2024年:SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)銘柄15社の選定

2024年4月23日に、経済産業省と株式会社東京証券取引所から「SX銘柄2024」選定企業の発表がありました。
SX(Sustainability Transformation)とは、企業や組織が持続可能性(サステナビリティ)を中心に据えて、ビジネスモデル、戦略、運営方法、製品・サービスを変革する取り組みを指し、気候変動、資源の枯渇、社会的不平等などのグローバルな課題に対応しながら、経済的な価値と環境・社会的な価値の両方を追求することが目標です。
SX銘柄の選定の流れは、東京証券取引所上場企業を対象に、2023年10月2日から11月30日の間にSX銘柄2024への募集を行われ、SXに先進的に取り組んでいる企業からの応募を募り、その後SX銘柄評価委員会での審査を経て、以下の15社がSX銘柄2024として選定されるというプロセスでした。
応募企業は、プライム市場が150社とほとんどで、スタンダードから4社、グロース市場からは5社となっており、スタンダード市場やグロース市場の企業がSXやサステナビリティ文脈で差別化を図ることはまだまだ有効性がありそうです。
▼出典:経済産業省HP
https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240423001/20240423001.html

SX銘柄の発表と共にSX銘柄2024選定レポートも同時に発表されており、以下レポートの要約となります。
SXとは
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)は、企業や組織がその活動や事業
モデルを根本的に見直し、環境や社会、経済の持続可能性を追求するプロセスを指します。この概念は、従来の環境対策やCSR(企業の社会的責任)の枠を超え、企業の存在意義そのものを問い直し、新しいビジネスモデルやイノベーションを通じて長期的な価値創造を目指すものです。
▼参考:社会的責任(CSR)とは?企業が果たすべき役割と最新の課題
SXの注目が高まっている背景には、地球規模の課題が深く関わっています。気候変動、資源の枯渇、生物多様性の喪失、そして社会的不平等といった問題は、いずれも単一の国や企業の努力では解決が困難なものです。
これらの課題は、従来の成長中心の経済モデルを見直し、社会全体のシステムや価値観を変革する必要性を示唆しています。
▼参考:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の役割と活動とは?
▼参考:ネイチャーポジティブとは?注目される理由や世界的な潮流とその背景
加えて、消費者、投資家、従業員など、さまざまなステークホルダーが企業に対して持続可能性への取り組みを求める声を強めています。
投資家の間では、ESG(環境・社会・ガバナンス)要素を重視する姿勢が広まり、環境や社会的配慮のない企業は資金調達や競争力で不利になるリスクが高まっています。こうした環境の中で、SXは単なる社会貢献活動ではなく、企業が存続し、競争力を保つための重要な戦略へと位置づけられるようになっています。
SX銘柄2024選定レポートについて
「SX銘柄2024」レポートでは、SX銘柄選定の背景、応募企業の分析や企業のサステナビリティ変革(SX)に貢献する先進企業15社のSX実践に繋がる具体的な取り組みを紹介するために作成されています。
※伊藤レポート:日本の企業が持続的な企業価値を向上させるためのガイドラインを提供する報告書で、経済産業省が2014年に発表しました。このレポートは、企業の自己資本利益率(ROE)の向上と、企業の持続的成長を目指した戦略を示しています。主導したのは、一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏であり、彼の名にちなんで「伊藤レポート」と呼ばれています。
SX銘柄の背景と選定
経済産業省が発行する「伊藤レポート」シリーズや「価値協創ガイダンス2.0」に基づき、企業価値向上のために社会のサステナビリティ課題に対応する重要性が強調されている中、「SX」は、企業の持続的な成長と社会のサステナビリティの同期化を図ることを意味し、これを通じて企業価値を高めることを目指しています。
SX銘柄は、上記を周知するためにも重要な役割を果たすと考えられており、選定プロセスは、価値協創ガイダンス2.0を基にした審査や企業のPBR(株価純資産倍率)が1倍以上であることを必須条件とし、持続的な成長を実現できる企業群を対象にしています。
応募企業は約3,800社から調査を行い、企業価値創造の先進事例として「2024年のSX銘柄」が決まりました。
応募企業の分析
応募企業の内訳は、プライム市場企業が多く、時価総額が大きい企業ほど応募率が高い傾向が見られます。選定企業は、重要課題の特定、目指す姿の設定、ビジネスモデルの構築、差別化要素の特定などで優れた取り組みが確認されました。
また、バリューチェーン改革やESG投資、イノベーション推進などに積極的に取り組んでおり、特徴的な取り組みとしては以下が挙げられます。
・バックキャスト・フォアキャストの活用
目指す姿を設定し、ビジネスモデルや実行戦略に反映。
・価値創造のKPIや独自のKPI設定
多くの企業が価値創造のためのKPIを設定し、戦略や役員報酬と連動させています。
・人的資本の強化
人材育成やガバナンスの強化を進めています。
具体的な企業の取り組み
具体的な取り組みとしては、2024SX銘柄選定15社の事例が、各々3ページのレポートとしてまとめられています。以下、事例を一部抜粋、
・味の素株式会社:「アミノサイエンス🄬」を核としたビジネスモデルで、健康寿命の延伸と環境負荷の削減を目指しています。
・オムロン株式会社:長期ビジョン「SF2030」に基づき、自律社会の実現を目指し、イノベーションやグローバル人材の育成を推進。
・キリンホールディングス株式会社:発酵&バイオテクノロジーを活かし、健康分野での価値創造を図る。
・KDDI株式会社:5G技術やパートナーシップを通じた新規事業創出を目指し、人材戦略やDX推進を実施。
・第一三共株式会社:「サイエンス&テクノロジー(S&T)」を基に、グローバルヘルスケアカンパニーを目指している。
▼出典:SX銘柄2024レポートhttps://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/sx2024report.pdf
まとめ
「SX銘柄2024」レポートでは、日本企業が持続的な成長と社会のサステナビリティをどのように統合しているかを示す具体的な事例を提供し、企業価値の向上と投資家の評価向上を目指しています。
SXの取り組みを強化していきたい方は参考にしてみてはいかがでしょうか。