効果的な温室効果ガス削減計画の作成方法

温室効果ガス(GHG)の削減計画は、今や多くの企業や組織にとって避けて通れない課題になっています。
SBT認定の取得後に温室効果ガスの削減を実行していくために、サプライヤーとして温室効果ガスの可視化と共に削減を求められた時に、温室効果ガスの排出量を減らす計画を立て、具体的な目標に向かって行動することが求められています。
温室効果ガス削減計画というと少し難しく聞こえるかもしれませんが、基本的には「今、どれくらいの温室効果ガスを出しているのかを把握し、それをどういった形で減らしていくかを考える」というシンプルなステップです。
エネルギーの使い方を見直したり、効率化できるところを探したり、再生可能エネルギーを取り入れたりすることで、温室効果ガスの排出量を少しずつ減らしていくことができます。
温室効果ガスの削減計画をしっかり立てることは、企業にとって環境への責任を果たすだけでなく、コスト削減やイメージ向上にもつながります。
さらに、将来の規制や社会の期待に備えるための準備になります。

現状の温室効果ガス排出量の把握
削減計画を立てるための最初のステップは、自社や組織の現状のGHG排出量を正確に把握することです。
データ収集:エネルギー使用量、輸送手段、廃棄物の処理方法など、組織の活動に関連する排出源のデータを収集します。エネルギー消費(電力、燃料)、排水、廃棄物の量などを具体的に計測することが重要です。
スコープの定義:温室効果ガスの排出把握は、直接排出(Scope1)、間接エネルギー使用による排出(Scope2)、およびサプライチェーンなど間接的な活動による排出(Scope3)に分けられます。
必要最低限のScope1,2までの算定に留めるか、脱炭素経営を打ち出していくためにもScope3まで算定するかで検討されるケースが多いです。
また、基準年の設定も現状と比較するために設定します。この基準年の排出量が、将来の削減目標達成の進捗を評価する基準となります。
直近年をシンプルに選んだり、温室効果ガス削減に取り組み始めた前の年を基準に置いたり、SBT認定など各種イニシアチブで決められたルールに基づいて設定するなどして決めていきます。
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温室効果ガス削減目標の設定
次に、具体的な削減目標を設定します。
この段階では、科学的根拠に基づいた目標や、実現可能な削減割合を考慮します。
気候変動に対するパリ協定に基づいた温度上昇を1.5°C以下に抑える目標を反映している、科学的根拠に基づく目標設定(SBTi)に準拠した目標設定に合わせたり。
または、短期・中期・長期目標の設定など段階に分けていきます。
長期的な削減目標(例:2050年までにカーボンニュートラルを目指す)を設定し、その達成に向けた短期的(1-2年)、中期的(5-10年)の目標を段階的に策定します。2030年を中期目標とするケースが多いです。
以下、指標になる情報を紹介します。
日本の目標
2021年4月に、2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明しました。

東京都の目標
東京都温暖化対策推進計画という地球温暖化の進行を抑えるために策定しており、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げています。
中間目標としては、2030年までに2000年比でGHG排出量を50%削減することを目指しています。
▼参考:東京都環境局「総量削減義務と排出量取引制度」に関する第4計画期間の削減義務率等について
カーボン・ニュートラル達成に貢献する大学等コアリションの目標
カーボンニュートラルの実現に向けて、日本国内の大学や研究機関が連携し、温室効果ガス(GHG)排出量の削減や持続可能な社会の実現に貢献するための取り組みを進めるネットワークです。
このコアリションは、大学の研究力と教育資源を活用して、技術開発や社会の意識改革を推進し、気候変動対策に大きな役割を果たしています。
温室効果ガス削減目標としては、2030年までの中間目標として、2020年比で温室効果ガス排出量を50%削減することが掲げられています。この目標は、大学や研究機関のキャンパスでのエネルギー使用の削減や、再生可能エネルギーの導入によって達成されることが期待されています。2050年までの目標としては、温室効果ガスの実質排出をゼロにすることを目指しています。
最後に、設定した温室効果ガス削減目標は、内部で共有し、場合によっては社外に公表することで、ステークホルダーとの透明性と信頼性を高めます。
削減のための施策の特定
目標達成に向けて具体的に何を行うかを決定します。この段階では、複数の施策を検討し、実現可能な方法を選択します。
初期は、エネルギー効率化などコストも同時に削減できる施策から入ると周囲の理解を得られやすいです。
例えば、LEDなど省エネルギー機器の導入、建物の断熱改善、エネルギー使用の監視・制御を行うことで、無駄なエネルギー消費を抑えるエネルギーマネジメントシステム(EMS)などが挙げれます。
また、可能であれば、自社の電力消費を再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱など)に転換する計画を立てます。自社の発電設備を導入するか、電力会社の再生可能エネルギープランを活用したり、グリーン電力証書の購入を検討します。
Scope3の排出削減には、サプライチェーン全体での排出量管理が不可欠です。サプライヤーと協力して、原材料の選定や輸送方法を改善するなどの施策を考慮します。
最後に、排出量削減が困難な部分については、カーボンクレジットの購入などを通じてオフセットを活用することも選択肢に入ります。
各施策で得られる効果を計算し、計画表に落とし込んでいきます。

計画の実施と進捗管理
設定した削減施策を実行に移し、その進捗を定期的に確認します。
施策を実行するための組織内での役割分担を明確にし、リソース(人材、資金)を確保し、進捗のモニタリング定期的に排出量を測定し、目標とのギャップを把握します。
特に、省エネルギー効果や再生可能エネルギーの導入による削減効果を確認するために、エネルギー消費量やGHG排出量を継続的に追跡することが重要です。
サステナビリティ委員会など、定期的に進捗を追える会を作っておくと運用が回りやすくなります。
報告と改善
削減計画の結果を報告し、改善を続けるためのプロセスです。
組織内部への進捗報告を定期的に行い、場合によってはCDPやSBTiへの報告も検討します。透明性を高めるために、ステークホルダーにも進捗を公開します。
外部の関係者(顧客、サプライヤー、投資家、従業員など)と積極的にコミュニケーションを取り、協力して削減計画を進めることも重要です。
新しい技術の導入や市場の変化を反映し、定期的に削減計画を見直します。
また、実際の排出削減が目標に届いていない場合は、追加の施策を検討します。
以上、これらのステップを経て、GHG削減計画を具体的に進めることができます。それぞれのステップは柔軟に進め、組織の実情やリソースに合わせて最適化することが成功の鍵です。
まとめ
温室効果ガス削減計画は、企業の環境戦略の中心的な要素です。温室効果ガス(GHG)排出量の可視化から目標設定、削減施策の実施、進捗管理、報告に至るまでのプロセスを確実に進めることで、温室効果削減計画を具体的に進めることができます。
それぞれのステップを柔軟に進め、組織の実情やリソースに合わせて最適化することが成功の鍵です。また、計画の透明性を高めることは、企業の信頼性向上にも繋がります。