企業が知るべきCOPとは!?COP29から30へ 気候変動に立ち向かう国際的な取組

気候変動はすでに世界中の人々の暮らしに影響を与え、各国が連携して対応することが避けられない課題となっています。

その中心的な役割を担うのが、国連気候変動枠組条約の下で毎年開かれるCOP(締約国会議)です。
1995年のCOP1から始まり、1997年の京都議定書では先進国に温室効果ガス削減を義務付け、2015年のパリ協定では全ての国が自主的に削減目標を掲げる仕組みを導入しました。

こうした合意は、気候変動対策の国際的な枠組みを築く上で大きな転換点となりました。
近年では、単なる削減目標の設定にとどまらず、資金支援や技術移転、さらには「損失と被害」への対応など、多様な課題が議論されています。

2023年のCOP28では、初めてのグローバルストックテイクが実施され、目標と現実の間に大きなギャップがあることが明確にされました。
また、再生可能エネルギー拡大の加速や基金の具体化といった進展も見られました。

続くCOP29では資金メカニズム強化が主要議題となり、2035年に向けた新たな資金目標が打ち出されましたが、途上国からは不十分との声も上がっています。
2025年のCOP30はアマゾン地域のブラジル・ベレンで開催され、森林保全と持続可能な開発を象徴に、次なる削減目標の合意が焦点となります。

本記事では、COPの歴史と役割、最新動向までをわかりやすく整理し、これからの国際協力の行方を展望します。

目次

COPとは

① COPの歴史と役割

COP(Conference of the Parties、締約国会議)は、国際環境条約の最高意思決定機関であり、気候変動対策における中核的な場です。

その起源は1992年のリオ地球サミットにさかのぼり、採択された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が1994年に発効。
翌年にはドイツ・ベルリンで第1回会議(COP1)が開かれました。

以降、COPは毎年開催され、国際的な合意を形成してきました。
1997年の京都議定書では先進国に削減義務を課し、2015年のパリ協定ではすべての国が自主目標を掲げる枠組みへと発展。

これにより、世界全体で気候変動に取り組む仕組みが整いました。COPの役割は、合意形成にとどまらず、その実施を監督し、各国の透明性と信頼性を確保することにもあります。

② 複雑な交渉と現在の課題

COPの議論は、先進国・途上国・新興国といった多様な立場が交錯するため、利害調整が常に難航します。

先進国は歴史的排出への責任を問われる一方、途上国は経済発展を優先し、資金や技術支援を求めます。
さらに、気候変動の影響を強く受ける島嶼国は「損失と被害」への対応を重視。

こうした背景から、資金支援や技術移転の枠組みづくりが重要な論点となります。
交渉は事前の専門家協議や閣僚会合で積み上げられ、企業やNGOなどのオブザーバーも多角的な視点を提供します。
近年は、削減だけでなく適応策や損失・被害への対応も主要議題となり、被害を受ける国への具体的支援策が求められています。

COPは、国際社会が持続可能な未来を築くための試金石であり、合意を実行に移すためには各国の協力強化が不可欠です。

▼参考:環境省 COP(コップ)ってなに? 気候変動に関するCOPを紹介

③ COPの主な成果

COP3 (京都、1997年):【京都議定書の採択
先進国が特定の温室効果ガスの排出量を1990年レベルから平均で5%削減することを義務付ける世界初の気候変動に関する国際条約。
排出量取引についても京都議定書のメカニズムの1つとして定められました。

COP21 (パリ、2015年):【パリ協定の採択
地球の温暖化を産業革命前比で2℃未満に抑え、できれば1.5℃未満に抑えることを目指す。
すべての国が自国の状況に応じた対策を定め、5年ごとにその目標を更新する仕組みが導入された。
カーボンニュートラルを目指す中での大きな転換点と言えます。

COP24 (カトヴィツェ、2018年):【パリ協定実施ルールブックの採択
パリ協定の目標達成のための具体的な指針

これらの成果は、気候変動対策の国際的な枠組みを形成し、強化する上で重要な役割を果たしてきました。
特にパリ協定は、全世界の国々が共同で気候変動に取り組むための土台を築いたと言えます。

COP28の前に

前回のCOP28(2023年11月ドバイ)がどんな内容だったのかを説明する前に、少しおさらいをしていきます。

おさらい_その1「パリ協定」

1つ目はパリ協定です。今、世界はこの目標を達成するために動いています。
2015年(COP21)で採択されたパリ協定の目標は下記の通り。
各国が2030年までにGHGをおよそ50%削減の目標を設定しています。日本も20230年までにCO2 46%削減(2013年度比)を掲げています。

おさらい_その2「COP27の成果」

2つ目のおさらいは、2022年11月エジプトで開催されたCOP27の成果です。
ここでは新しい基金の設立が大きな成果でした。
逆に気候変動緩和の強化は、残念ながらほぼ進捗がみられませんでした。

この段階的廃止/削減というフレーズはCOP28でも提案として挙がっています。
「パリ協定」と「COP27の成果」をふまえたうえで、COP28をみていきましょう。

COP28はどうだったか?

注目はGST(Global Stocktake│グローバルストックテイク)

グローバルストックテイク(以下GST)とは「活動の評価」のことです。
パリ協定の目標達成に向けて、下記のサイクルで進めています。

目標(NDC) ▶    報告(ETF) ▶    評価(GST)


GSTはこのサイクルの1つです。パリ協定の目標達成に向けて、各国がGHGの削減目標(NDC)を立ていますが、その各国の取り組みや進捗状況について評価する仕組みのことです。その記念すべき第一回がCOP28に行われたため注目が集まりました。

ちなみにこの目標、報告、評価は突然出てきた指標ではありません。
パリ協定のルールブック(パリ・ルールブック)が2018年COP24で採択されており、この14条にGSTが定められています。

NDC(National Determined Contributions):国別貢献目標(目標)
ETF(Enhanced Transparency Framework):強化された透明性枠組み(報告)
GST(Global Stocktake):世界全体の進捗状況を評価(評価)

COP28の成果

それでは初めてのGSTの成果はどうだったのか。

01_初のグローバルストックテイクの結果
・温室効果ガスは2030年までに世界全体で2%しか減らない(2019年比)
・一部の途上国は先進国からお金や技術の支援を得ることで、5.3%削減できる可能性があるが、それでもその程度

しかし1.5℃目標の達成には、2030年までに43%、2035年までに60%削減が必要です。
ここにとても大きな乖離があります。
そのギャップを埋めるために、各国で2025年に2035年までの新しい目標を提出してください、と促されています。

また、GSTの成果文書に「2030年までに再生可能エネルギー発電容量を3倍省エネ改善率を2倍にすること等」も盛り込まれた点も、新しい目標に加味する必要があります。

02_エネルギー関連で初めての合意
これまで石炭など資源単体についての言及はちょくちょくありました。
しかし今回は、エネルギー関連の合意について、石油も天然ガスも含む「化石燃料」という包括的な単語が使われたのは大きな変化でした。

ただし欲を言えば、「転換」ではなく「段階的な廃止/削減」という表現になると各国の意識がさらに前に進むことになると思われます。
しかし、ここはCOP27と同様に今回もかなわず。
この表現はどうやら野心的すぎるそうです。

03_「損失・損害」基金
COP27で基金の設立が合意されました。COP28では、各国の具体的な拠出金額が決まりました。
各国が表明した基金への初期拠出額は以下通りです。

EU:約2億4,500万ドル(ドイツからの約1億900万ドルを含む)
アラブ首長国連邦:1億ドル
英国:約5,100万ドル
米国:約1,750万ドル
日本:1,000万ドル(約15億円)※150円 / ドル

COP28からCOP29へ

COP29(第29回気候変動枠組条約締約国会議)は、2024年11月11日から22日までアゼルバイジャンの首都バクーで開催され、資金メカニズムの強化や各国の削減目標(NDC)の見直しが主要な議題となりました。

会議では、2023年のCOP28で合意された「損失と被害基金(Loss and Damage Fund)」の具体的な運用方法について議論が進められました。
この基金は、気候変動の影響を受けやすい発展途上国を支援することを目的としており、具体的な資金供給の方法や管理体制が重要な検討項目となりました。


また、先進国が約束している年間1,000億ドルの気候資金についても、進捗が不十分だという批判が上がる中、2035年までに年間3,000億ドルを動員する新たな目標が設定されました。
ただし、これは開発途上国が求めていた規模には届かず、不満の声も聞かれました。

同時に、化石燃料に関する議論も注目されました。
化石燃料輸出国であるアゼルバイジャンが開催国であることから、エネルギー転換に対する慎重な姿勢が見られた一方、会議全体では化石燃料の段階的廃止が不可欠であるとの認識が共有されました。

会議では、再生可能エネルギーへの移行や、エネルギー転換を実現するための技術支援と資金拡充の必要性が強調されましたが、気候資金の議論が進まない中、こちらの議論に割く時間は少なくなりました。

また、各国の排出削減目標の強化も議論の中心となりました。パリ協定の目標を達成するには、現在の目標では不十分であり、特に主要排出国に対してさらなる野心的な目標設定が求められています。
科学者たちは、1.5度目標の達成が一層困難になっている現状を指摘し、迅速で効果的な行動の必要性を訴えました。

一方で、COP29は政治的な不透明感の影響も受けました。開催直前にアメリカ大統領選で気候変動に懐疑的なドナルド・トランプ氏が再選したことが報じられ、米国の気候政策に関する不安が広がりました。

さらに、主要国の指導者の欠席が目立ちました。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(ブリュッセルでの政治的な事情を理由に)やアメリカのジョー・バイデン大統領(大統領選直後のタイミング)、ブラジルのルーラ大統領(開催前10月に頭部を負傷されたとのこと)が出席を見送り、この影響が交渉の進展に影を落としたとの指摘もあります。

全体として、COP29では一定の進展が見られたものの、気候資金の規模や化石燃料削減の具体策など、多くの課題が残されました。
これらの課題は、2025年に開催予定のCOP30で引き続き議論される見込みです。

COP29は、気候変動対策における国際的な取り組みを前進させるための重要なステップとなりましたが、国際協力の更なる強化と実効性のある行動が求められています。
会議の成果が実際に行動に移されるかどうかが、今後の気候変動対策の成否を左右する重要な要素となるでしょう。

▼出典:環境省 脱炭素ポータル 気候変動の国際会議COP29の結果概要とその成果
~国際交渉の現場と日本の取組について~(2/2)

そしてCOP30へ

COP30の開催意義とアマゾンの象徴性

2025年11月にブラジル・ベレンで開かれる第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)は、パリ協定の実行力を試す歴史的な舞台と位置づけられています。
特に「アマゾンCOP」と呼ばれる今回の会議は、地球最大の熱帯雨林を抱えるアマゾン地域で開催される初のCOPであり、気候変動と生物多様性の両面から注目が集まります。

ベレンはアマゾン川の河口に位置し、豊かな自然と多様な文化を有する都市です。しかし同時に、森林破壊の加速や気候変動の影響といった深刻な課題を抱えています。
COP30をここで行うことは、抽象的な交渉を現場の現実に引き寄せ、「地球の肺」と呼ばれるアマゾンの保全と人類の未来を直結させる強いメッセージとなります。

ブラジル政府は、長年気候外交に携わってきたアンドレ・アラーニャ・コヘア・ド・ラーゴ氏を議長に指名しました。経験豊富な交渉官のリーダーシップにより、国際的な合意形成をスムーズに進めることが期待されています。

議題の焦点と開催地の課題

COP30の最大の焦点は、各国が新たに提出する2035年までの排出削減目標(NDC 3.0)です。

第1回グローバル・ストックテイク(GST)の結果、世界は1.5℃目標の達成から大きく逸脱していることが明らかになっており、より高い野心を持つ目標設定が不可欠です。
また、気候資金の拡充も主要議題となり、先進国による資金拠出や途上国への技術移転、公正な支援のあり方が議論されます。

一方で、開催地ベレンはロジスティクス面で大きな課題を抱えています。
宿泊施設不足や高額な宿泊費が、最も脆弱な国々の参加を妨げかねない状況であり、会議の包摂性を損なう懸念があります。
ブラジル政府は、治安強化やクルーズ船の活用などで対応を進めていますが、その効果は限定的との指摘もあります。

さらに、議題の中心となるアマゾンの森林保全は、気候変動対策の要です。
COP30では、森林破壊を抑制しつつ地域住民の生活向上を実現する持続可能な開発モデルの構築が求められます。
これが実現すれば、ベレンは単なる開催地を超え、持続可能な未来の象徴となるでしょう。

▼出典:JETRO COP30開催国ブラジルの気候変動対策を探る

まとめ

COP(締約国会議)は、京都議定書やパリ協定を通じて気候変動対策の国際的枠組みを築いてきた重要な会議です。

近年では温室効果ガス削減や資金支援、化石燃料からの転換が主要な議題となっています。
2023年のCOP28では、初のグローバルストックテイクにより各国の取り組みが目標に届いていない現実が明確化し、再生可能エネルギーの拡大や「損失・損害」基金の運用も合意されました。

続くCOP29では、資金メカニズムの強化と新たな気候資金目標が議論されましたが、途上国からは規模不足との声も上がりました。
2025年のCOP30はブラジル・ベレンで開催され、アマゾン保全を象徴に新しい排出削減目標と持続可能な発展の加速が焦点となります。

各国の合意を実際の行動に移せるかが、地球の未来を左右する鍵となるでしょう。

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