JCLPのCOP28報告会へ参加〜1.5℃ロードマップが描く未来〜

JCLP※1主催のCOP28※2 報告会が2023年12月19日に開催されました。JCLPも現地ドバイへ参加しており、世界の脱炭素をリードする著名人との対話や、パビリオンで1.5℃ロードマップを発表してきたようです。
世界の脱炭素エキスパートたちは、政策と企業の連携が環境変化の鍵であると強調していました。
※1 JCLP :日本気候リーダーズ・パートナーシップ:持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきであるという認識の下、2009年に設立した日本独自の企業グループ
※2 COP28 :国連気候変動枠組条約第28回締約国会議:開催期間 :2023年11月30日 -12月13日/開催国 :アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ
▼参考:JCLP主催イベントレポート | 水素の可能性とリスクを世界的アナリストが解説

「政策前進→企業行動変化→更なる政策前進」という好循環を起こす
多数のエキスパートが口を揃えて「政策」の重要性を語る
- 「企業行動→政策前進→企業行動」という好循環を構築欧州各国の大臣・政治家と企業リーダーによる定例会合を実施
-Corporate Leaders Group
- 政策、制度の変更があれば、変化は急激に起こる資金をつけずとも、「制度の変更」が突破口になることも
-グラスゴー金融同盟(GFANZ)
- インフレ抑制法で投資が大きく変化各地域を回り、200回以上「制度活用のメリット」を説いた
-米財務長官 気候変動担当補佐官
対話から得られた示唆
共通するのは「今こそ、政策の力が重要」ということ
・企業の背中(投資)をぐっと押すための政策
・企業活動と政策の好循環をつくる(企業による政策後押しも重要)
・もはや欧米では「環境政策」ではなく「経済政策」に進化
COP28の結果_再エネ3倍、化石燃料からの脱却開始など、進展あり
COP28の主な合意
・2030年までに再エネ3倍、エネルギー効率2倍を達成
・この10年で、化石燃料からの脱却を開始
→合意を踏まえ、取り組みを加速する必要がある
▼
上記を実現する具体的な道筋(共通の見通し)が必要
日本の1.5℃ロードマップをパビリオンで発表
・JCLPとIGES(地球環境戦略研究機関)によるコラボレーション
策定の狙い
・1.5℃目標達成に必要なアクション・政策を官民で共有する
→次期NDC・エネルギー基本計画検討の参考にしていただく
・各セクターで必要な変化を示し、脱炭素化に向けた企業の投資を促す
特徴
・「いつ、どこで、どんな変化が必要か」を明示
・研究機関と企業の協働による、複合的視点での検討
・脱炭素、経済性に加え、エネルギー自給率、国内への資本還流等を考慮
※現在はVer1を引き続きブラッシュアップする
対応の柱
- エネルギー需要側の大胆なアクションDX、電化、省エネ等で、経済・産業全体の効率性・生産性向上
- 再エネの迅速・大幅な拡大自然と共生する太陽光や、大規模な浮体式洋上風力の活用、産業化等COP28の合意における方向性とも一致
1.5℃ロードマップ_エネルギー需要と共有の両面で大胆な変化を
社会経済の変化による、効率化・生産性の向上
<エネルギー需要の変化の内訳>

再エネの速やか・大幅な拡大
<再エネ電力量の変化>

※ギャップの埋め方:電化による電力需要増と、水素等の製造をまかなう
▼参考:再エネについて
IRENA(国際再生可能エネルギー機関) | 持続可能な未来へのリーダーシップ
中国における再エネ革命 | 急速な持続可能エネルギーの台頭
ドイツの再生エネルギー政策と温室効果ガス対策 | 取り組みと成果
1.5℃ロードマップは経済性もあり、エネルギー安全保障上も有益
再エネ中心の電力システムへの投資は、化石燃料輸入額に比べて遥かに安価
1.5℃ロードマップで必要な電力システム投資額:3.9 – 4.6兆円/年(2021-2050年平均)
化石燃料輸入額 :20 – 30兆円/年(2011-2022年平均)
エネルギー効率を高め、日本のエネルギー自給率を大幅に向上
一次エネルギー自給率:9%(2015-2019年)▶︎一次エネルギー自給率:85%(1.5℃ロードマップ_2050年)
■部門別のマイルストーンを設定
あらゆる業種・企業が1.5℃の実現に役割を果たせる

1.5℃ロードマップはIEAやSBTi等、著名国際機関から高い評価
1.5℃目標は実現可能。このロードマップはそれを示している。
-IEA:D.Wetzel氏
排出削減の道筋を示すものとして有用。参照を促したい。
-SBTi:T.Wyman氏
日本のエネルギー移行で最重要な点を押させている
-HSBC:J.Wu氏
日本の技術力に期待
-EIP:M.Webber氏
DXで社会の脱炭素に貢献。自社のビジョンの妥当性を確認。
-富士通:大塚尚子氏
需要側のアクションが重要と示した意義は大きい。
-JCLP共同代表:山下良則氏
▼参考:SBTについて
SBT認定を目指す企業必見!申請で押さえるべき重要ポイント
年々要件が厳しくなるSBT認証|中小企業版SBTを詳しく解説
海外からの共通指摘「2050年ではなく、今」「削減を急いで」
IEA:D.Wetzel氏
SBTi:T.Wyman氏
HSBC:J.Wu氏 より
・2050年ネットゼロは目的にあらず。1.5℃に気温上昇を抑えることが目的
・そのためには2050年のゼロだけでなく、30年、35年の大幅削減が鍵
・(先進国は2040年ゼロも視野に入れて欲しい)
これから
今後1.5℃目標達成に向け、各国の目標(NDC)の見直し、野心度の引き上げが求められる
▼
・NDCおよびエネルギー基本計画の検討に、1.5℃ロードマップを参考にしていただきたい
・脱炭素と経済成長を同時実現する政策立案をお願いしたい
・JCLPは、自社の脱炭素を加速し、1.5℃に資する政策立案を全力で支援します
まとめ
COP28でまた新しい目標が決まりましたね。
2030年までに
・再生可能エネルギー発電容量を世界全体で3倍
・エネルギー効率を世界平均2倍
この新しい目標によって日本も、該当する業界でルールチェンジが起きる可能性が高いです。この情報をデメリットではなく、メリットに変えられるよう、国からの情報には特に敏感になっていきましょう。
▼出典
IGES1.5℃ロードマップhttps://www.iges.or.jp/jp/publicationdocuments/pub/technicalreport/jp/13273/IGES1.5degreeRoadmapSummaryReport_JP.pdf
▼JCLP COP28報告会資料を元に作成