は規模や目標内容に応じて異なりますが、国際的に認められる認証であるため投資家対応や取引条件にも有効です。

SBT認定取得は、単なる環境施策ではなく長期的な企業価値の向上と脱炭素社会の実現に直結する重要なステップです。

▼参考:SBTi HP

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