IRENA(国際再生可能エネルギー機関) | 持続可能な未来へのリーダーシップ

世界がカーボンニュートラルという共通の目標に向かって歩みを進める中、再生可能エネルギーの役割はかつてないほど重要性を増しています。
中でも、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、再エネの普及と持続可能なエネルギーシステムへの移行をグローバルにリードする中心的な国際機関です。
アラブ首長国連邦アブダビを本部に、180以上の国と地域が加盟するIRENAは、政策支援、技術革新、資金調達、人材育成など多方面で活動を展開。
気候変動対策、エネルギー安全保障、経済成長といった国際的課題に対し、持続可能な解決策を提供しています。
この記事では、IRENAの設立背景や使命、組織構造から日本との関係までを、最新の情報とともに詳しく解説します。
再エネ拡大の鍵を握るIRENAの全体像を知ることで、エネルギー転換の未来がより具体的に見えてきます。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の概要
国際再生可能エネルギー機関(IRENA, International Renewable Energy Agency)は、世界各国が再生可能エネルギーの導入を加速させ、持続可能なエネルギーシステムへと転換することを目的に設立された国際機関である。
気候変動対策が国際社会の喫緊の課題となる中、エネルギーの供給方法を根本から見直し、化石燃料依存から脱却することが求められている。
IRENAは、こうした世界的なエネルギー移行(エネルギートランジション)を主導し、各国の政策策定を支援するとともに、技術革新や投資の促進を担う中心的な存在となっている。
IRENAは2009年に設立が決定され、2011年から本格的に活動を開始した。本部はアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに置かれており、2024年時点で180以上の国と地域が加盟している。
これは、エネルギー政策において再生可能エネルギーの役割がますます拡大していることを示しており、各国がIRENAを通じて協力しながらエネルギー転換を進めている証でもある。
▼参考:エネルギーミックスとは | 日本の現状と未来を考える
設立の背景と目的
IRENAの設立は、エネルギー供給と環境問題のグローバルな課題に対応する必要性から生まれました。化石燃料に依存する現在のエネルギーシステムは、
以下のような問題を引き起こしています:
- 温室効果ガスの増加
化石燃料の燃焼により多量の二酸化炭素が排出され、地球温暖化の主要因となっています。 - エネルギー安全保障の脆弱性
資源の偏在性により、輸入依存の高い国々ではエネルギー供給の安定性が脅かされています。 - 有限な資源の枯渇
石油や天然ガスといった化石燃料の限られた埋蔵量は、長期的なエネルギー供給の持続可能性を危うくしています。
これらの課題を克服するため、IRENAは、再生可能エネルギーの普及と技術革新を促進し、全ての国が持続可能なエネルギーシステムへ移行できるよう支援することを目的として設立されました。
▼参考:再エネ導入を考える企業必見|再生可能エネルギーの種類・導入方法・成功事例
IRENAの使命は以下の3つの柱に基づいています:
- 再生可能エネルギーの普及と技術革新の推進
加盟国が再生可能エネルギーを最大限に活用できるよう、技術支援や導入計画を提供。 - 政策支援と能力強化
政策設計の助言や、技術導入を円滑に進めるための能力開発を通じて、加盟国を支援。 - データと知識の共有
グローバルなエネルギー市場の現状と将来の展望についての情報を提供し、加盟国間の知識共有を促進。
組織構造と加盟国
IRENAは、180以上の加盟国からなる国際機関であり、その運営は以下の3つの主要な構成要素によって支えられています。
1. 総会
IRENAの最高意思決定機関であり、全ての加盟国が参加する形で運営されます。総会は毎年開催され、
次のような役割を担っています:
- 政策方針の決定
再生可能エネルギーの普及を加速させるための戦略を策定します。 - 活動計画と予算の承認
次年度のプロジェクトや予算配分を決定します。 - 議論の場の提供
再生可能エネルギー分野の最新課題や技術的進展について加盟国間で意見交換を行います。
総会は国際的なエネルギー政策の議論をリードする場であり、加盟国間の協力を深める重要な役割を果たしています。
2. 理事会
理事会は総会で採択された政策や計画を実行に移すための運営機関です。加盟国の中から選出された理事国が定期的に集まり、以下の業務を担当します:
- プロジェクトの管理
進行中の活動やプログラムの進捗状況を監視します。 - 運営の監督
IRENAの事務局が適切に機能しているかを確認します。
理事会は総会での決定を現実の行動に移す橋渡し的な役割を担い、IRENAの効果的な運営を支えています。
3. 事務局
IRENAの事務局はアブダビに本部を置き、日常業務やプロジェクトの運営を担当しています。
- 実務の実施
再生可能エネルギーに関する調査、分析、報告を行います。 - 加盟国への支援
技術的な助言やデータ提供を通じて、加盟国のエネルギー転換を支援します。 - 国際連携の推進
他の国際機関や民間セクターとの協力を促進し、再生可能エネルギーの普及を加速します。

▼出典:IRENA 世界の再生可能エネルギー展望: エネルギー変革2050 年
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の目的と活動
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の活動は以下のように多岐にわたり、各国とラ・カメラ事務局長の会談をニュースで見る機会も多いのではないでしょうか。
IRENAの目的
再生可能エネルギーの普及促進
IRENAは、化石燃料に依存しない再生可能エネルギーを普及させることで、環境負荷の低減とエネルギーの持続可能性を実現することを目指しています。
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、多様な再生可能エネルギー資源を最大限活用することで、次のような目的を達成しようとしています:
- 気候変動の緩和
温室効果ガス排出量の削減を通じて、パリ協定などの国際的な気候目標の達成を支援します。 - エネルギー安全保障の強化
再生可能エネルギーは地域ごとに利用可能なため、エネルギー供給の安定性を向上させ、輸入依存度を低減します。 - 経済成長の促進
再生可能エネルギー分野への投資は、新しい産業や雇用機会を創出し、経済の発展を促します。
▼参考:持続可能なエネルギーと自然環境の両立:太陽光発電と生物多様性の調和を考え
エネルギーアクセスの拡大
IRENAは、エネルギーインフラが未整備の地域における再生可能エネルギーの導入を促進し、エネルギー格差を是正することを目指しています。
分散型エネルギー技術(例:小型太陽光発電、小型水力発電)を活用し、電力供給の普遍化を支援しています。
▼参考:小水力発電とマイクロ水力発電 | 再生可能エネルギーの可能性を解説
技術革新の推進
再生可能エネルギーの技術開発を加速させることで、コスト削減や効率向上を実現し、再生可能エネルギーをより手頃で利用しやすいものにすることを目標としています。
IRENAの具体的な活動
1. 政策支援
IRENAは、再生可能エネルギーを導入するための政策設計を加盟国に支援しています。
特に、適切なインセンティブ制度や規制の整備を通じて、エネルギー転換の基盤を強化しています。
- 政策提言
再生可能エネルギー導入に向けた最適な政策を提案し、各国のエネルギー戦略を支援しています。 - ベストプラクティスの共有
世界各地の成功事例を共有し、他国がこれらを参考に取り組みを進められるようにしています。
2. 能力強化
加盟国が再生可能エネルギーの導入を円滑に進めるため、IRENAは人材育成や技術的な支援を行っています。
- 研修プログラム
政策立案者や技術者向けに研修やワークショップを開催し、専門知識の向上を図っています。 - 技術移転
特に発展途上国に対して、先進的な再生可能エネルギー技術の導入を支援しています。
3. データと分析の提供
IRENAは、再生可能エネルギーに関する最新データや分析を収集・公開し、加盟国や関係者が意思決定を行う際の基盤を提供しています。
- 「Global Renewables Outlook」
再生可能エネルギーの市場動向や導入状況、将来の可能性を示す年次報告書を発表しています。 - オンラインデータプラットフォーム
再生可能エネルギーのコスト、容量、普及状況などを可視化したデータベースを運営しています。
4. 資金調達の促進
再生可能エネルギーのプロジェクトに必要な資金を確保するため、IRENAは国際金融機関や民間投資家との連携を進めています。
- プロジェクト資金調整
各国が再生可能エネルギーインフラを整備するための資金調達を支援しています。 - 投資促進プラットフォーム
再生可能エネルギー関連プロジェクトへの投資を誘致するための場を提供しています。
5. 国際的な協力の推進
IRENAは、国際社会や民間セクターと協力して再生可能エネルギーの普及を促進しています。
- 加盟国間の協力
総会や会議を通じて、加盟国間での情報共有や共同プロジェクトの促進を図っています。 - 国際機関との連携
国連や他の国際組織と連携し、再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みを調整しています。
IRENAは、再生可能エネルギーの普及を通じて、地球規模のエネルギー課題に対処する国際機関として極めて重要な役割を果たしています。
その活動は政策支援、能力強化、データ提供、資金調達、国際協力と多岐にわたり、持続可能なエネルギーシステムの実現に向けた基盤を築いています。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)と日本との関係
IRENAと日本との関係は深く、外務省がサイトに詳しくまとめていますのでいくつかピックアップしてみます。
・日本は2009年の設立から2019年まで理事国を務めています
・日本は、分担金に加え、任意拠出金を拠出し、系統安定化、蓄電、水素、地熱、アジアにおける再生可能エネルギー導入促進、バイオマスの利活用などの分野の活動強化を支援しています。
・日本は、2014年以降継続的に、再生可能エネルギーを普及させるための人材育成の観点から、IRENAと共催し、アフリカやアジア・太平洋島嶼国等を対象とした再生可能エネルギーに関する研修プログラム/ファイナンスワークショップ等(注)を開催しています。
(注)研修プログラム/ワークショップの対象地域、内容は年度により異なります。
▼出典:外務省 国際再生可能エネルギー機関(IRENA: International Renewable Energy Agency)の概要
▼参考:アフリカの脱炭素化とTICADの役割|再エネ・水素・カーボンクレジットの最前線
まとめ
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、再エネの普及とエネルギー転換を推進する国際的な中核機関です。
2009年に設立され、アブダビを拠点に180以上の国と地域が加盟し、政策支援、技術革新、資金調達、人材育成を通じて世界の脱炭素化を後押ししています。
気候変動対策やエネルギー安全保障、経済成長の実現に向け、IRENAは加盟国にデータ提供やベストプラクティスの共有を行い、国際的な協力を強化してきました。
日本も設立当初から関与し、地熱や水素分野、さらに人材育成プログラムを通じてアジア・アフリカでの再エネ拡大を支援しています。
今後は次世代送電網や蓄電技術の開発など新たな課題に対応しつつ、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、IRENAの存在感は一層高まっていくでしょう。
▼参考:【2025年最新】カーボンニュートラルとは?現状と今後のトレンド