脱炭素経営推進、サステナビリティインセンティブ導入のメリット

CDPの回答を行なうにあたって、初期に躓く回答に『気候関連問題の管理のために提供されるインセンティブの詳細について』という回答を挙げられる方は多いのではないかと思います。

弊社では、社長を始めとした経営幹部に気候関連プロジェクトを含む持続可能性のパフォーマンスを評価に関連付けていますが、これからの導入を検討されている企業やサステナビリティ担当者の方は多いのではないでしょうか。

参考:CDPとは!?2024年版の変更点について詳しく解説

j本記事では、サステナビリティインセンティブのメリット、重要性について言及していきます。

目次

経営陣におけるサステナビリティインセンティブとは


企業の重役に対するサステナビリティインセンティブは、企業の長期的価値向上と持続可能な経営を確実にするための非常に重要な仕組みです。

このインセンティブは、企業のトップが短期的な収益目標にとどまらず、環境や社会に配慮した持続可能な経営を実践するよう促す強力な動機付けとして機能します。
これにより、重役は経済的な成果とサステナビリティの両方を追求し、企業全体が社会的責任を果たしつつ持続的な成長を目指す姿勢を示すことができます。具体的な方法と効果について、さらに詳しく見ていきましょう。

多くの企業に、重役の報酬にサステナビリティ目標を連動させた業績連動型の報酬体系が導入されています。
具体的には、重役のボーナスや株式報酬の一部が、温室効果ガスの排出削減、ESG(環境・社会・ガバナンス)評価スコアの向上、再生可能エネルギーの使用率拡大といった指標の達成度に応じて支給される仕組みです。

例えば、企業が設定した排出削減目標を達成すれば報酬が増え、達成できなければ減額されるという明確な基準が設けられています。
こうしたインセンティブにより、重役は短期的な利益だけでなく、持続可能な成長に向けた経営判断を重視するようになり、企業全体が環境や社会に配慮した持続可能な戦略を積極的に推進することにつながります。

日本の場合ですと、ESG、SDGSとサステナビリティを包括して設計される場合が多いです。導入している企業は、役員報酬の1割~2割ほどをサスティナビリティインセンティブと連動させている例が多く、内容は、

  • CO₂排出量の削減
  • Scope1,2で〇〇年までに〇〇%削減、Scope3で〇〇%削減
  • フードロスを〇〇年比で〇〇%削減

というようなものが多いです。

次に、株式報酬を活用したサステナビリティインセンティブも効果的な方法です。
重役が企業の株主価値の向上に長期的に貢献するよう、サステナビリティ目標の達成を条件とした株式付与が導入されているケースも多く見られます。
例えば、CO₂排出削減目標やESG評価が一定基準を超えると追加の株式が付与される仕組みです。

こうすることで、重役はサステナビリティの成果が企業の市場評価や株価に結びつくことを意識し、長期的な視野で企業価値の向上を図ります。
このような株式報酬制度は、短期的な成果に偏らず、持続可能な目標の達成が企業価値を高める重要な要素であると認識させ、重役がサステナビリティへのコミットメントを高める要因となります。

また、評価指標に非財務的な要素を組み込むことも、サステナビリティインセンティブの効果を高める重要な手法です。
収益や売上高といった財務指標だけでなく、環境への配慮や社会的貢献、ダイバーシティ推進といった非財務的な要素が重役の評価基準に取り入れられることで、企業の持続可能な発展に貢献することが求められます

さらに、重役のサステナビリティへの取り組みは、その後のキャリアにも良い影響をもたらします。
今日では、投資家や取締役会からの圧力もあり、重役は企業のサステナビリティ目標達成に対して責任を持つことが求められています。

そのため、環境や社会に対する実績を持つ重役は、将来的に他企業の役員ポジションや社外取締役の候補としても有望視され、キャリアのさらなる発展に寄与します。


また、こうした取り組みによって企業のブランド価値が向上し、投資家や消費者からの支持が得やすくなることも、重役にとって大きな動機となります。
企業が持続可能な目標を達成することで、社会的責任を果たす姿勢が評価され、結果として市場での競争力も強化されるのです。

▼出典:デロイトトーマツ「役員報酬サーベイ(2024年度版)」の結果を発表

従業員に向けてのサステナビリティインセンティブ


従業員向けのサステナビリティインセンティブは、企業が持続可能な目標を達成し、従業員の意識と行動を環境や社会に向けて積極的に変えるための強力な手段です。

これにより、従業員が自分の仕事を通して社会や環境に貢献しているという実感を持てるようになり、企業全体でサステナブルな文化が自然と醸成されます。具体的なインセンティブの事例を挙げて、その効果を詳しく見ていきましょう。

まず、エコアクションに対する報奨制度です。ある企業では、従業員が通勤時に公共交通機関や自転車を使用した場合にポイントを付与する仕組みを導入しています。
また、社内でリサイクル活動に参加したり、紙やプラスチックの使用を削減したりすることでポイントが貯まる制度もあります。

貯まったポイントは、社内での福利厚生に使えるクーポンや、追加休暇、ギフトカードといった特典と交換できるため、従業員にとっても魅力的です。
このような報奨制度を通じて、従業員は日常的に環境に配慮した行動を意識するようになり、結果として企業全体の環境負荷を軽減する行動が定着していきます。

次に、環境やサステナビリティに関する教育プログラムの提供があります。ある企業では、定期的に気候変動やエネルギー効率、省エネ活動の実践方法といったテーマのワークショップやオンライン研修を実施し、これに参加することで従業員がキャリアポイントを獲得できる制度を導入しています。

このプログラムは、最新の環境知識やスキルを従業員が習得し、業務においても持続可能なアプローチを実践できるようにするものです。
さらに、こうした教育プログラムがキャリアの成長に関連付けられることで、従業員は持続可能な知識やスキルを積極的に学び取ろうとする姿勢が高まり、企業にとっても貴重な人材が育成されます。

また、ボランティア活動への支援もサステナビリティインセンティブの一環です。多くの企業が、従業員が環境保護活動や地域貢献活動に参加するための「有給ボランティア休暇制度」を導入しています。

ある企業では、従業員が地域の清掃活動や植林活動などに参加するごとに報酬が支給される制度があり、ボランティア活動に対して経済的なインセンティブも与えられています。
この仕組みにより、従業員は仕事の枠を超えて社会に貢献する機会を持てるため、サステナビリティの実践が個人の生活にも根付きやすくなります。
企業としても、従業員の活動を通じて社会貢献の姿勢が強化され、外部からの評価やブランド価値が向上する効果が期待できます。

さらに、オフィスでのエネルギー使用削減を促進するインセンティブも効果的です。ある企業では、年間のエネルギー使用量が前年に比べて減少した場合、その成果に応じて従業員やチームに報酬が支給される制度を導入しています。

例えば、エアコンの温度を調整したり、使用していない照明を消すなどの行動が評価され、達成状況が社内で定期的に可視化されます。
このように具体的な成果が見える形で公表されると、従業員は自分の取り組みが企業全体のエネルギー消費削減に貢献していることを実感でき、モチベーションも高まります。
こうした省エネ活動が従業員の間で習慣化されることで、企業の環境負荷削減に大きく貢献します。

このように、従業員向けのサステナビリティインセンティブは、個人レベルでの環境意識や社会貢献の意欲を引き出し、企業全体のサステナブルな文化形成に寄与する重要な要素です。


インセンティブ制度によって従業員がサステナブルな行動を取ることが当たり前になることで、企業のサステナビリティ目標達成にも大きな前進が見込まれます。
企業は、こうしたインセンティブを通じて従業員一人ひとりが持続可能な未来を意識し、共に成長していける環境を提供することで、持続可能な社会の実現に貢献しているのです。

▼出典:SDGsと社員のモチベーションに関する調査

▼参考:環境問題に関心がある人必見!身近な脱炭素アクションで始める持続可能な生活

サステナビリティインセンティブの重要性


企業におけるサステナビリティインセンティブの重要性は、経済的利益の追求と社会的責任の遂行を同時に実現するために欠かせない要素です。

現代では、消費者や投資家が環境や社会に配慮した企業を支持するようになっており、企業が持続可能な目標に向けてインセンティブを導入することは、競争力強化や市場での評価向上に直接結びつきます。
このインセンティブの仕組みにより、企業は持続可能な経営を通じて安定した成長を目指し、社会全体に対して責任を果たすことが可能になります。

まず、サステナビリティインセンティブは、企業の競争力とブランド価値の向上に大きく寄与します。
近年、消費者や投資家の間でESG(環境・社会・ガバナンス)要素への関心が高まり、企業がサステナブルな経営を行っていることは市場での重要な評価軸となっています。

企業がサステナビリティインセンティブを通じて環境や社会への配慮を実践することで、ブランドイメージが強化され、顧客や投資家からの信頼を得る機会が増えます。
また、サステナビリティを重視する企業は、ESG投資の拡大に伴い資金調達面でも有利に働き、市場での競争優位性が高まります。
こうして、企業は持続可能な経営によって他社との差別化が進み、信頼性と支持を得やすい地位を築くことが可能です。

次に、サステナビリティインセンティブは企業のリスク管理においても重要な役割を果たします。
気候変動や資源の枯渇は、企業にとって長期的なリスクであり、対応しなければ事業の継続性が危ぶまれる場合もあります。

企業がサステナビリティインセンティブを活用して環境への負荷を軽減し、温室効果ガスの排出を削減する取り組みを進めることで、こうしたリスクに対する耐性を高めることができます。

例えば、カーボンクレジットの活用による排出削減や、再生可能エネルギーの導入を進めることで、企業は今後予測される炭素税や排出規制の影響を最小限に抑えることが可能になります。
持続可能な対策を取ることは、企業のリスクを軽減するだけでなく、規制強化に先手を打つための戦略的対応ともなります。

▼参考:カーボンクレジットとは?その種類と違い:どれを選べばいいのか?

また、サステナビリティインセンティブは従業員のエンゲージメントや企業文化の形成にも効果的です。
企業が持続可能な目標を掲げ、インセンティブによってその達成を評価することで、従業員は自らの仕事が環境や社会に対して積極的な貢献をしていると感じることができます。

たとえば、社内のエコアクションやボランティア活動に対して報奨を与える制度を導入することで、従業員は企業のサステナビリティ目標達成に積極的に関わり、仕事への誇りややりがいが向上します。
これにより、従業員のエンゲージメントが高まり、企業全体で持続可能な未来に向けた共通のビジョンが共有される文化が形成されます。こうした文化の醸成は、従業員の定着率向上や組織の安定にも貢献します。

▼参考:脱炭素とサステナビリティ教育 | 社内取り組みとその重要性

さらに、サステナビリティインセンティブは企業のイノベーションを推進する原動力にもなります。
持続可能な経営を達成するためには、新たな技術やビジネスモデルの導入が不可欠であり、企業がインセンティブを活用して再生可能エネルギーや省エネ技術の開発に投資することで、環境負荷を低減しつつ競争力を維持することが可能です。

サステナビリティインセンティブによって生まれたイノベーションは、企業に新しい収益源や事業機会を提供し、従来のビジネスとは異なる長期的な成長の基盤を築きます。持続可能な製品やサービスの提供は、企業のブランド力をさらに強化し、企業価値の向上に直結します。

このように、企業におけるサステナビリティインセンティブは、短期的な収益だけでなく長期的な成長と社会的責任を両立させるための戦略的な要素です。

サステナビリティインセンティブを通じて企業は環境や社会に配慮した持続可能な行動を推進し、消費者、投資家、従業員などステークホルダーからの信頼を得ることができます。
また、持続可能なビジネスモデルの構築により、企業は市場での競争力を高め、社会の期待に応えつつ長期的な成功を追求する道が開かれます。

まとめ


サステナビリティインセンティブは、企業が環境・社会課題に責任を持ちながら持続的成長を実現するための重要な仕組みです。

経営層に対しては、役員報酬や株式報酬をCO₂削減やESG評価向上といった指標に連動させることで、短期的利益だけでなく長期的な価値創造を促します。
また、従業員にはエコアクションの報奨制度や教育プログラム、ボランティア支援などを導入することで、日常的に持続可能な行動を促進し、企業文化として定着させることが可能です。

これらの取り組みはブランド価値や投資家からの信頼を高めるだけでなく、規制強化への備えやリスク軽減にも直結します。
さらに、イノベーションを生み出す土台にもなり、企業は社会的責任と競争力の両立を実現できます。

サステナビリティインセンティブは、経営とESGを結びつける戦略的要素として、今後ますます不可欠になるでしょう。

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