Scope3カテゴリ6-従業員の出張について具体的に解説

企業の環境負荷を正しく把握し、持続可能な経営を進めるうえで欠かせないのが Scope3排出量の算定 です。
その中でも カテゴリ6(従業員の出張) は、航空機・鉄道・自動車などの移動や宿泊に伴う温室効果ガス排出を対象としており、多くの企業にとって管理が重要な領域となっています。
特に航空機は一度の移動で排出量が大きく、排出削減の優先度が高い項目です。
排出量の算定方法には、移動距離と交通機関ごとの排出係数を掛け合わせる方法や、出張費用・宿泊日数を基にする方法などがあり、データの収集精度によって結果が大きく変わります。
正確な算定には、出張予約システムや経費精算システムとの連携によるデータ管理が不可欠です。
また、排出削減に向けては、オンライン会議の活用による出張削減、鉄道や低排出車への移行、環境配慮型ホテルの利用 といった取り組みが効果的です。
適切なルール整備や社員教育を進めることで、企業は サステナビリティ向上とコスト削減の両立 を実現できます。
本記事では、Scope3カテゴリ6の概要から算定方法、さらに実践的な削減策までを具体的に解説します。



Scope3カテゴリ6とは?従業員の出張に伴う排出の概要
Scope3カテゴリ6(出張) は、企業の従業員が業務出張を行う際に発生する温室効果ガス(GHG)排出を対象としています。
中心となるのは 航空機・鉄道・自動車 などの移動に伴う排出であり、特に航空機は一度の利用で排出量が大きいため、管理上の重要ポイントです。
出張に伴う排出の算定方法
基本的な算定式は 移動距離 × 交通機関ごとの排出係数 です。
- 航空機の場合は、フライト距離や区間に応じた排出係数を使用
- 座席クラスによる違いも考慮(ビジネスクラス・ファーストクラスはエコノミーより高い排出係数)
このように、移動手段や利用条件によって数値は大きく変動します。

宿泊に伴う排出も対象
出張では移動だけでなく、 宿泊施設でのエネルギー消費 も排出源となります。
ホテルでの電力や空調の使用が含まれますが、施設の省エネ性能や運営方針によって差が大きく、正確な把握は容易ではありません。
コロナ禍以降の変化
コロナ禍をきっかけにオンライン会議が普及し、多くの企業が出張の必要性そのものを見直しました。
結果として、不要不急の出張削減 → 大幅な排出削減 が実現した事例も増えています。
データ管理の重要性
正しい削減効果を得るためには、データの収集・管理体制が不可欠です
- 出張予約システムや経費精算システムと連携し、移動距離・交通手段を記録
- 定期的なデータ分析・報告を行い、削減施策の効果を検証
こうした仕組みを整えることで、企業は 環境負荷低減と業務効率化を両立 できるようになります。
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Scope3 カテゴリ6の算定方法
カテゴリ6も算定方法はいくつかあり難易度が高いものに、出張で使っている移動サービスで移動した距離や人数で算定するものがありますが、移動分の排出量は金額で算定、宿泊分は宿泊日数で算定します。
交通費による算定
国内線の飛行機を100万円分使用した場合ですと
(国内線飛行機の原単位:0.00000525tCO2/円)
1,000,000[円]×0.00000525[tCO2eq/円]=5.250 [tCO2eq]
となります。

宿泊時の温室効果ガスの算定
また、宿泊で10泊した場合ですと、
(宿泊の原単位:0.0315tCO2/泊)
10[泊]×0.0315[tCO2eq/円]=0.315 [tCO2eq]
となります。

従業員数による算定
交通費などのデータが複雑になっており正確なデータが取れない場合は、従業員数からの算定も行えます。
常時使用する従業員数が200人の場合、
200[人]×0.130[tCO2/人・年]=26[tCO2/年]
となります。
※上司使用する従業員: 排出量を報告する年の前年4月1日時点で、期間を定めずに使用されている者もしくは1ケ月を超える期間を定めて使用されている者

▼出典:環境省HP 排出原単位データベース Ver.3.5(EXCEL/6.72MB)<2025年3月リリース>
Scope3 カテゴリ6(出張由来の排出)削減に向けた実践策
Scope3 カテゴリ6は、企業活動に伴う出張や移動による温室効果ガス排出が対象です。
ここでは、実際の削減につなげるためのポイントを整理します。
1. 出張そのものの見直し
最も大きな削減効果を生むのは、不要な出張を減らすことです。
近年はデジタル技術の進化により、商談・会議・研修の多くがオンラインで実施可能になりました。
- オンライン会議システムの活用
- ウェビナーやバーチャル展示会の利用
これらにより、移動を伴わないコミュニケーションが可能となり、排出量を大幅に抑えられます。
2. 出張が必要な場合の工夫
出張が不可避な場合でも、計画を工夫して排出を抑えることができます。
- 商談・会議を同一地域・同一期間にまとめて実施(出張回数の削減)
- ルートを効率化し、移動距離を短縮
3. 交通手段の最適化
移動手段の選択は排出量に大きく影響します。
- 近距離は航空機から鉄道への切り替え
- 都市内移動は公共交通機関の利用を優先
- やむを得ず車両を使用する場合は電気自動車など低排出車を選択
4. 宿泊施設の選定
滞在中の排出削減も見逃せません。
- 環境認証を取得したホテルや省エネ設備導入施設を優先
- 長期滞在型施設を利用して複数回の出張をまとめる

▼出典:でんきJTB 「CO2ゼロSTAY」で、環境配慮型の宿泊プランの設定が可能に
5. 社内ルールの整備
削減施策を継続させるには、社内規程やガイドラインの整備が不可欠です。
- 交通手段選定の基準
- オンライン会議を優先する指針
これらを明文化することで、組織全体での取り組みが定着します。
6. データ管理とモニタリング
出張管理システム(BTM)を活用し、移動距離・交通手段・宿泊施設を記録・分析することで、効果的な削減計画を立てやすくなります。

▼出典:出張管理システム(BTM)の比較14選!タイプ別に紹介
7. 社員教育・意識啓発
従業員一人ひとりの行動が削減成果を左右します。
- 環境教育・研修の実施
- エコ出張の事例共有
これにより、自発的に削減行動をとる文化を育てます。


8. 取引先との連携
排出削減は社内だけでは完結しません。
取引先との協力により、オンライン会議の活用方針を共有し、会議・イベントの開催方法を最適化することで大きな効果を生みます。
このようにScope3 カテゴリ6の削減には、テクノロジー活用・出張計画の見直し・交通手段の工夫・データ活用・社内外での協働といった多面的な取り組みが欠かせません。
これらを組み合わせることで、業務効率化と環境負荷低減を同時に実現することが可能です。
今後は新たな働き方や技術を積極的に取り入れ、さらに進んだ削減を目指していくことが求められます。
まとめ
Scope3カテゴリ6は、企業の業務出張に伴う温室効果ガス(GHG)排出を対象とし、航空機・鉄道・自動車による移動や宿泊施設でのエネルギー消費が含まれます。
算定方法は移動距離×排出係数または出張費・宿泊日数を基にした計算が一般的です。
削減策として、出張の見直し、オンライン会議の活用、鉄道への切り替え、環境配慮型ホテルの選択などが効果的です。
また、出張管理システムを活用し、データ収集・分析を最適化することで、より精度の高い排出管理が可能になります。
企業はこれらの施策を通じて、環境負荷の低減と業務効率の向上を両立することが求められます。
カテゴリ6は、算定はそこまで複雑では無いのですが、データ集めをする段階で必要なデータが揃っていない事が良くあります。
例えば、飛行機での出張金額と、新幹線での出張金額が分けられていないことがあります。
ですので、算定のタイミングで次年度から算定をスムーズにするためのルール作りも一緒に行うことをお勧めします。


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