FTSEとは?ESG評価の基準と企業におけるESG評価の活用

FTSEは、世界中の投資家や企業へ株価指数を提供する存在として知られています。その中核を担うのが、ロンドン証券取引所のグループ企業であるFTSE Russellです。

特に「FTSE 100」や「FTSE4Good Index」などの指数は、株式市場の動向を把握するだけでなく、持続可能な投資を促進するための基準としても注目されています。
上記取り組みから、FTSEは、金融市場の健全な発展と企業のESG(環境・社会・ガバナンス)評価において、不可欠な役割を果たしています。

※株価指数:株式市場全体や特定のグループの株価の動きを示す指標で、市場のパフォーマンスを把握するために用いられます。日本では、日経平均株価やS&P500があります。

▼出典:楽天証券 知ってるようで実は知らない!?インデックス投資で肝心の株価指数の選び方

目次

FTSEの基本情報

FTSEとは何か

FTSEは、金融市場における株価指数の提供を通じて、世界中の投資家や企業にとって欠かせない存在となっているグローバルな指数プロバイダーです。

その運営主体であるFTSE Russellは、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)の完全子会社として、透明性と正確性に優れたサービスを展開しています。

特に「FTSE 100指数」は、ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100社で構成され、イギリス市場を象徴する株価指数として知られています。

この指数は、国内外の投資家にとって市場全体の動向を把握するための重要な指標となり、イギリス経済の健全性を示す象徴的な役割も担っています。
他にもFTSE 100の93%の企業がCDPの回答を行っています。

また、FTSEはその厳格な管理手法が特徴で、独立した委員会による監督のもと、明確で公開されたルールに基づいて構成銘柄を定期的に見直し、指数の信頼性と市場適合性を維持しています。

FTSEの重要性は株式市場の指標に留まりません。
同社は早くからESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく投資の拡大に注目し、「FTSE4Good Indexシリーズ」をはじめとする持続可能性指標を提供してきました。
これにより、企業のサステナビリティ評価を支援し、投資家にとっての指針となる価値あるデータを生み出しています。

さらに、2015年には米国の指数プロバイダーRussellとの統合を果たし、グローバル市場でのプレゼンスを一層強化しました。この統合により、株式指数に加え、債券やマルチアセット指数など、幅広い資産クラスをカバーすることが可能になりました。

技術面でも、FTSEは独自の指数計算システムやリアルタイムデータ配信インフラを整備し、正確かつタイムリーなデータを提供しています。
これにより、機関投資家やファンド運用者は、FTSEの指数をベンチマークとして活用し、投資判断や運用戦略の精度を高めています。

近年では、気候変動リスクやサステナビリティ課題に対応する新しい指数の開発にも注力しており、ESG投資の需要増加に対応した革新的な商品を提供しています。

このように、FTSEは単なる指数プロバイダーとしてではなく、金融市場全体を支えるインフラとしての役割を担っています。
その継続的な革新と高品質なサービスは、グローバルな投資環境の健全性と持続可能性を支える不可欠な要素となっています。

▼出典:FTSE100種総合株価指数wiki

FTSEの歴史と背景

FTSEの歴史は、1984年に「FTSE 100指数」が導入されたことから始まります。

当時、イギリス市場では、投資家に正確で包括的な市場動向を示す信頼性の高い指標が求められており、FTSE 100はこの要望に応える形で誕生しました。
その透明性と分かりやすさから、イギリス国内外の投資家に受け入れられ、英国経済の健全性を測る主要な指標として定着しました。

1995年には、指数提供の専門性をさらに高めるためにFTSE Internationalが設立されました。これは、Financial Times社とロンドン証券取引所が共同で設立した組織で、両者の専門性を結集し、指数運営の効率化と透明性向上を実現しました。

この取り組みにより、FTSEは英国市場だけでなく、グローバルな市場の指標プロバイダーとしての基盤を築きました。また、独立した委員会が指数の管理と監督を担う体制を導入し、信頼性の高い運営が確立されました。

2015年には、FTSEの歴史における重要なターニングポイントとなるRussell Investmentsの指数事業との統合が行われました。この統合により、FTSEは北米市場へのアクセスを拡大し、世界規模での事業展開を実現しました。

また、指数計算や品質管理の基準がグローバルに統一され、投資家からの信頼がさらに強固なものとなりました。この統合を契機に、FTSEは株式指数だけでなく、債券指数やマルチアセット指数など、幅広い資産クラスをカバーする総合的な指数プロバイダーへと成長しました。

さらに、FTSEは近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大に対応し、「FTSE4Good Indexシリーズ」をはじめとするサステナビリティ関連の指数を開発してきました。

これらの指数は、企業の社会的責任や持続可能性への取り組みを評価する基準として、投資家に広く採用されています。
このような取り組みは、金融市場が単に経済活動の反映にとどまらず、社会的価値の創造においても重要な役割を果たしていることを示しています。

FTSE ESG評価の仕組み

FTSEにおけるESGスコアは、企業のサステナビリティに対する取り組みを多角的に評価するために設計された、精緻で包括的な評価体系です。

このスコアリングは、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの主要分野に焦点を当て、それぞれをテーマごとに細分化し、透明性と正確性を兼ね備えた方法論で算出されます。
企業の現状を評価するだけでなく、将来のリスクや機会に対応する力も考慮することで、投資判断における信頼性の高い基準を提供しています。

ESGスコアの算出方法

FTSEにおけるESGスコアは、評価対象を階層構造に基づいて分類しています。最初の階層では、環境、社会、ガバナンスの3つの柱を14の主要テーマに分割します。

例えば、環境分野では気候変動、水資源管理、生物多様性が、社会分野では人権、労働基準、健康と安全が、ガバナンス分野ではコーポレートガバナンス、企業倫理、リスク管理が主要テーマとなります。次に、これらのテーマをさらに具体的な評価項目に分解し、個々の企業の状況を詳細に分析します。

このアプローチでは、企業の規模や業種特性に応じて評価項目の重み付けが調整されるため、業種間での公平な比較が可能になります。
エネルギーセクターでは気候変動が特に重要視され、サービス業では労働基準への評価が重視されるといった形です。

▼出典:FTSE RUSSELL ESG スコア

スコアの信頼性を支える基盤は、詳細で正確なデータ収集で基本的には公開情報を活用します。企業の年次報告書、サステナビリティレポート、規制当局への提出書類など、信頼性の高い公開情報を網羅的に収集します。

収集したデータは、業界特性や市場環境に合わせて標準化され、評価基準に基づいて分析されます。この際、データの品質を担保するための厳格な確認プロセスが適用されます。

▼出典:日本取引所グループ ESG評価機関等の紹介

上記のようなFTSE Russell の仕様に沿ったデータ収集を行うように訓練された世界各地のデータアナリストが、調査を行っていきます。

ESGスコアの評価プロセスは、業種や地域ごとの特性を考慮しながらも、統一された基準を適用することで、異なる企業間の比較を可能にする仕組みです。
この標準化されたスコアリング手法により、企業ごとの違いを踏まえつつ、評価の公平性と一貫性が確保されています。

エネルギー業界では環境負荷の削減が特に重視される一方で、サービス業では労働環境や顧客対応の透明性が評価の重要なポイントとなるなど、それぞれの特性に応じた柔軟な適用が可能です。

また、評価は業界内での競争力を測る相対的な視点と、グローバルな基準に基づく絶対的な視点を組み合わせることで構成されています。

企業が所属する業界内での位置付けだけでなく、国際的な基準に照らした際の持続可能性の達成度も測定できるようになっています。この手法は、競争環境を考慮しつつ、より高い水準の目標に向けた企業の進捗を示す役割を果たしています。

さらに、ESGスコアは、評価項目ごとに異なる重要度を設定し、それに応じた加重平均を適用することで、各企業の実態をより正確に反映しています。

気候変動に対する取り組みが最優先とされる企業では、この分野のスコアが総合評価に与える影響が大きくなる一方で、他の企業では別のテーマが重視されることがあります。
これにより、評価は個別の事情に適応した精度の高い結果を提供します。

信頼性を確保するために、FTSEは外部の独立した専門家を含む評価委員会を設置し、評価基準の策定やスコアリングプロセスを厳密に監督しています。
この仕組みにより、評価における客観性と中立性が担保されています。

また、FTSEは評価基準や方法論を公開することで透明性を高め、市場参加者からのフィードバックを積極的に受け入れる仕組みを整えています。
これにより、評価方法は社会的要請や市場環境の変化に応じて定期的に見直され、時代に即した改善が継続されています。

▼出典:日本取引所グループ ESG評価機関等の紹介

ESG評価項目とその重要性

FTSEにおけるESGスコアの評価項目は、企業のサステナビリティを包括的かつ精密に評価するために設計されています。

環境(Environmental)の評価項目

環境分野では、気候変動への対応が中心的な評価対象です。
具体的には、温室効果ガス排出量の削減目標とその進捗状況、再生可能エネルギーの導入状況、エネルギー効率の向上などが評価されます。

さらに、水資源の管理、生物多様性への影響、廃棄物管理なども重要な指標に含まれています。これらの評価項目は、特に製造業やエネルギー産業のような環境負荷の高い業界で高く優先されます。

これらの評価を通じて、企業が環境リスクをどの程度管理できているかだけでなく、持続可能な成長に向けた取り組みの進捗状況が測定されます。これにより、投資家は環境的な持続可能性を判断するための具体的な指標を得ることができます。

社会(Social)の評価項目

社会分野では、人権、労働慣行、そして多様性と包摂性の推進が中核的な評価基準です。
従業員の健康と安全の管理、研修や人材育成の取り組み、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスが含まれています。
特に、労働集約型の産業やグローバルに事業を展開する企業において、これらの項目は重要性が高く設定されています。

この分野の評価は、企業が従業員や地域社会、さらには国際的なステークホルダーに対してどのように責任を果たしているかを測るものです。
これにより、企業が社会に対してプラスの影響を与えているかどうかが判断され、投資家にとってはリスク軽減と同時に機会を見極めるための材料となります。

ガバナンス(Governance)の評価項目

ガバナンス分野では、取締役会の構造と機能が評価の中心です。具体的には、取締役会の独立性、多様性、報酬体系の公正性、リスク管理体制、株主権利の保護が評価項目に含まれます。
これらは、業種や地域に関係なく、全ての企業にとって共通して重要な評価基準です。

健全なガバナンスは、企業が持続可能性の目標を達成する上で欠かせない基盤となります。
これらの評価項目を通じて、企業が透明性を確保し、長期的な戦略を効果的に実行する能力が測定されます。

▼出典:LSEG の ESG スコア

FTSE ESGスコアの活用法

投資判断におけるESGスコアの役割

ESGスコアは、投資プロセスの効率化にも大きく寄与しています。
FTSEにおけるESGスコアを用いることで、多くの銘柄から投資候補を効率的に絞り込み、体系的なポートフォリオ構築を支援します。

特にインデックス運用においては、スコアに基づく指数構築や、それに連動する運用商品の開発が進んでおり、運用効率と透明性の向上に貢献しています。
これにより、投資家はスコアを基にリスク調整後のリターンを最適化する戦略を簡便に実行できます。

ESGスコアは、投資パフォーマンスの向上にも寄与します。企業の持続可能性への取り組みが競争力強化や市場での評価向上につながることから、スコアを活用することで長期的な成長性を持つ企業を特定することが可能です。
さらに、定量データと定性的評価の組み合わせにより、企業の現状だけでなく将来的な可能性も評価する柔軟性を持っています。

このスコアは企業とのエンゲージメント活動にも活用され、進捗状況や課題の特定を通じて、持続可能性の向上を促します。
同時に、投資家が受託者責任を果たすための基盤としても機能しており、その透明性と客観性により信頼性の高い意思決定をサポートします。
評価基準が公開されているため、スコアの背後にある論理やデータも容易に把握でき、投資家の理解を深めます。

企業のレピュテーション向上に向けたESGスコアの活用

ESGスコアは企業がサステナビリティ戦略の進捗を効果的にモニタリングし、改善点を迅速に特定することを可能にします
例えば、環境負荷低減の取り組み状況やガバナンス体制の整備度合いを定量的に把握することで、経営資源を重点的に配分すべき領域を明確化できます。

また、同業他社とのベンチマーク比較を通じて、自社の相対的な位置づけを把握し、競争力を強化するための具体的な方策を立案することができます。これにより、持続可能性を経営戦略の中心に据えながら、効率的な資源活用を実現できます。

このスコアを通じて、企業は持続可能性に向けた取り組みを客観的に示し、特に投資家や顧客からの評価を向上させることができます
スコアの結果を基に改善計画を策定し、その進捗状況を開示することで、ステークホルダーとの建設的なコミュニケーションを促進します。また、情報を透明性高く開示することで、ステークホルダーの信頼を得ることができます。

特に、環境負荷や社会課題への取り組み状況を具体的かつ網羅的に伝えることは、企業の透明性を高め、レピュテーション向上に直接つながります。
データの信頼性を担保するために第三者機関による検証を受けることも効果的です。

企業はスコアの推移や改善計画を統合報告書やサステナビリティレポートに記載し、その成果をステークホルダーに伝えることで、透明性を高めることができます。
さらに、スコア向上を経営目標の一環として組み込むことで、全社的な意識改革を促進し、持続可能な経営へのコミットメントを強化できます。

加えて、スコアを活用して得られたベストプラクティスを共有することで、他企業の取り組みを刺激し、業界全体の基準を底上げすることができます。これは、企業自身の評価を高めるだけでなく、持続可能な社会の実現にも貢献する取り組みと言えます。

▼出典:株式会社ドコマップジャパン 上場企業におけるESG取り組みに関する重要テーマ、第2位の「気候変動」を抑えて、第1位は「脱炭素」

まとめ:今後のFTSEとESG基準について

今後のFTSEにおけるESG基準の動向は、技術革新や規制の進展、社会の持続可能性への関心の高まりを背景に、さらなる精緻化と信頼性の向上が期待されています。

特にデータ収集と分析の効率化は顕著な進化を遂げると考えられます。
AIや機械学習技術の進展により、企業が公表する膨大な情報を効率的かつ正確に抽出し、迅速に評価するシステムが普及するでしょう。

さらに、ブロックチェーン技術を活用することで、データの透明性と改ざん防止が実現し、評価の信頼性が大幅に向上します。また、リアルタイムでデータを更新し、企業の取り組みを即座に反映するダイナミックな評価モデルの導入も予測されます。

評価基準については、多様化する社会課題に対応した進化が進むでしょう。気候変動への具体的な対応を評価する指標や、サプライチェーン全体を対象にした包括的な評価が導入されると見込まれます。
また、生物多様性や水資源管理、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みなど、新たな環境課題を反映した項目が追加されることで、企業の取り組みをより正確かつ多角的に評価する仕組みが整備されます。

正確性の向上も引き続き重要なテーマです。衛星データやIoTセンサーなど、客観的なデータソースの活用が進み、第三者機関による厳格な検証プロセスも強化されるでしょう。

これに加えて、企業の情報開示が標準化され、詳細なデータ提供が求められることで、評価の一貫性と透明性が向上します。このような進化は、ステークホルダーからの信頼を強化し、評価基準のグローバルな信頼性を高める基盤となるでしょう。

また、規制の進展はESG基準にとって重要な影響要因です。EUのサステナブルファイナンス規制や各国の情報開示義務化に対応する中で、評価基準の国際的な調和が進むと同時に、地域の特性に配慮した柔軟な対応も求められます。
このバランスを保つことで、グローバルな基準としての信頼性を維持しつつ、地域ごとの多様な要請にも応えることが可能となります。

技術革新もまた、基準の進化を支える重要な要素です。予測的分析技術を活用することで、企業が直面する将来的なリスクや機会をより正確に評価し、長期的な視点での戦略立案を支援します。
また、インパクト評価の技術が向上することで、企業活動が環境や社会に与える影響を精密に測定し、具体的な改善につなげる仕組みが整います。

これらの進化により、企業が持続可能な成長を目指すための包括的かつ信頼性の高い評価システムとしての価値を一層高めるでしょう。

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