Scope3カテゴリ6-従業員の出張について具体的に解説

Scope3カテゴリ6は、企業の業務出張に伴う温室効果ガス(GHG)排出を対象とするカテゴリです。

航空機、鉄道、自動車などの移動手段による排出が中心で、特に航空機は排出量が大きいため、重点的な管理が求められます。
また、出張時の宿泊に伴う電力消費などの排出も含まれます。

Scope3の算定資料はこちら   

算定方法は、移動距離や交通機関ごとの排出係数を用いる方法や、出張費用や宿泊日数を基にする方法などがあります。
企業にとって、排出削減の鍵となるのは、出張の必要性を見直し、オンライン会議の活用や移動手段の最適化を図ることです。

さらに、環境負荷の少ない宿泊施設の利用や、出張管理システムを活用したデータの精緻な把握も有効です。
適切な削減施策の実施により、企業のサステナビリティ向上とコスト削減の両立が可能となります。

事前に、こちらの記事を見ていただくと内容を理解しやすくなります。

▼参考:Scope3とは?最新情報と環境への影響と企業の取り組み

▼参考:企業の環境データを計算 | Scope3 カテゴリ6~8,14,15について解説 

目次

Scope3 カテゴリ6の概要


Scope3のカテゴリ6は、従業員の業務出張に伴って発生する温室効果ガス排出を対象としています。
主に、航空機、鉄道、自動車などの交通機関の利用による排出が主な構成要素となります。
特に、航空機による移動は、一回あたりの排出量が大きく、このカテゴリの中で重要な位置を占めています。

▼参考:SAF(持続可能な航空燃料)とは?その重要性と導入の現状、未来の可能性を解説

排出量の算定においては、交通機関ごとの移動距離と、それぞれの排出係数を掛け合わせることが基本となります。
例えば、航空機の場合、フライト距離とその区間に応じた排出係数を用いて計算を行います。
また、詳細に算定を行う場合は、座席クラスによっても排出量が異なるため、ビジネスクラスやファーストクラスの利用は、エコノミークラスと比べて高い排出係数が適用されます。

▼参考:ANA CO2排出量の計算 よくある質問

さらに、出張時の宿泊施設での滞在に伴う排出も、このカテゴリの対象となります。ホテルでの電力使用や空調利用などによる排出を考慮する必要があります。
ただし、これらの排出量は宿泊施設のエネルギー効率や運営方針によって大きく異なるため、正確な把握が難しい場合もあります。

このカテゴリの特徴として、コロナ禍を契機としたオンラインミーティングの普及により、出張の必要性自体が見直されている点が挙げられます。
多くの企業で、不要不急の出張を削減し、オンラインでの商談や会議を積極的に活用する動きが進んでいます。
これにより、出張に伴う排出量の大幅な削減が実現している例も多く見られます。

データの収集と管理も重要な要素です。出張の予約システムや経費精算システムとの連携により、移動距離や利用交通機関のデータを効率的に収集することが求められます。
また、これらのデータを適切に管理し、定期的な分析と報告を行うことで、削減施策の効果検証にも活用することができます。

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Scope3 カテゴリ6の算定方法


カテゴリ6も算定方法はいくつかあり難易度が高いものに、出張で使っている移動サービスで移動した距離や人数で算定するものがありますが、移動分の排出量は金額で算定、宿泊分は宿泊日数で算定します。

交通費による算定

国内線の飛行機を100万円分使用した場合ですと

(国内線飛行機の原単位:0.00000525tCO2/円)

1,000,000[円]×0.00000525[tCO2eq/円]=5.250 [tCO2eq]

となります。

宿泊時の温室効果ガスの算定

また、宿泊で10泊した場合ですと、

(宿泊の原単位:0.0315tCO2/泊)

10[泊]×0.0315[tCO2eq/円]=0.315 [tCO2eq]

となります。

従業員数による算定

交通費などのデータが複雑になっており正確なデータが取れない場合は、従業員数からの算定も行えます。

常時使用する従業員数が200人の場合、

200[人]×0.130[tCO2/人・年]=26[tCO2/年]

となります。

※上司使用する従業員: 排出量を報告する年の前年4月1日時点で、期間を定めずに使用されている者もしくは1ケ月を超える期間を定めて使用されている者

▼出典:環境省HP 排出原単位データベース Ver.3.5(EXCEL/6.72MB)<2025年3月リリース>

Scope3 カテゴリ6(出張由来の排出)削減に向けた実践策

Scope3 カテゴリ6は、企業活動に伴う出張や移動による温室効果ガス排出が対象です。ここでは、実際の削減につなげるためのポイントを整理します。

1. 出張そのものの見直し

最も大きな削減効果を生むのは、不要な出張を減らすことです。
近年はデジタル技術の進化により、商談・会議・研修の多くがオンラインで実施可能になりました。

  • オンライン会議システムの活用
  • ウェビナーやバーチャル展示会の利用
    これらにより、移動を伴わないコミュニケーションが可能となり、排出量を大幅に抑えられます。

2. 出張が必要な場合の工夫

出張が不可避な場合でも、計画を工夫して排出を抑えることができます。

  • 商談・会議を同一地域・同一期間にまとめて実施(出張回数の削減)
  • ルートを効率化し、移動距離を短縮

3. 交通手段の最適化

移動手段の選択は排出量に大きく影響します。

  • 近距離は航空機から鉄道への切り替え
  • 都市内移動は公共交通機関の利用を優先
  • やむを得ず車両を使用する場合は電気自動車など低排出車を選択

4. 宿泊施設の選定

滞在中の排出削減も見逃せません。

  • 環境認証を取得したホテルや省エネ設備導入施設を優先
  • 長期滞在型施設を利用して複数回の出張をまとめる

▼出典:でんきJTB 「CO2ゼロSTAY」で、環境配慮型の宿泊プランの設定が可能に

5. 社内ルールの整備

削減施策を継続させるには、社内規程やガイドラインの整備が不可欠です。

  • 交通手段選定の基準
  • オンライン会議を優先する指針
    これらを明文化することで、組織全体での取り組みが定着します。

6. データ管理とモニタリング

出張管理システム(BTM)を活用し、移動距離・交通手段・宿泊施設を記録・分析することで、効果的な削減計画を立てやすくなります。

▼出典:出張管理システム(BTM)の比較14選!タイプ別に紹介

7. 社員教育・意識啓発

従業員一人ひとりの行動が削減成果を左右します。

  • 環境教育・研修の実施
  • エコ出張の事例共有
    これにより、自発的に削減行動をとる文化を育てます。

▼参考:GX研修の必要性とは?カーボンニュートラル時代に企業がすべき対策

▼参考:【成功事例付き】サステナビリティ研修の選び方、導入のポイント、効果を徹底解説!

8. 取引先との連携

排出削減は社内だけでは完結しません。
取引先との協力により、オンライン会議の活用方針を共有し、会議・イベントの開催方法を最適化することで大きな効果を生みます。

このようにScope3 カテゴリ6の削減には、テクノロジー活用・出張計画の見直し・交通手段の工夫・データ活用・社内外での協働といった多面的な取り組みが欠かせません。
これらを組み合わせることで、業務効率化と環境負荷低減を同時に実現することが可能です。
今後は新たな働き方や技術を積極的に取り入れ、さらに進んだ削減を目指していくことが求められます。

まとめ


Scope3カテゴリ6は、企業の業務出張に伴う温室効果ガス(GHG)排出を対象とし、航空機・鉄道・自動車による移動や宿泊施設でのエネルギー消費が含まれます。


算定方法は移動距離×排出係数または出張費・宿泊日数を基にした計算が一般的です。
削減策として、出張の見直し、オンライン会議の活用、鉄道への切り替え、環境配慮型ホテルの選択などが効果的です。


また、出張管理システムを活用し、データ収集・分析を最適化することで、より精度の高い排出管理が可能になります。
企業はこれらの施策を通じて、環境負荷の低減と業務効率の向上を両立することが求められます。

カテゴリ6は、算定はそこまで複雑では無いのですが、データ集めをする段階で必要なデータが揃っていない事が良くあります。
例えば、飛行機での出張金額と、新幹線での出張金額が分けられていないことがあります。
ですので、算定のタイミングで次年度から算定をスムーズにするためのルール作りも一緒に行うことをお勧めします。

▼参考: Scope 3カテゴリ1〜5を徹底解説!各カテゴリの概要と排出量算定方法をわかりやすく紹介

▼参考:Scope3 カテゴリ9~13について徹底解説!各カテゴリの概要と排出量算定方法をわかりやすく紹介

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