とうきょう森づくり貢献認証制度とは?CO₂削減と地域経済を両立する東京都の先進的政策を徹底解説

気候変動への対応が求められるいま、企業や自治体にとって「どれだけCO₂を削減したか」を科学的に示すことの重要性は年々高まっています。
しかし、数値で証明できる環境貢献の手段は決して多くありません。
そんな中、東京都が2012年にスタートした「とうきょう森づくり貢献認証制度」は、注目すべき先進的な取り組みとして存在感を増しています。
この制度は、単なる森林保全策ではなく、森林整備・木材活用・CO₂吸収・貯蔵量の認証までを一体化したユニークな認証制度です。
森林の手入れに協力したり、建物や製品に多摩産材を活用することで、その取り組みを“数値”として可視化し、東京都が公式に認証書を発行してくれます。
たとえば「このプロジェクトで◯トンのCO₂を吸収・固定した」といった形で、第三者機関による客観的なエビデンスが得られるのは大きな魅力。
CDPやESG評価への対応、CSRレポートへの掲載、社員や株主への説明資料など、あらゆる場面で説得力を発揮します。
さらに、都市と森林という一見離れた存在を“価値の連鎖”でつなぎ、地域経済の活性化や木材の地産地消にもつながる構造的なメリットも見逃せません。
今後、環境への取り組みに明確な根拠と広がりを求めるすべての組織にとって、非常に実用的で戦略的な制度といえるでしょう。
この記事では、この「とうきょう森づくり貢献認証制度」の仕組み・メリット・活用事例・申請の流れまでを、初めての方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。


とうきょう森づくり貢献認証制度とは
都市と森林をつなぐ、東京都のユニークな制度
「とうきょう森づくり貢献認証制度」は、2012年に東京都が創設した独自の環境認証制度です。
この制度の目的は、ただ森林を守ることではありません。都内に暮らす人々や企業と、多摩地域の森林との新たな“つながり”を生み出すことにあります。
ポイントは、大きく分けて次の3つのステップです。
- 森林整備
- 多摩産材の建築物や製品への活用
- CO₂の吸収・貯蔵量の「見える化」
つまり、森を整備し、その木材を街で使い、どれだけのCO₂が削減・固定されたのかを東京都が科学的に認証するという、非常に実践的かつ定量的な仕組みになっています。
この制度がユニークなのは、脱炭素の取り組みを“数値で証明”できることに加え、地域経済の活性化やESG経営の実践にもつながる点にあります。
単なる森林保全ではなく、「森と都市をつなぎ、環境と経済の両方を動かす仕組み」――それが、この制度の最大の特徴です。

▼出典:とうきょう森づくり貢献認証制度
制度を構成する3つの柱とは?
「とうきょう森づくり貢献認証制度」は、3つの異なる認証制度で構成されています。
それぞれが独立しながらも連携し、森林の整備から木材の活用、CO₂の“見える化”までを一気通貫で支援する設計となっています。
① 森林整備サポート認定制度(CO₂の吸収量を可視化)
最初の柱は、森林の手入れを支援する仕組みです。
企業や自治体、NPOなどが多摩地域の森林所有者と協力し、下刈り・除伐・間伐といった整備活動を実施することで、CO₂の吸収量が数値として認証されます。
この吸収量は、専門的な計算式に基づいて科学的に算出され、東京都がその効果を公式に認定。
たとえば、ある企業が森林整備を支援した結果、「◯トンのCO₂を吸収した」と明記された認定書が発行されます。
これは、環境貢献を“数値”として社外にアピールできるツールであり、CSRやESGの活動報告に活用できる点が大きな魅力です。
▼参考:ESGとは?サステナビリティ経営の基礎と最新トレンドを解説

▼出典:とうきょう森づくり貢献認証制度
② 建築物による貯蔵量認証制度(都市の建物がCO₂を固定)
2つ目の柱は、建築物に使われた多摩産材の中に固定されている炭素量を東京都が認証する仕組みです。
戸建て住宅や公共施設、商業施設などで多摩産材を一定量以上使用すると、その木材が長期にわたってCO₂を貯蔵していることが数値化されます。
この制度の特徴は、建築主と施工会社の両者が「貢献認定書」を受け取れる点。
建築主にとっては環境配慮型の不動産としての付加価値となり、施工側にとっても持続可能な建築を手がけた証明となります。
さらに、多くの認定事例が駅舎や図書館、大学施設など人目に触れる建物であることも、制度のPR効果を高めています。

▼出典:建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン
③ 製品による貯蔵量認証制度(日常製品でもESG貢献)
3つ目の柱は、日常的に使われる木製製品(家具や什器など)にもCO₂貯蔵効果があることを証明する仕組みです。
この制度は2段階で構成されています。
- 製造者向け:「図面認証」
製品の設計段階で、使われる多摩産材の量から1製品あたりのCO₂貯蔵量が認定されます。 - 購入者向け:「購入認証」
企業や自治体が認証済み製品を一定量以上購入した場合、その合計のCO₂貯蔵量が認証され、認定書が発行されます。
このように、製品をつくる側と使う側の両方が環境貢献を証明できる構造となっており、オフィス家具や公共施設の什器など、B2B領域での利用が進んでいます。
企業・自治体が得られるメリットとは?
「とうきょう森づくり貢献認証制度」は、ただの環境配慮では終わりません。
この制度に参加することで、企業や自治体は目に見える“成果”としての価値を獲得でき、ESG経営や地域戦略における武器となる点が大きな特長です。

▼出典:とうきょう森づくり貢献認証制度
✅ ESGやCDP対策に活用可能な「認証書」が手に入る
制度に基づいて森林整備を支援したり、多摩産材を建物や製品に活用すると、東京都から公式に「貢献認定書」が発行されます。
この認定書には、実際に吸収・貯蔵されたCO₂の数値が明記されており、CDPや各種ESG評価項目での裏付け資料として活用可能です。
環境活動が「何を、どれだけ、どのように行ったか」を第三者が証明してくれる点は、グリーンウォッシング対策にもなり、投資家・取引先からの信頼性を高める効果があります。
✅ CO₂吸収・貯蔵量を「数値化」して報告できる
ESGレポートやCSR報告書を作成する際、環境への貢献をどう“定量化”するかは、多くの企業が直面する課題です。
この制度を通じて得られる認定書は、CO₂吸収・固定量が明確に記載されており、報告書やプレゼンでの説得力が格段に向上します。
「自社が1年間で◯トンのCO₂吸収に貢献した」と具体的に語れることは、対外的なアピールにとどまらず、社員の意識向上や社内ブランディングにも効果的です。

▼出典:建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン
✅ 東京都が発行する信頼性の高い認定制度
この制度の認定は、東京都知事名で公式に発行されるため、制度としての信頼性が非常に高いことも魅力です。
認定プロセスには第三者委員会の審査が入るため、形式的な“表彰”ではなく、実質的な成果を伴った証明として活用できます。
地方自治体の認証としては珍しく、科学的根拠に基づくCO₂算定式や認定基準が明確に定められており、外部評価にも対応しやすい点も強みです。
✅ CSR・IR・採用活動でも「信頼のストーリー」が活きる
環境貢献の実績は、広報や採用活動でも非常に有効な“ストーリー資産”となります。
特にZ世代・ミレニアル世代の就職志向は、「社会や環境に配慮する会社かどうか」を重視する傾向があり、“森づくり”という具体的で親しみやすい活動は、強い共感を生みやすいテーマです。
また、IR資料や株主総会資料でも、東京都認定の客観的データとして記載可能なため、企業の長期的な価値向上にもつながります。
▼参考:企業価値向上に寄与するIRとサステナビリティの結びつき
実際にどう活用されている?認定事例の紹介
「とうきょう森づくり貢献認証制度」は、すでに多くの自治体・企業・教育機関などで実際に活用されており、その取り組みは数字としての成果だけでなく、社会的な信頼や注目度の向上にもつながっています。
ここでは、特に象徴的な3つの活用パターンをご紹介します。
自治体による森林支援とCO₂吸収量の可視化
たとえば新宿区や中央区といった都心の自治体は、多摩地域の森林整備を支援し、実際に吸収されたCO₂量の認定を取得しています。
中央区の場合、自らが支援した森(檜原村)で伐採された木材を使い、公共施設「本の森ちゅうおう(京橋図書館)」を建設。ここで得られた木材は、建築物として再びCO₂を長期的に貯蔵しています。
このような「森を支援し、建物で使い、貯蔵量を認定する」一連の取り組みは、まさに制度の理想的な活用例です。
単なる助成や植樹ではなく、脱炭素・地域貢献・自治体のブランディングを同時に実現しています。

▼出典:中央区「中央区の森」の木材活用
大手企業が多摩産材を建築物に活用
民間企業においても、富士通・東芝・野村不動産などが自社プロジェクトで制度を導入しています。
たとえば、東急電鉄は商業施設の改修に多摩産材を使用し、「建築物による貯蔵量認証制度」を活用。
建築物がどれだけのCO₂を貯蔵しているかを明確にし、ESGレポートや企業PRの中で“環境に配慮した再開発”として発信しています。
また、富士通や日立キャピタルといった企業は、森林整備を通じてCO₂吸収量の認定を受ける取り組みも展開。
CSRや社員参加型の環境活動と連動させることで、内部のエンゲージメント向上にも寄与しています。

▼出典:東京都「多摩産材」と秋田県「あきた材」を活用した池上線千鳥町駅“木になるリニューアル”が始まります!
制度の申し込み方法と認定までの流れ
制度に興味を持った企業や自治体にとって、実際の申請手続きは気になるポイントです。
「とうきょう森づくり貢献認証制度」は、想像以上にシンプルかつ実行可能なステップで構成されており、初めての取り組みでも安心して進められるよう工夫されています。
ステップはシンプルで実行可能
認定までの基本的な流れは、次の3ステップです。
① 東京都に申請書を提出
まずは、制度に対応する様式に沿って、必要な申請書類を東京都に提出します。
たとえば、建築物であれば「貯蔵量算定表」や「多摩産材出荷証明書」、森林整備であれば「整備計画書」や「報告書」など、活動内容に応じた書類が求められます。
② 審査委員会による評価
提出された書類は、専門家を含む第三者委員会によって審査されます。
ここでは、提出内容の妥当性や算定方法の正確性などがチェックされ、必要に応じてヒアリングや資料の追加提出を求められることもあります。
③ 認定後、「貢献認定書」を発行
審査を通過すると、東京都知事名で「貢献認定書」が発行されます。
この認定書には、活動を通じて吸収・貯蔵されたCO₂量が明記されており、ESGレポートやサステナビリティ開示資料にそのまま活用可能です。

🌲 森林整備の場合はマッチング支援も
森林整備に関しては、「森林所有者」と「協賛企業・団体」のマッチングを東京都が支援する仕組みがあります。
協賛を希望する企業は、整備対象となる森林を探す必要がなく、東京都が条件に合う所有者を紹介し、協定締結までサポートしてくれます。
このマッチング制度のおかげで、都市部の企業でも手軽に多摩地域の森林整備に関わることが可能となっており、特にCSR活動や地域貢献を重視する企業にとっては、非常に実用的な選択肢となっています。

▼出典:森林整備サポート認定制度の概要
まとめ
「とうきょう森づくり貢献認証制度」は、森林整備から都市での木材活用までを一貫して支援し、CO₂削減を“数値で証明できる”仕組みです。
東京都が認定する信頼性の高い制度であると同時に、企業や自治体にとってはESG経営やサステナビリティ戦略に直結する実践的なツールでもあります。
認証書はCDPやCSR報告書に活用でき、脱炭素への貢献を社内外に明確に示せる強力な証拠となります。
都市と森林を結びつけるこの制度は、社会的責任を果たすだけでなく、ブランド力や企業価値の向上にもつながる投資対効果の高い取り組みです。
今こそ、自社の脱炭素活動を次のステージへ進めてみませんか?