営農型太陽光発電:農業と再生可能エネルギーの融合

先日、お客様が脱炭素カボチャの販売をスーパーにて大々的にやられていたので、大きいのを1つ購入してきました!
脱炭素かぼちゃを購入されたお客様の意見としては、以下のようなものが上がっていたとのことです。
・「脱炭素」について具体的に知ることができた。
・これからの時代はこういった環境に良いものを購入していきたいと思いました。
・家に遊びに来ている孫達にお土産で4つ買って帰ります。
上記のように、農業でも脱炭素の動きは進んでおり、各農家や企業が営農型太陽光発電やバイオマス発電を活用したり有機農業、省エネ農業機械の導入など脱炭素に取り組んだりされています。
▼参考:農業で脱炭素ブランドを築く│北海道のスタートアップが掲げる挑戦と決意
他にも、最近ではJ-クレジット制度運営委員会で認証された「水稲栽培における中干し期間の延長」方法論を用いたカーボンクレジット組成も積極的に取り組まれているなど様々な動きが出てきています。
本記事では、脱炭素かぼちゃを栽培されている企業様でも取り組まれている営農型太陽光発電について解説していきます。

営農型太陽光発電とは
営農型太陽光発電(アグリソーラー)は、農業と太陽光発電を同時に行うシステムで、持続可能な農業と再生可能エネルギーの普及を両立させる画期的な取り組みです。
農地をそのまま活用しながら、太陽光パネルを設置して電力を生産するこの手法は、土地の有効利用や地域社会の活性化、さらには環境保全に大きく寄与します。
日本国内に留まらず、世界各地で地域特性に応じた導入が進められ、その成果と課題が注目されています。
太陽光発電は、南向きで30度の角度でパネルを設置するのが効果が高いといわれていますが、農業との共存で縦向きに置いたり垂直に置いたり工夫がされています。
太陽光発電の設備を農業の生育に必要な日照量を確保できる水準にとどめることから、ソーラーシェアリングとも呼ばれています。

▼出典:農林水産省HP 営農型太陽光発電について
下記のような利点を活かした取組事例も増えてきており、視察などが進むみ全国での一層の推進が期待されています。



営農型太陽光発電は、再生可能エネルギーと持続可能な食糧生産の両方を促進することができ、多くの地域では、土地の有限性が問題となっている中、同じ土地での二重の利用を可能にし、土地の効率的な使用が出来ます。

▼出典:スマートジャパン「ソーラーシェアリングはなぜ普及しないのか」という疑問を考える
営農型太陽光発電の仕組みと意義
営農型太陽光発電(アグリソーラー)は、農業と再生可能エネルギーの発電を融合させることで、持続可能な発展を目指す新しい土地利用モデルです。
このシステムは、農地の上に太陽光パネルを設置し、作物の栽培と電力の生産を同時に行う仕組みで、土地の効率的利用、農業の収益向上、環境保全の実現を目指しています。
その特長と意義は、幅広い分野にわたり多大なメリットをもたらします。
営農型太陽光発電の仕組みと幅広いメリット
営農型太陽光発電の核となるのは、「農業活動を妨げない設計」です。
太陽光パネルの配置や高さ、透過性を工夫することで、農作物が必要とする日照量や風通しを確保します。
このような設計は、日陰を好む作物や乾燥に弱い作物の栽培に特に適しており、収穫量や作物の品質に良い影響を与えることが実証されています。
1. 土地の多機能活用による収益性向上
営農型太陽光発電は、同じ農地で農業と電力生産を両立させることで、土地の価値を最大限に引き出します。
発電による収益が農作物の収益に加わるため、農地が生む経済的価値が大きく向上します。
特に、作物収穫の季節変動に左右される農業の収益構造が、年間を通じて安定することは農家にとって大きな安心材料となります。
また、耕作放棄地の再利用にも活用でき、農地の有効活用が期待されます。
2. 環境負荷の軽減と気候変動対策
営農型太陽光発電は、再生可能エネルギーを利用することで、化石燃料への依存を減らし、温室効果ガス排出量の削減に貢献します。
また、太陽光パネルが作物の上部に影を作ることで、地温の上昇を抑え、農作物の水分蒸発を抑制します。
これにより、水資源が限られた地域や気候変動の影響が大きい地域においても、農業の持続可能性を確保できます。
▼参考:持続可能なエネルギーと自然環境の両立:太陽光発電と生物多様性の調和を考え
3. 農業経営の安定化と地域活性化
営農型太陽光発電の収益構造は、農業の経済基盤を強化し、地域社会の活性化につながります。
発電による収益が農家の収入を補完するだけでなく、太陽光発電設備の設置・管理には地域の人材が関与するため、地域経済に新たな雇用が生まれます。
また、このシステムは、若年層の農業参入を促進し、地域社会全体の活性化にも寄与します。
4. エネルギーの地産地消と災害時の利用
営農型太陽光発電は、地域で発電された電力を地元で消費する「地産地消」のエネルギーモデルを実現します。
これにより、エネルギーの自給率が向上し、電力輸送のロスを削減することが可能です。
また、災害時には、この発電システムが地域の電力供給を補完する役割を果たし、エネルギーの安定供給を実現します。
5. 技術革新による効率向上
営農型太陽光発電は、最新の技術革新によってその効果をさらに高めています。
たとえば、光透過型パネルや自動で角度を調整するパネルが導入されることで、発電効率と農作物生産の両立が可能となっています。
また、AIやIoT技術を活用して、天候や作物の状態に応じた最適な管理が行えるシステムも開発されています。
意義と将来性
営農型太陽光発電の意義は、単なる収益向上やエネルギー生産にとどまりません。
この取り組みは、農業の価値を再定義し、環境保全や地域社会の持続可能性を実現する新しいモデルを提供します。
農業従事者にとっては、収入源の多様化による生活の安定化、エネルギー面では再生可能エネルギーの普及と災害時のレジリエンス強化が大きな意義を持ちます。
さらに、気候変動が進行する中で、農業とエネルギー分野の統合は、地球規模の課題解決に不可欠な手段となるでしょう。
技術の進化と政策的支援が進めば、営農型太陽光発電はより多くの地域で普及し、農地の多面的な価値をさらに高める可能性を秘めています。
▼参考:ネイチャーポジティブとは?注目される理由や世界的な潮流とその背景
営農型太陽光発電の助成金
営農型太陽光発電、いわゆるソーラーシェアリングの導入を促進するため、環境省は2025年度も民間事業者や農業者を対象とした補助事業を展開しています。
これは「地域共生型の太陽光発電設備の導入促進事業」の一環で、営農と発電を両立する再エネ設備の普及とコスト低減を目的とした取り組みです。
本事業では、太陽光発電設備や蓄電池、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などの導入費用の最大1/2を補助し、上限額は1件あたり最大1億5000万円に設定されています。
単年度での補助が基本ですが、水面型発電で1MW以上のパワコン出力がある場合は、2カ年事業としての実施も可能です。
申請にあたっては、農業生産の持続性が確保されていることが条件となり、通常の屋根置き太陽光やビニールハウスへの設置は対象外とされます。
また、補助対象となる導入費用は、環境省が提示するコスト要件(kWあたりの上限価格)を満たす必要があります。
たとえば、パワーコンディショナ(PCS)の出力が10kW以上50kW未満の場合、一般地域では1kWあたり24.02万円以下が条件です。
さらに、蓄電池を導入する場合は、容量に応じた目標価格(業務用で1kWhあたり12万円以下など)も設定されています。これらの価格を超える場合は、その超過分は補助の対象外となります。
この補助金制度は、単に設備導入を支援するにとどまらず、農業の持続可能性と再エネ導入の両立を目指す地域密着型モデルの形成を促すものであり、環境負荷の低減と地域活性化の両面で重要な意義を持ちます。
なお、執行団体は一般社団法人環境技術普及促進協会であり、申請や制度詳細については同協会の公式サイトで案内が行われています。
5月8日正午が第1次公募の締切となっており、条件を満たす場合は早めの準備が求められます。

▼出典:一般社団法人環境技術普及促進協会 公募情報 ≫ 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業
▼参考:環境省 民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業のうち、地域共生型の太陽光発電設備の導入促進事業の公募開始
まとめ
営農型太陽光発電は、持続可能な社会の実現に向けた重要な手段です。特に、気候変動の影響が強まる中で、再生可能エネルギーの普及と農業の強化が急務となっています。今後、技術革新や政策支援により導入コストが低下することで、さらに多くの地域で採用されると考えられます。
また、エネルギー自給率向上や地域経済の活性化においても、このシステムは重要な役割を果たします。
具体的には、農業を軸とした新たなビジネスモデルの創出や、地域間の技術共有が進むことで、世界規模での普及が期待されています。
営農型太陽光発電は、農業とエネルギーの課題を同時に解決する革新的な取り組みです。
その成功は、地球環境の保護と地域社会の持続可能な発展を実現するための大きな一歩となるでしょう。