中小企業向けCDP「CDP SME」とは?活用方法とメリットを徹底解説!(2025年版)

環境への取り組みが企業評価に直結する時代、中小企業にもサステナビリティへの対応が求められています。
しかし、大企業と比べてリソースの限られる中小企業にとって、具体的にどこから手をつけるべきか迷うことも多いでしょう。

CDPの資料はこちら  

そこで注目されるのが、国際的な環境情報開示プラットフォーム CDP(Carbon Disclosure Project) の中小企業向けプログラム 「CDP SME」 です。

CDP SMEとは、環境に関する情報を開示し、持続可能な経営を推進するための仕組み であり、サプライチェーンの要請や投資家からの期待に応える手段としても活用されています。
大企業だけでなく、中小企業がこのプログラムに参加することで、環境意識の向上、企業価値の向上、ビジネスチャンスの拡大 という大きなメリットを得ることができます。

特に2024年のCDP SMEでは、質問書の簡素化やスコアリングの見直しなど、中小企業にとってより回答しやすい仕組みが整備されました。
環境経営を強化したい、サプライチェーンの要請に対応したい、ESG投資の流れを活かしたいと考える企業にとって、この機会を活用することは競争力を高める鍵となるでしょう。

本記事では、CDP SMEの基本概念から、参加することで得られるメリット、回答プロセス、2025年の最新変更点まで、中小企業が知っておくべきポイントを徹底解説します。

これからCDP SMEに参加を検討する企業が、どのように取り組めばよいのか、何を準備すべきかを明確にできるよう詳しく解説していきます。

目次

CDPとは?

CDPの基本概念

企業活動が環境に与える影響が注目される中、投資家や消費者は企業の環境対応を重視しています。
こうした背景の中、企業の環境情報を透明化し、環境戦略を推進するために設立されたのが CDP(Carbon Disclosure Project)です。

▼参考:CDP公式サイト

CDPは、企業や自治体が気候変動・水資源・森林破壊などの環境課題への対応状況を評価し、情報開示を促進する国際的なプラットフォームです。
2000年にイギリスで設立され、現在では世界中の企業や自治体がCDPを通じて環境情報を開示しています。
2024年には、世界の時価総額の66%以上を占める24,800社がCDPを通じてデータを開示しました。

CDPの情報開示プログラムは、単なるデータ収集にとどまらず、企業が自社の環境リスクを把握し、改善のための行動を取るための指標として機能します。
環境負荷の可視化を通じて、企業は環境戦略を明確にし、持続可能な経営を推進できます。

▼参考:CDPとは!?2024年版の変更点について詳しく解説(2025年のスケジュール発表)

▼出典:CDP[企業向け] CDP概要と回答の進め方(2024年5月)

CDPの目的と重要性

CDPの目的は、企業や自治体が環境リスクを適切に管理し、持続可能な社会の実現に貢献することです。
環境問題は企業経営において無視できないリスクとなっており、対応の遅れは投資家からの評価低下、サプライチェーンでの取引機会の喪失、規制強化によるコスト増加など、事業継続に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

▼参考:【2025年最新】カーボンニュートラルとは?現状と今後のトレンド

そのため、CDPは企業に対し、気候変動・水資源・森林破壊に関する情報を体系的に開示することで、環境負荷の現状を把握し、具体的な改善策を講じる機会を提供しています。
このデータをもとに、投資家や金融機関はESG(環境・社会・ガバナンス)投資の判断を行い、大企業はサプライチェーン管理の一環として取引先の環境対応を評価します。

▼参考:森林と生物多様性の深い関係を探る

▼参考:ESGとは?サステナビリティ経営の基礎と最新トレンドを解説

また、CDPは国際的な環境基準との整合性を強化しており、SBTi(Science Based Targets initiative)やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)などと連携することで、企業が環境対応を進めやすい仕組みを整えています。

▼参考:中小企業版SBT認証を目指す企業必見!申請基準(2025年2月現在)申請ポイント

▼参考:TCFD終了!?新しい気候変動開示基準 IFRSと日本への影響について

特に2024年からは、IFRS S2(気候関連開示基準)に整合した質問書の導入など、グローバルな規制や市場の要請に適応する枠組みが強化されました。
これにより、CDPの情報開示は、企業が環境対応の透明性を高め、規制や市場の変化に適応しながら競争力を維持するための重要なツールとなっています。

▼出典:CDP[企業向け] CDP概要と回答の進め方(2024年5月)

中小企業版CDP「CDP SME」の概要

CDP SMEの目的

中小企業にとって、環境対応は企業価値の向上や取引先との関係強化に直結する重要な課題です。
しかし、大企業と比べてリソースが限られるため、どのように環境情報を開示し、持続可能な経営を進めるべきかは大きなハードルとなっています。
そこで、CDP SME は中小企業向けに設計され、環境情報の開示を支援する役割を果たします。

このプログラムの目的は、中小企業が自社の環境負荷を可視化し、長期的な成長と持続可能なビジネスモデルの確立 を進められるようにすることです。
特に、大企業や投資家からの環境対応の要請が強まる中、適切なデータを開示することで、新たなビジネス機会を創出し、サプライチェーンの要件にも対応しやすくなります。

CDP SMEは、単なる環境データの開示にとどまらず、企業が環境戦略を構築し、実行するための基盤を提供します。
温室効果ガス排出量の削減、環境リスクの特定と管理、サステナビリティの向上 を目指し、競争力を強化することにつながります。

さらに、企業の負担を考慮し、大企業向けのCDPとは異なる形で、質問数を削減し、回答しやすい仕組みを整えています。
簡素化された質問書や充実したガイダンスにより、環境情報開示が初めての企業でもスムーズに対応できるようになっています。

▼参考:CDP2024 コーポレート SME(中小企業)版質問書

▼参考:2025コーポレートSME版質問書とガイダンス(英語版:日本語版は2025年5月以降に公開予定)

CDP SMEが対象とする中小企業の定義

CDP SMEの対象となるのは、従業員数500名未満、年間売上高5,000万米ドル(約75億円)未満の企業です。
これに該当する企業は、CDP SMEの質問書を利用し、環境情報を開示することが推奨されています。

また、CDPでは企業規模に応じて、中小企業向けのSME版と大企業向けの完全版の質問書を提供しています。
従業員数が1,000名未満年間売上高が2億5,000万米ドル(約375億円)未満の企業は、SME版か完全版のどちらかを選択できます。(基本的には、完全版を推奨)
それ以上の規模の企業は完全版の利用が求められます。

環境対応能力には企業ごとに差があるため、CDP SMEでは特定の業界固有の質問を省略し、スコアリング対象を気候変動関連のみに限定することで、負担を抑えながらも、国際的な環境基準に沿った情報開示を可能にしています。

▼出典:CDP2025コーポレート質 問書における主な変更点

CDP SMEの具体的な内容

回答内容のセクションと詳細

CDP SMEの質問書は、中小企業が環境情報を的確に開示できるよう、必要な要素をシンプルにまとめています。
2025年度の質問書の変更は軽微に留まっています。
企業の環境パフォーマンスを評価するための主要なセクションがあり、それぞれが具体的なデータの収集と開示を目的としています。

・イントロダクション
企業の基本情報を記載するセクションです。事業の概要、報告年、組織の構造、環境情報を開示する際のバウンダリー(報告対象の範囲)などが求められます。

・リスクと機会の特定、評価、管理
企業が気候変動によるリスクやビジネス機会をどのように認識し、管理しているかを説明します。
たとえば、異常気象による事業への影響や、再生可能エネルギーの活用による新規市場の開拓などが含まれます。

・ガバナンス
環境対策に関する企業の意思決定プロセスや責任の所在を明確にする部分です。
経営層がどのように気候変動リスクを監視し、どのような環境方針を定めているかを報告することが求められます。

・ビジネス戦略
企業の成長戦略において、環境課題がどのように考慮されているかを開示します。
環境リスクに対応するための投資計画や、脱炭素社会に向けた事業モデルの変革についての情報を提供する必要があります。

・環境パフォーマンス
企業が直接排出するスコープ1、購入した電力などのスコープ2、バリューチェーン全体のスコープ3の排出量データを開示します。
加えて、排出削減のための取り組みや目標設定の状況についても報告が求められます。

・追加情報とサインオフ
開示した情報の補足や、最終的な承認に関する手続きを記載する部分です。
回答の正確性を保証するための経営陣の承認プロセスも含まれます。

▼参考:Scope 1とは?企業が知るべき直接排出の全て

▼参考:Scope2とは?定義から具体例まで徹底解説

▼参考:Scope3とは?最新情報と環境への影響と企業の取り組み

▼出典:CDP[企業向け] CDP概要と回答の進め方(2024年5月)

スコアリング基準の理解

CDP SMEのスコアリングは、企業の環境情報開示の透明性と、気候変動対策の進捗を評価するための指標として機能します。
スコアは複数のレベルに分かれており、それぞれの評価基準に基づいて採点されます。

・情報開示(D~D-)
最も基本的なレベルであり、企業が気候変動に関する情報をどの程度詳細に開示しているかを評価します。必要なデータを提出することで、このレベルのスコアが得られます。

・認識(C~C-)
企業が自社の環境リスクをどれだけ理解し、管理しているかを評価します。
たとえば、気候変動が財務に与える影響の特定や、サプライチェーン全体の排出量把握などが含まれます。

・マネジメント(B~B-)
環境対策を実施している企業が得られるスコアです。
具体的な排出削減策の導入、科学的根拠に基づいた目標設定、経営層の環境対策への関与などが求められます。

・リーダーシップ(A~A-)
CDPの最高評価にあたるレベルで、環境リスクに対する積極的な対応と、業界全体の環境対策をリードする姿勢が求められます。
サプライチェーン全体での協力、革新的な環境対策の導入、透明性の高い情報開示が評価の対象となります。

スコアリングの対象となるのは、主に気候変動に関連する開示情報であり、水資源や森林管理などの追加項目はスコア対象外となることが特徴です。
(SME版の最高スコアはBとなります)
また、初めてCDP SMEに回答する企業は、スコアを非公開にすることも可能です。

▼出典:CDP[企業向け] CDP概要と回答の進め方(2024年5月)

2025年CDP SME質問書の変更点

全体的な方針変更

  • 質問の構造や関連性を一部調整し、回答者の負担軽減を図っています。
  • 用語の説明やガイダンスの明確化・一貫性強化が行われました。

モジュールごとの主な変更点

モジュール14:イントロダクション

  • 通貨設定(Q14.2):財務情報に使用する通貨に関するガイダンスを明確化。
  • 報告年度終了日(Q14.4):うるう年への対応を反映。
  • 回答対象外の事業体(Q14.5):特定の事業体が組織の財務諸表に含まれているがCDPの回答には含まれていない理由を説明する新しいガイダンス追加。

モジュール15:リスクと機会の特定、評価、管理

  • 軽微な変更のみ。

モジュール16:リスクおよび機会の開示

  • Q16.1.1:リスク発生河川流域の選択肢とガイダンス更新、財務影響の報告が可能に。
  • Q16.3.1:機会発生河川流域とコモディティ列の表示条件を明確化。

モジュール17:ガバナンス

  • 軽微な変更のみ。

モジュール18:事業戦略

  • Q18.1.1:環境課題とリスク/機会との関連を示す列と例を追加。
  • Q18.2:移行計画のエビデンスとなる可能性を示すが、これは「ベストプラクティス」ではない。
  • Q18.3:バリューチェーンのステークホルダーの定義を広げるガイダンスを追加。
  • Q18.4:削減量の単位(CO2eトン)での報告を明記。

モジュール19:環境パフォーマンス(連結アプローチ)

  • 変更なし

モジュール20:環境パフォーマンス(気候変動)

  • Q20.2:選択肢が更新。
  • Q20.3:特定の事業体が組織の財務諸表に含まれているがCDPの回答には含まれていない事業体の扱いに関するガイダンスを追加。
  • Q20.4:行の表示条件やリース資産に関するガイドを追加。
  • Q20.12:排出量列が常時表示されるよう変更。
  • Q20.15.1/15.2:再エネの定義と用語説明を見直し。
  • Q20.16.1/16.2:SBTi公式認定レターの個人情報は編集するよう明記。原単位指標に関する一貫性を求めるガイダンスを追加。
  • Q20.16.3:「その他の気候関連目標」選択時の表示条件を修正。関連用語も新たに追加。
  • Q20.17.1:「イニシアチブのカテゴリ」と「種類」を統合し、回答負担を軽減。

モジュール21:最終承認

  • 変更なし

▼出典:CDP2025コーポレート質 問書における主な変更点

よくある質問

申請のスケジュールは?

CDP SMEの申請のスケジュールを2024年を参考に説明します。

CDPの情報開示プロセスは、企業が環境データを収集・整理し、回答を提出するまでの流れを計画的に進められるように設計されています。

1. 質問書・ガイダンスの公開(3月31日週)
CDP SMEの質問書やガイダンス資料が正式に公開されます。この時点で、企業はどのような質問に回答する必要があるのかを確認し、準備を開始できます。

2. CDPポータルのオープン(4月28日週)
2025年4月より、CDPポータルが開放され、情報開示を求める機関(投資家やサプライチェーンメンバーなど)が要請を送信できるようになります。
6月には、企業向けにポータルがオープンし、回答対象企業がアクセスできるようになります。

3. 回答要請機関の開示要請先リスト提出締切(6月9日週)
CDPの回答要請機関は、対象企業リストを毎年6月9日週までに提出する必要があります。これは、CDPが質問書公開や回答準備に先立ち、要請対象を確定するための重要な期限です。
期限内の提出で、企業への正式な開示要請が可能となり、スコアリングにも反映されます。

4. オンライン回答システム(ORS)のオープン(6月16日週)
企業は6月16日週からCDPのオンライン回答システム(ORS)を利用して、環境データの入力を開始できます。
この時点から、企業は質問書の各項目に沿って、必要な情報を整理し、回答を作成することが求められます。

5. 回答提出期限(9月15日週)
スコアリング対象となる回答を提出する締切は9月15日週です。この期限までに提出された回答のみが、CDPのスコアリング対象となります。
そのため、企業はこの日までにすべてのデータを整え、提出を完了させる必要があります。

6. 最終提出期限(11月17日週)
スコアリング対象外の回答提出の締切は11月17日週です。
スコアを取得しない場合でも、企業はこの日までにデータを提出することで、情報開示の実績を残すことができます。

7. スコアリングプロセスと結果の公表(12月~2026年2月)
9月15日週までに提出された回答をもとに、CDPはスコアリングを行います。
結果は通常、12月から翌年2月頃に発表され、企業ごとに評価が付与されます。
スコアを公開する企業は、投資家や取引先が評価結果を確認できるようになります。

8. 追加サポートと次年度の準備(2026年1月~3月)
CDP SMEのスコアを取得した企業は、その結果を分析し、次年度の改善計画を立てる時期に入ります。
企業は、環境対策の強化やデータ精度の向上を目指し、次回の情報開示に向けた準備を進めることが推奨されます。

このように、CDP SMEのスケジュールは明確に設定されており、企業は各フェーズに沿って情報開示を進めることが求められます。
特にスコアリング対象となる9月15日週の提出期限を守ることが重要 であり、計画的な準備が企業の評価向上につながります。

▼出典:CDP公式サイト 2025開示サイクル

CDP SMEの費用はどのくらい?

CDP SMEの申請には、環境情報開示の事務費用 が必要です。
企業のニーズに応じて 「Foundation Level」「Enhanced Level」 の2種類のプランが用意されています。こちらは、SMEも通常版も同じ金額となります。

・ Foundation Level(310,000円・税抜)
基本的な情報開示を行いたい企業向けのプランで、CDPのプラットフォームを通じた開示が可能です。報告フレームワークやガイダンスへのアクセスも含まれ、環境対応の第一歩を踏み出すのに適しています。
また、CDPの地域イベントへの参加が可能で、他社との交流を通じて環境戦略の理解を深めることができます。

・Enhanced Level(740,000円・税抜)
より包括的なサポートを求める企業向けのプランで、Foundation Levelの内容に加え、対外的な環境対応のアピールを強化できる仕組みが整っています。

  • CDPサポーターマークの使用権CDPウェブサイトへの企業名掲載により、環境対応への取り組みを広く発信可能。
  • ベンチマークレポートを通じて、同業他社との環境パフォーマンス比較が可能。
  • CDPディレクターからのコメントをサステナビリティレポートに掲載でき、企業の環境戦略を対外的に示せる。
  • サプライチェーンの環境活動スクリーニングにより、取引先の環境対応状況を可視化。

などいくつかの違いがあります。

▼参考:CDP よくある質問(FAQ)

▼参考:サステナビリティレポートとは?│作成方法と重要性を自社の取り組みを交えて説明

まとめ

CDP(Carbon Disclosure Project)は、企業や自治体が気候変動・水資源・森林破壊といった環境課題にどう取り組んでいるかを、国際的に開示・評価するためのプラットフォームです。

世界中の投資家や大企業がCDPの情報をESG投資やサプライチェーン管理の判断材料とする中、日本の中小企業にとっても対応の重要性が高まっています。

中小企業向けに設計された「CDP SME」は、従業員500名未満・年商5,000万ドル未満の企業を主な対象とし、大企業向けの完全版より質問数を絞り、初めての企業でも無理なく取り組める構成となっています。

質問項目は、基本情報・気候リスクと機会・環境ガバナンス・戦略・排出データ・最終承認に分かれており、シンプルながら国際基準に整合した構造です。
2025年版ではガイダンスの明確化や構造の一部見直しが行われ、回答しやすさがさらに向上しています。

スコアリングは気候変動関連に絞られ、情報開示の深さと実行力に応じてD〜Aの評価が付けられます(SME版の最高評価はB)。
費用は基本プラン31万円、拡張プラン74万円(税別)で、後者はCDPロゴ使用や他社比較など広報効果も高くなっています。
CDP SMEは、中小企業が取引機会を拡大し、持続可能な経営を実現するための実務的かつ信頼性の高いツールです。

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