CDPとは!?2024年度からの変更点について詳しく解説(2025年のスケジュール発表)

気候変動や水資源の枯渇、森林破壊といった地球規模の環境課題が深刻化するなか、企業や自治体に求められるのは単なる環境配慮ではなく、科学的根拠と透明性に基づいた実効的な取り組みです。

こうした時代の要請に応えるべく、2000年に設立された国際非営利団体「CDP(旧:Carbon Disclosure Project)」は、環境情報の開示を通じて持続可能な社会への移行を加速させるためのグローバルプラットフォームとして大きな役割を果たしてきました。

現在では、S&P500の85%、FTSE100の93%といった世界的な企業が参加し、そのデータは130兆ドル以上の資産を運用する金融機関にも活用されています。

CDPの特徴は、単なる情報の収集・開示にとどまらず、スコアリングやベストプラクティスの評価を通じて、企業・自治体が環境課題に本質的に向き合うための行動変革を促す点にあります。
特に2024年度からは、これまで気候変動・水・森林に分かれていた質問書が統合され、環境課題の相互関係を踏まえた開示体制へと進化しました。

また、売上77億円未満または従業員500人未満の中小企業向けには、簡素化された「CDP SME版」も新設され、より多くの企業がサステナビリティ戦略を構築できるよう支援が広がっています。

本記事では、CDPの概要から最新の制度改定、スコアリングの仕組み、サプライチェーンプログラムの拡張、ノンディスクロージャーキャンペーンの影響、さらには企業が実務でどのように活用できるかまで、CDPを初めて知る方から実務担当者まで役立つ情報を包括的に解説していきます。

持続可能な未来を築くために、CDPがなぜ今、これほど注目されているのか。その核心に迫ります。

目次

CDPとは


CDP(Carbon Disclosure Project)は、企業や自治体が気候変動や環境に関する取り組みを透明性高く公開し、持続可能な社会への移行を促進するための国際的な非営利団体です。
2000年に設立されたCDPは、気候変動問題が世界的な課題として認識される中で、企業や自治体、地域が自らの環境パフォーマンスを測定し、改善を目指すための重要なプラットフォームとして機能しています。

現在では、世界中で多くの企業や都市がCDPを通じて環境に関するデータを公開しており、これにより投資家やステークホルダーが科学的根拠に基づいた意思決定を行うことが可能になっています。
S&P500の85%、FTSE 100の93%を含む、世界の時価総額の3分の2を占める企業がCDPを通じて開示をしています。

▼参考:FTSEとは?ESG評価の基準と企業におけるESG評価の活用

CDPが注力しているのは、主に「気候変動」「水資源管理」「森林保全」の3つの分野です。たとえば、気候変動分野では、企業の温室効果ガス排出量や削減目標、再生可能エネルギーの活用状況が詳細に報告されます。

水資源管理では、水の利用効率や水リスクの対応状況が問われ、森林保全では、パーム油や木材、大豆、牛肉といった特定資源の調達が環境に与える影響が評価されます。
これらの情報は、企業が持続可能性を高めるための具体的な行動を設計するうえで、重要な指針となっています。

▼参考:再エネ導入を考える企業必見|再生可能エネルギーの種類・導入方法・成功事例

CDPが特徴的なのは、単なる情報開示の枠を超えて、環境課題への具体的なアクションを促す仕組みが整っている点です。
たとえば、CDPのスコアリングシステムは、開示の透明性、環境管理の成熟度、さらには業界のベストプラクティスの採用状況を評価します。

この評価により、企業は自社の課題を把握できるだけでなく、競争優位性を高めるための指針を得られるのです。
特に、CDPの最高評価である「Aリスト」に選ばれることは、企業の環境意識の高さと持続可能な経営へのコミットメントを示す重要な証となっています。
例年、2月初旬前後にAスコアを獲得した企業のプレリリースが多く見られます。

▼参考:CDPスコアとAリスト

さらに、CDPは投資家との連携に力を入れています。
現在、世界680以上の金融機関がCDPのデータを活用しており、これらの機関が管理する資産総額は130兆ドルを超えています。
このような巨大な資産規模を背景に、企業に対して環境関連データの開示を強く促すことで、持続可能な経済への移行を加速させています。

また、CDPのデータは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やSBTi(Science Based Targets initiative)といった他の国際的な枠組みとも連携しており、これらと一体的に活用することで、企業はより包括的なサステナビリティ戦略を構築することができます。

▼参考:SBT認定を目指す企業必見!申請で押さえるべき重要ポイント

▼参考:TCFD終了!?新しい気候変動開示基準 IFRSと日本への影響について

CDPが提供する影響は、企業や投資家にとどまりません。
都市や自治体もCDPのプラットフォームを利用することで、自らの気候変動適応計画や排出削減戦略を策定しています。

これにより、地域全体での持続可能な発展が促進され、社会全体がその恩恵を受けています。
CDPは単なる情報公開のツールではなく、企業や自治体が持続可能性を具体的に行動に移すための「橋渡し」の役割を果たしているのです。

▼参考:自治体版の情報開示「CDPシティ」│2024年版アップデート

気候変動への危機感が高まる中、CDPの重要性は年々増しています。
データの透明性がもたらす信頼性と、科学的根拠に基づく指針が企業や自治体にとって不可欠な要素となりつつある現在、CDPはより良い未来を築くための土台となる存在として、今後もその影響を拡大していくでしょう。

主な活動


年に一度、環境に関する質問書を発行し、「回答要請を受けた企業」または「自主回答した企業」の回答に対し独自の評価を行い、その結果を開示しています。
開示された情報は、CDPに加盟している機関投資家や企業などによって閲覧され、回答企業の取り組みに対する理解や評価、投資における判断基準として役立てられています。

図1:CDPの仕組み

※CDPの略:もともとCarbon Disclosure Projectの略でしたが、あとから気候変動だけでなくフォレストや水セキュリティも追加されたため、現在はCDPとして表記されています。

2024年度の大きな変更点


01_質問書の統合

2023年までは質問書が3つ(気候変動、水、フォレスト)のカテゴリに分かれていて、それぞれ回答していました。
しかし2024年度からは、環境テーマごとの個別質問書から、単一/統合質問書での環境情報の報告を企業に求めるように変更

✔ 統合の背景
・反復的な質問をなくし報告負担を軽減する
・企業が環境問題の相互関連性に取り組むことを促していく

02_企業規模に合わせた質問書

✔ SME(中小企業)版質問書の登場
・質問数を減らし、質問形式を簡素化、質問内容が分かりやすいガイダンスを充実
・2024年SMEは気候変動のみ(フォレスト、水セキュリティは最低限の質問を用意)
・SMEのスコアリングは気候変動のみ
・昨年まであった簡易版質問書は廃止

▼参考:中小企業向けCDP「CDP SME」とは?活用方法とメリットを徹底解説!

✔ 対象企業
年間売上高_77億5000万円未満(5000万ドル)※155円/ドル

または、

従業員数_500名未満

▼出典:CDP https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/009/085/original/CDP2024コーポレート質問書概要.pdf

03_回答事務費用(料金プラン)

✔ 「初回料金免除」の廃止
✔    約 5%の値上げ
✔    SME(中小企業)版質問書も下記プランから選択

04_2024年度回答スケジュール及び2025年回答スケジュール

2025年のスケジュールについて、既に簡易発表されています。

3月31日の週: 開示依頼者(サプライチェーンメンバー)向けポータルオープン

5月19日の週: 開示企業向けポータルオープン

9月15日の週: スコアリングの対象となる回答期限

年内: スコアリリース予定

回答について基本的には2024年とあまり変わらないスケジュールとなっています。

▼参考:CDP 2025開示サイクル

CDPについてよくある質問


各質問書の歴史


質問書は大きく3つのカテゴリに分かれています。

01_気候変動レポート

一番歴史の長いCDPを代表する質問書で、気候変動の課題に対しての各企業の取り組みや戦略を評価し公開しています。

企業の温室効果ガス(GHG)排出量の計測や削減目標の設定、エネルギー利用の効率化、再生可能エネルギーの導入等が対象です。

02_水セキュリティレポート

2009年に開始された水にかかわるリスクを調査・情報公開しているプログラムで、調査は2010年にスタートしました。

企業の水使用量とそのリスク評価、水資源管理の取り組み、水関連のステークホルダーとの協働などが対象です。

03_フォレストレポート

森林保全のための企業の取り組みや、森林減少が企業自身にどのような影響を及ぼすと認識しているかなどを調査し、各企業の森林への対応を評価するプログラムです。

企業の森林依存ビジネスや森林保護の取り組み、森林認証の導入状況、森林関連のステークホルダーとの連携などが対象です。
もともとGlobal Canopy Programという他のNGOが2009年から実施していましたが、2013年にCDPへ統合されました。

CDPスコア(D~Aの8段階)


図2:CDPスコア

・4つの評価レベルと、8段階のスコアがある
・各評価レベルでは、一定の閾値が設けられており、得点がそれ超えているか否かでスコアが決まる
・上のレベルでのスコアをとるためには、下のレベルでの閾値を超えている必要がある
・最高スコアの「A」の獲得には、得点だけでなく、報告範囲の重大な除外がないか、回答を公開しているか、ESGに関わる顕著な問題がないか等の追加的な要件も満たすことが必要
・金融機関からの回答要請を受けているにも関わらず、無回答であった企業は「F」評価
・環境負荷が高いセクターには、セクター固有の質問・評価基準が設けられている

2つのプログラム


01_シティプログラム

自治体に向けて環境対策についての質問書を送付し、回答を評価します。
質問書には、気候変動ハザードや自治体の温室効果ガスの排出量、それらへの対策についての項目があります。2020年に日本では東京都、横浜市が回答しています。

02_サプライチェーンプログラム

2007年に開始された、サプライチェーンを対象に行っている調査プログラムです。(サプライチェーン:原料調達~廃棄までの一連の流れ)

一般的にはCDPから企業に向けて回答要請するケースが多いですが、本プログラムはCDPから企業のサプライヤーに対して回答要請を行う仕組みになっています。
そのため、前者では上場企業が回答の中心になりますが、本プログラムでは中小企業や非上場企業も回答要請先となります。

この取り組みにより、非上場や中小企業にも質問書の回答要請が来る可能性が高まりました。

ノンディスクロージャーキャンペーン


CDPに加盟している機関投資家が、前年度回答していない企業へ情報開示するように働きかけを行うことをいいます。
質問書に回答する企業は年々増加しておりますが、CDPの活用メリットを見いだせていない企業もまだ多いのが現状です。

キャンペーンでメリットを伝えることで、情報開示する企業数を増やし、質の高い情報がさらに公開されていくことを目指しています。


(以下、2023年5月31日カーボンディスクロージャーレポートより)

本キャンペーンは、金融機関がその影響力とマーケットでの立場を活用して、CDPの開示要請に応じなかった企業の情報開示を促進することを目的としています。   

2022年のノン・ディスクロージャー・キャンペーン (NDC) は環境への影響が大きい388社から回答が得られ、金融機関が直接アプローチすれば企業全体で2.3倍も多く開示されることが実証されました。

2023年は住友生命保険、シュローダー、キャセイ、アビバ、マニュライフ、AQR、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)、PGGMが加わり、31カ国にわたる総額で29兆米ドルという驚異的な資産を持つ金融機関が、非開示企業へCDP開示を促しています。

2017年にキャンペーンが開始されて以来、金融機関の参加数は4倍以上、前年比平均約33%増加しています。

2023年のキャンペーン対象企業(非開示企業)には、サウジアラムコ、エクソンモービルコーポレーション、グレンコア、シェブロン、テスラ、ボルボグループ、ロシュホールディングAG 、キャタピラーなどが含まれます。

全体では51カ国にまたがる環境に及ぼす影響の大きい企業1,607社が対象となり、世界の時価総額21兆 米ドル以上(2023年2月現在)をカバーし、年間推定42億トンCO2e以上を排出しています。これは英国、EU、カナダを合わせた温室効果ガス排出量に相当します。


実績


企業と自治体の環境活動について世界最大級のデータが集積されているため、CDPは環境情報開示のグローバルスタンダードとなっています。

2022年度は全世界約18,700社(日本企業1,700社超)の企業が気候変動、フォレスト、水セキュリティに関する情報を開示し、そのうち15,000社がスコアリングを受けています。

2022年のAスコア企業は、世界330社(日本92 社)を超える企業が、気候変動、フォレスト、水セキュリティに関する環境情報開示の透明性とパフォーマンスにおいて、業界をリードしています。

まとめ

CDPは、企業や自治体に対して環境情報の開示を促す国際的な枠組みであり、世界的に最も信頼性の高い開示基準のひとつとして位置づけられています。

2024年度には質問書の統合中小企業向け「CDP SME」質問書の導入など、大幅な制度改定が行われ、より多くの企業が負担を軽減しながら持続可能性への取り組みを可視化できるようになりました。

また、サプライチェーンプログラムの拡大により、非上場企業や中小企業にも開示要請が及ぶケースが増えており、環境配慮は今や大企業だけの課題ではなくなっています。
加えて、金融機関によるノンディスクロージャーキャンペーンの影響力も年々強まっており、情報を開示しないことによるリスクが顕在化しています。

CDPは単なる報告義務の手段ではなく、企業価値の向上と信頼獲得の鍵となる戦略的ツールへと進化しており、これからの経営に不可欠な存在といえるでしょう。

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【出典】

CDP ホームページ  https://www.cdp.net/en/info/about-us

2023年 CDP気候変動質問書回答に向けて(詳細版) ver. 1

CDP概要と回答の進め方2022

ノンディスクロージャーキャンペー2023

CDPヘルプページ 

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