環境省が資格の認定を行う脱炭素アドバイザー資格制度認定事業について

脱炭素に向けた取り組みが世界中で加速する中、特に日本では「脱炭素人材」の不足が深刻な問題となっています。

カーボンニュートラルの実現に向けて政府や企業が積極的な対策を打ち出す一方で、それを支える専門人材が不足しているため、目標達成に向けた取り組みが十分に進まないという課題が浮き彫りになっています。

課題への対策の1つが、環境省が認定を行う「脱炭素アドバイザー資格制度認定事業」で、日本国内での脱炭素社会実現を推進するための専門家を育成・認定する制度として徐々に浸透していっています。

この制度は、企業や自治体が温室効果ガスの排出削減に取り組む際に、専門的なアドバイスを提供できる人材を確保することを目的としています。

具体的には、環境に関する技術的な知識や政策理解、脱炭素に向けた戦略の策定支援など、幅広い分野での支援が期待されます。

資格制度の主な目的は、気候変動対策の一環として、以下の点に焦点を当てています。

・企業や自治体が脱炭素化に向けた戦略を策定し、実行するための支援

・環境に配慮した経営を促進し、企業の持続可能性を高める

・地域や産業ごとの特性に合わせた実践的なアドバイスの提供

目次

脱炭素アドバイザー資格制度認定事業の重要性

脱炭素社会の実現には、複雑な課題に対応するための専門知識が不可欠です。
しかし、採用しようにも人材市場にも該当者は乏しく即戦力を採用するのは非常に難しいです。

そういった状況でこの制度は、温室効果ガスの排出削減やエネルギー効率化に関する最新の知識を習得した専門家を育成し、企業や自治体が直面する課題に対する実践的なアドバイスを提供できる体制を整えます。

日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を目標に掲げ、さまざまな施策を打ち出しています。
この資格制度は、国の政策と連携し、地方自治体や企業がより具体的かつ実行可能な脱炭素施策を策定・実行する支援を行う点で重要です。
各地での取り組みを後押しし、全国的な目標達成に貢献します。

世界的にサステナビリティへの関心が高まる中、脱炭素は企業経営における重要なテーマとなっています。
脱炭素アドバイザーは、企業が持続可能なビジネスモデルに転換するための戦略的アドバイスを提供し、環境規制への対応だけでなく、企業価値の向上や市場での競争力強化をサポートします。

企業によっては、サステナビリティ施策を打つにあたって重要性を理解させるために施策に関わる社員、または全社員を対象として資格への挑戦を後押ししています。

認定のプロセス

「脱炭素アドバイザー資格」を取得するためには、特定の講習や研修を受け、試験に合格する必要があります。
認定プロセスでは、以下のような知識やスキルが求められます。

脱炭素に関する基礎知識

脱炭素化の基本的な概念、温室効果ガスの排出源とその削減手法、エネルギー効率化に関する知識を習得することが求められます。

環境関連の法律・規制の理解

国内外の環境規制や基準に関する深い理解が必要です。
これには、政府の気候変動対策やパリ協定、SDGs(持続可能な開発目標)に基づく規制も含まれます。

実践的なアドバイスの提供能力

企業や自治体が抱える脱炭素に向けた課題を把握し、現実的な解決策を提供するスキルが要求されます。
ここでは、具体的な技術導入や経営戦略の策定、エネルギー管理の提案などが含まれます。

上記のような、知識や実践的な能力を取得できる講習や研修が各民間委託会社で用意されており、そちらを学習した後にオンライン、もしくは実地で試験を受ける形になります。
講習や研修では、温室効果ガス排出量Scope1,2,3の算定方法や削減方法の取得など実際に手を動かす実践的な内容も含まれます。

認定資格の種類

資格は、3種類用意されており、基礎である脱炭素アドバイザーベーシックでは、脱炭素に向けた取り組みの基礎を学び、企業や自治体のサポートができる人材を育成することを目的としています。
主に、温室効果ガスの削減やエネルギー効率化の基本的な手法を理解することが求められます。
2024年9月1日現在、5社の民間資格が一定の基準を満たしたものとして環境省に認定され、2025年2月1日に1社が追加で認定を受けています。

次に脱炭素アドバイザーアドバンストは、脱炭素に関する高度な知識と専門技術を習得した人材を対象とする資格です。

この資格は、企業や自治体がより複雑で戦略的な脱炭素施策を実行する際に、専門的な助言を提供できることを目的としています。
特に、温室効果ガスの詳細な分析や、持続可能なエネルギー戦略の策定、導入の支援が含まれます。資格取得者は、現場での実践的な知識を駆使し、脱炭素プロジェクトの成功を支援します。

2024年9月1日に2社が認定、2025年2月1日に3社が新たに認定を受けています。

トップの脱炭素シニアアドバイザーは、脱炭素に関する高度な知識と実務経験を持つ上級専門家向けの資格です。
この資格を取得した者は、複雑な温室効果ガス削減プロジェクトやエネルギー効率改善の戦略策定において、リーダーシップを発揮し、企業や自治体の脱炭素施策の成功を支援します。

シニアレベルでは、政策提言や大規模なプロジェクトのマネジメントも行うため、戦略的な視点と実行力が求められます。
上記、内容の認定基準を満たすのは難しく2024年9月1日現在、認定された資格は無く、認定の申請を行っている講座・試験が各民間資格会社から提供されており、認定が通り次第、アドバイザーとしての資格が得られます。

▼出典:環境省HP‐脱炭素アドバイザー資格の認定制度

資格取得の補助金

資格取得の試験代や講座代は、ベーシックで数千円~1万数千円、アドバンストで3万数千円~7万数千円、シニアで数万~10数万となっています。まだ、出来立ての資格ですので料金については頻繁に変動しています。

資格を受講するにあたっての補助金を徐々に設定されており、現在は、千代田区や那須塩原市が出しております。

千代田区

脱炭素アドバイザー資格試験の受験に係る受験料を対象経費として、助成金の額は助成対象経費に4分の3を乗じて得た額の助成となっています。

対象は、区内に事業所を有する中小企業者等であることかつ各種税金を滞納していないことが要件となっています。(制度パンフレット

▼出典:千代田区脱炭素アドバイザー資格試験受験料助成

那須塩原市

市内に事務所又は事業所を有する者、市税を滞納していない者に対して、補助対象経費の10分の8以内の額(1,000円未満の端数は切り捨て)、10万円を上限として設定されています。

▼出典:脱炭素アドバイザー資格取得支援補助金

秋田県

受験料、登録料、受講料、教材料を対象に、補助対象経費の1/2以内(補助限度額1社あたり2万円)、20社程度

▼出典:美の国あきたネット 我が社の脱炭素経営促進事業費補助金に関する情報

まとめ

「脱炭素アドバイザー資格制度認定事業」は、日本が目指す2050年カーボンニュートラルの達成に向け、実務レベルで貢献できる専門家を育成するための重要な制度です。

企業や自治体が気候変動対策を具体的に実行する際に、専門知識を持つアドバイザーのサポートが必要不可欠であり、これにより脱炭素社会への移行が一層加速することが期待されます。

▼参考:その他企業におけるサステナビリティ研修

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