バイオマスとは?種類、利点、バイオマス発電と燃料利用のメリットとデメリットを徹底解説

地球温暖化や資源枯渇が深刻化する中、再生可能エネルギーへの転換は避けて通れない課題となっています。
その中でも「バイオマス」は、植物や動物の残渣、農業や林業の副産物、食品廃棄物などを資源として活用する、環境負荷の低いエネルギー源として注目を集めています。

最大の特徴は「炭素ニュートラル」という性質にあり、燃焼によって排出される二酸化炭素は、成長過程で植物が吸収した量と相殺されるため、大気中の温室効果ガスを増加させにくいとされています。
さらに、廃棄物を有効利用することで廃棄処理の負担を減らし、地域でのエネルギー自給を可能にする点も大きなメリットです。

木質ペレットや農業残渣からのバイオガス、藻類を活用したバイオ燃料、さらには食品廃棄物からのエネルギー化など、その形態は多岐にわたり、発電、輸送燃料、バイオプラスチックや建材といった産業利用まで広がっています。
加えて、地域での雇用創出や経済循環の強化にもつながるため、環境・経済・社会の三側面から持続可能性を支える重要な存在です。

本記事では、バイオマスの利点や種類、活用方法を分かりやすく解説し、持続可能な未来を築くためにどのような役割を果たせるのかを考えていきます。

目次

バイオマスの利点


バイオマスは、持続可能なエネルギー源として多くの利点を持ち、環境、経済、社会のさまざまな側面において大きな可能性を秘めています。
その特性を理解することで、持続可能な未来に向けた活用がさらに広がるでしょう。以下では、バイオマスがもたらす主な利点について詳しく解説します。

バイオマスの最大の特長は、炭素ニュートラルな特性にあります。バイオマスの燃焼過程で放出される二酸化炭素は、植物が成長過程で吸収したものであるため、理論上は大気中の二酸化炭素の総量を増やしません。

この性質は、化石燃料と比べて温室効果ガスの排出削減に大きく貢献します。特に、気候変動の緩和が国際的に求められる中で、バイオマスは脱炭素社会の実現を後押しする重要な手段として注目されています。

また、バイオマスは地域経済の活性化にも寄与します。農業や林業、畜産業の副産物や廃棄物から得られるため、地域内での生産と消費が可能です。
この「地産地消型」のエネルギー供給は、エネルギーの輸入依存度を減らし、地域内でのエネルギー自給率を高める役割を果たします。

さらに、バイオマスの収集、加工、エネルギー生成といったプロセスには多くの雇用が生まれるため、地域の経済基盤を強化する効果も期待できます。特に、農村部や資源が豊富な地域では、新たな収入源を提供する手段として非常に有効です。

廃棄物の有効活用という視点でも、バイオマスは環境負荷の低減に寄与します。農業廃棄物や食品廃棄物、木材チップ、廃油など、これまで捨てられていた資源をエネルギー源として活用することで、埋立地への廃棄物流入を削減できます。

このような循環型の利用は、廃棄物処理問題の解決につながるだけでなく、資源の効率的な活用を促進します。例えば、食品加工業の副産物をバイオガスに転換する取り組みは、廃棄物削減とエネルギー供給を同時に実現するモデルとして注目されています。

さらに、バイオマスはエネルギー供給の多様化と安定性向上にも寄与します。化石燃料に依存するエネルギーシステムは、価格変動や供給リスクに脆弱ですが、バイオマスは地域で調達可能な資源を活用できるため、エネルギー供給の安定性を高める役割を果たします。

特に、風力発電や太陽光発電といった天候に依存する再生可能エネルギーと補完的に利用することで、電力供給の安定化を図ることが可能です。また、液体燃料やガス燃料としても利用可能であり、輸送分野での化石燃料代替としても大きな可能性を秘めています。

多用途性もバイオマスの大きな魅力です。バイオマスは発電や熱供給だけでなく、液体燃料やガス燃料としても利用できます。バイオエタノールやバイオディーゼルは、輸送分野での脱炭素化を進める手段として重要視されています。

また、廃棄物から生成されるバイオガスは、発電や暖房用途に加えて、家庭用エネルギーとしても利用可能です。この多様な用途に対応できる柔軟性が、バイオマスを他の再生可能エネルギーと差別化する要因となっています。

バイオマスの活用は、地域社会においても大きな恩恵をもたらします。エネルギーの地産地消が進むことで、地域住民のエネルギーコストが削減され、生活水準が向上します。

特に電力インフラが未整備の地域では、バイオマスを利用したオフグリッド型の電力供給が地域の発展に寄与します。また、バイオマスの利用を通じて、地域社会全体の持続可能性が向上し、住民の環境意識が高まるといった二次的な効果も期待されます。

このように、バイオマスには炭素ニュートラルな特性、地域経済の活性化、廃棄物の有効活用、エネルギー供給の安定化、多用途性、そして地域社会への直接的な恩恵といった多くの利点があります。
これらの特徴を最大限に活用することで、バイオマスは持続可能な社会の実現に向けた重要なエネルギー源としての役割を果たすことができます。

そのためには、効率的な利用技術の開発や政策的な支援が不可欠です。バイオマスの潜在力を引き出す取り組みが進むことで、気候変動への対応と経済発展の両立が可能となるでしょう。

日本でもバイオマス活用は推進されており、令和6年10月にバイオマスの活用をめぐる状況という資料を新しく更新し農林水産省のHPで紹介され、ロードマップや主な取り組み事例がまとめられています。

▼出典:バイオマスの活用をめぐる状況

バイオマスの種類


一口にバイオマスと言ってもいくつかに分けられており、以下は、バイオマスの主な種類とその特徴についての解説です。

木質バイオマス

まず、木質バイオマスの大きな特徴として、再生可能である点が挙げられます。森林は適切に管理される限り、永続的に利用可能な資源です。
伐採した木の代わりに植林を行えば、新たな資源が育成され、持続可能な形での利用が可能となります。

さらに、木質バイオマスは燃焼時に二酸化炭素を排出しますが、これは木が成長過程で吸収したものであり、大気中の二酸化炭素量を実質的に増加させないカーボンニュートラルな特性を持っています。
この性質は、化石燃料の燃焼による温室効果ガス排出とは異なり、気候変動の抑制に寄与する重要なポイントです。

▼参考:【2025年最新】カーボンニュートラルとは?現状と今後のトレンド

木質バイオマスは、エネルギー供給の観点からも優れています。木材を直接燃焼して熱を得る方法や、ガス化技術を用いてエネルギーを抽出する方法など、多様な利用法があります。これらは発電や地域暖房システムとして活用され、日常生活に必要なエネルギーを供給します。

特に、木材を小粒状に圧縮した木質ペレットは、エネルギー密度が高く、輸送や貯蔵が容易であるため、効率的なエネルギー供給に適しています。欧州では、木質ペレットを利用した発電施設や暖房システムが広く普及しており、再生可能エネルギーの一翼を担っています。

地域経済の観点でも、木質バイオマスの利用は大きな利点を持っています。森林管理や伐採、加工、燃料生産に関わる一連の活動には、多くの雇用が生まれます。これにより、農村部や山間部など、他の産業が限られている地域での経済的基盤を強化する効果が期待されます。

また、地域内で得られる資源をエネルギーとして利用することで、エネルギーの輸入依存が減り、エネルギー自給率が向上します。これにより、エネルギー供給コストが削減され、地域全体の経済的負担が軽減されると同時に、地元資源の活用が地域の持続可能性を高めます。

木質バイオマスの利用は、環境保全の面でも大きなメリットをもたらします。間伐材や伐採残渣といった通常であれば廃棄される資源を燃料として活用することで、廃棄物の削減が実現します。

また、適切な間伐は森林の健全な成長を促し、生態系の多様性を維持する役割も果たします。さらに、森林が健全な状態を保つことで、土壌の保全や洪水防止といった多面的な環境効果が得られます。こうした取り組みは、森林資源を無駄なく活用しながら、循環型社会の構築を進めるための鍵となります。

廃棄物の有効活用という観点でも、木質バイオマスは注目されています。木材加工や製材の過程で発生する端材や木くずは、通常であれば廃棄されることが多いですが、これらを燃料として利用することで廃棄物を減らし、新たなエネルギー資源としての価値を生み出します。

これにより、廃棄物処理のコストを削減できるだけでなく、埋立地への廃棄物流入を抑制し、環境負荷を軽減することが可能です。また、木質バイオマスの利用は、リサイクルが難しい廃材の処理方法としても効果的です。

さらに、木質バイオマスは他の再生可能エネルギーとの相互補完性を持っています。例えば、風力発電や太陽光発電は天候に依存するため、供給が不安定になる場合がありますが、木質バイオマスは安定した供給が可能です。

これにより、エネルギー供給全体の安定性を高め、エネルギーミックスの一部として重要な役割を果たします。また、発電と熱供給の両方に利用できる柔軟性を持ち、多様なエネルギー需要に応えることができます。

▼出典:林野庁 なぜ木質バイオマスを使うのか

ただし、木質バイオマスを持続可能に利用するためには、課題も存在します。過剰な伐採は森林の再生能力を超え、生態系や土壌の劣化を引き起こす可能性があります。そのため、伐採と植林のバランスを保つことが重要です。

また、輸送距離が長い場合にはエネルギー効率が低下するため、地元資源を優先的に活用することが推奨されます。これらの課題を克服することで、木質バイオマスの利点を最大限に引き出すことが可能となります。

木質バイオマスは、環境保全、地域経済の強化、エネルギー供給の安定化、廃棄物の削減といったさまざまな利点を持っています。
その活用は、気候変動への対応や地域社会の発展を支える重要な要素となります。技術の進化や政策支援を通じて、木質バイオマスの潜在力をさらに引き出すことが、持続可能な未来を築くための鍵となるでしょう。

農業残渣バイオマス

農業残渣バイオマスとは、農業活動に伴って発生する稲わらや麦わら、とうもろこしの茎や葉、果樹の剪定枝、豆殻などの有機性廃棄物や未利用資源を指します。

これらの残渣は、従来廃棄物として処理されることが多く、焼却や埋め立てが一般的でした。しかし、近年では持続可能な社会の実現に向けて、再生可能エネルギーや資源として活用する取り組みが広がり、農業残渣バイオマスは注目を集めています。

このバイオマスの特徴は、地域特性や農業の種類に応じて発生する種類や量が大きく異なる点にあります。例えば、稲作が盛んな地域では稲わらが主要なバイオマスとして供給され、果樹栽培が中心の地域では剪定枝が大量に発生します。

この多様性により、農業残渣バイオマスの利活用には地域ごとの資源特性を十分に考慮する必要があります。
具体的な活用方法としては、バイオエタノールやバイオガスなどのエネルギー源の生成、堆肥化による土壌改良材への転用、バイオ炭やバイオプラスチック、さらには建材や繊維製品への利用が挙げられます。
これらの技術的応用により、農業残渣は化石燃料への依存を減らすだけでなく、持続可能な社会の資源循環を促進します。

農業残渣バイオマスの活用は、環境負荷を低減する効果が期待されています。焼却処理を減らすことで、大気汚染物質や温室効果ガスの排出を抑えるだけでなく、埋め立て地の容量削減にも貢献します。

また、農村地域では新たな収益源として注目されており、地域経済の活性化や雇用創出にもつながる可能性があります。
特に、農村部でのエネルギー自給率の向上や、農業副産物の価値向上といった効果が見込まれる点は大きなメリットです。

一方で、課題もあります。まず、農業残渣は散在しているため、効率的な収集・輸送システムの構築が不可欠です。特に、大規模なエネルギー利用や加工には安定的な供給が求められるため、季節的な供給量の変動に対応するための保管技術や設備が必要です。

残渣の種類によっては、特定の加工技術や設備投資が求められるため、コスト面での課題も生じます。さらに、農村部での技術導入には教育や専門知識の普及も重要な要素となります。

総じて、農業残渣バイオマスは、地域特性を生かしつつ、環境負荷を低減し、資源の循環利用を推進する重要な資源といえます。
持続可能な利用を実現するには、政策的な支援や技術革新が必要不可欠です。例えば、補助金制度や技術導入の支援、地域主体のビジネスモデルの構築が効果的です。

また、地域ごとの実情に合わせた柔軟なアプローチを取ることで、資源の無駄を最小限に抑え、農業残渣バイオマスの可能性を最大限に引き出すことが可能です。
このような取り組みは、地球規模の環境問題に対する具体的な解決策の一つとして、今後ますます重要性を増していくでしょう。

▼出典:バイオマスの活用をめぐる状況

アルガルバイオマス

アルガルバイオマスとは、藻類を利用したバイオマス資源のことで、持続可能なエネルギーや素材の供給源として注目されています。

藻類には単細胞の微細藻類から多細胞の大型海藻まで多種多様な種類があり、淡水や海水環境で生育します。
この藻類を培養し、その生成物を活用する技術が近年急速に発展しており、特に環境問題やエネルギー問題の解決手段として期待されています。

アルガルバイオマスの大きな利点の一つは、農地を必要としない点です。藻類は水中で生育するため、耕作地や農業用地との競合がありません。
この特性により、食糧生産とエネルギー生産の間で土地資源を争うことなく、持続可能なバイオマス資源の供給が可能になります。

さらに、藻類は海水や廃水を利用して培養できるため、貴重な淡水資源を節約することができ、乾燥地域や海岸沿いの地域でも生産が可能です。
藻類の生育速度は非常に速く、わずか数日で大量のバイオマスを生成できるため、高い生産性が期待されます。

また、藻類は光合成を通じて二酸化炭素を吸収する能力が高く、温室効果ガス削減にも寄与します。
このため、発電所や工場から排出されるCO2を藻類培養に活用し、カーボンニュートラルの実現を目指すプロジェクトも進行中です。

▼参考:ブルーカーボンとは?| 種類、取り組み、課題を一挙解説

具体的な活用例として、藻類から抽出される油脂を用いたバイオ燃料の製造が挙げられます。バイオディーゼルやバイオジェット燃料の原料として利用されるほか、藻類にはタンパク質や多糖類も含まれており、食品、飼料、化粧品、医薬品など幅広い分野での応用が期待されています。
さらに、藻類を発酵させてバイオガスを生成する技術や、藻類由来のバイオプラスチックや特殊化学品の製造も進められています。

しかし、アルガルバイオマスの実用化にはいくつかの課題があります。
まず、大規模培養におけるコストとエネルギー消費の高さが大きなハードルです。藻類の培養には、適切な光、温度、栄養素のバランスが求められ、それらを安定的に供給するシステムの構築が必要です。

また、収穫や加工のプロセスも効率的であることが求められ、技術革新が鍵となります。さらに、藻類の種類や利用目的に応じた最適な品種の選定と、その品種に合わせた培養技術の開発も課題です。

それでも、アルガルバイオマスの可能性は非常に大きいといえます。エネルギー資源としての利用だけでなく、化石資源の代替としての役割を果たすことができるため、脱炭素社会の実現に向けた重要な技術とされています。

また、藻類の培養には廃水や塩水を活用できるため、水質改善や環境修復の一環としての役割も期待されています。さらに、地域ごとの特性に応じた藻類利用モデルを構築することで、地域経済の活性化や新たな産業の創出にもつながります。

アルガルバイオマスは、温室効果ガス削減、エネルギー自給率の向上、廃水の有効活用など、多方面での利点を備えた未来志向の資源です。
技術革新や政策的支援が進むことで、環境問題の解決に貢献する実用的な資源となる可能性があります。その発展は、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

食品廃棄物バイオマス

食品廃棄物バイオマスとは、食品の生産、流通、消費過程で生じる廃棄物を有効活用し、エネルギーや資材を生み出す取り組みのことを指します。
食品製造過程で出る野菜の皮や果物の芯、売れ残った商品、調理中に出るくず、さらには消費されなかった食べ残しや期限切れの食品が対象となります。

これらの廃棄物は従来、焼却や埋め立てといった処理方法に依存してきましたが、それによる環境負荷の増加が問題視される中、持続可能な資源循環の一環として再利用が進められています。

▼参考:企業に求められる資源循環とは? 廃棄物削減と温室効果ガス排出量抑制への道のり 

食品廃棄物バイオマスの最大の利点は、廃棄物をエネルギー源や資材として転換することで、環境負荷を大幅に軽減できる点です。廃棄物がそのまま埋め立てられた場合、分解時にメタンガスが発生しますが、このガスは二酸化炭素よりも地球温暖化への影響が大きいとされています。

また、焼却による処理では多量の二酸化炭素が放出されるため、いずれも気候変動を加速させる要因となります。食品廃棄物を再利用することで、こうした問題を解消しつつ、エネルギー生産や資材の供給に貢献する仕組みが構築されます。

▼参考:メタン | 温室効果ガスとしての特性と削減策を解説

具体的な利用方法としては、まずバイオガスの生成があります。食品廃棄物を嫌気性発酵という微生物を活用したプロセスで分解すると、メタンを主成分とするバイオガスが生成されます。

このガスは、発電や熱供給のエネルギー源として使用できるだけでなく、都市ガスネットワークに供給することも可能です。発酵の過程で残る消化液は、有機肥料として農業に利用され、持続可能な資源循環をさらに後押しします。

もう一つの重要な活用法は、バイオ燃料の製造です。使用済みの食用油や食品製造時に生じる油脂分をバイオディーゼルに加工し、輸送用燃料として活用する技術が広がっています。また、食品廃棄物を糖化し、発酵プロセスを通じてバイオエタノールを生成する技術も実用化されています。これにより、化石燃料の使用削減とエネルギー自給率の向上が期待されています。

さらに、食品廃棄物は飼料や肥料としても価値を持っています。パンの耳や野菜のくずは栄養価が高く、家畜用飼料として再利用されることがあります。
一方、堆肥化の技術を用いることで、食品廃棄物を土壌改良材として利用する動きも活発です。この堆肥化プロセスにより、農地の生産性向上と廃棄物処理コストの削減が実現します。

ただし、食品廃棄物バイオマスの利用には克服すべき課題もあります。第一に、廃棄物の収集や分別が複雑であり、コストがかかる点が挙げられます。食品廃棄物には異物や汚染物質が含まれることが多く、処理前に適切な分別が求められます。

また、食品廃棄物は腐敗しやすく、保管や輸送においても特別な配慮が必要です。さらに、収集された廃棄物を効率的に再利用するには、先進的な処理技術の導入やインフラ整備が欠かせません。

食品廃棄物バイオマスは、廃棄物問題とエネルギー問題の両方に対する解決策として非常に有望です。環境負荷を減らしつつ、持続可能なエネルギーや資材を供給するという多面的な利点を持つこの取り組みは、政策的な支援と技術革新が進むことでさらに発展が期待されます。

加えて、消費者の意識向上や企業の主体的な取り組みも重要な要素となります。このように、食品廃棄物バイオマスは持続可能な社会の構築に不可欠な一端を担う資源として、今後ますますその価値が高まることでしょう。

▼出典:環境省食品廃棄物から再生可能エネルギーを創出!地域循環型社会を目指すバイオフードリサイクルの取組み。

エネルギー作物バイオマス

エネルギー作物バイオマスとは、主にエネルギー生産を目的として栽培される植物を原料とするバイオマス資源のことを指します。
これらの作物は、再生可能エネルギー源としての可能性を秘めており、化石燃料に代わる重要な資源として注目されています。
その利用範囲は、バイオ燃料、バイオガス、バイオマス発電など多岐にわたり、温室効果ガス削減やエネルギー自給率向上に貢献するものです。

エネルギー作物には、食用作物と非食用作物の両方が含まれます。
代表的な例として、トウモロコシ、サトウキビ、大豆などの穀物系作物があります。これらは主にバイオエタノールやバイオディーゼルの生産に利用されています。

▼参考:バイオエタノールとは?メリット・デメリットと環境への影響を徹底解説

たとえば、トウモロコシは糖化され、発酵によってエタノールを生成するプロセスで活用されます。
一方、サトウキビはその糖分を直接発酵させることで効率的にエタノールを生産します。また、大豆や菜種のような油脂を含む作物は、バイオディーゼルの原料として加工され、輸送用燃料として使用されています。

一方で、非食用エネルギー作物の重要性が近年増しています。スイッチグラスやミスカンサス(ススキの一種)などの多年生草本作物は、痩せた土地や塩害地でも栽培が可能で、化学肥料や農薬の使用量を抑えられるため、環境負荷が低いとされています。
これらは主にバイオマス発電用の燃料やバイオガスの原料として利用されます。さらに、ポプラやユーカリなどの早生樹(短期間で成長する木)は、木質ペレットやチップとして加工され、発電所や工場で燃料として使用されています。

エネルギー作物の大きな利点は、再生可能である点にあります。植物が成長する過程で光合成を行い、二酸化炭素を吸収するため、利用時に排出されるCO2を相殺し、カーボンニュートラルを実現できる可能性があります。

また、農地として利用されていない未利用地でも栽培できる作物が多いため、土地資源を効率的に活用できる点も特筆すべき利点です。さらに、エネルギー作物の生産は、地域経済の活性化や農村部の雇用創出にもつながります。

しかし、エネルギー作物バイオマスの実用化には、いくつかの課題があります。
第一に、食用作物がエネルギー作物として使用される場合、食料供給と競合するリスクがあります。特に、トウモロコシやサトウキビのエタノール生産への転用は、食料価格の上昇や供給不足を引き起こす可能性があり、持続可能性を考慮した政策が求められます。

第二に、作物の栽培には多量の水、肥料、農薬が必要になることがあり、これが過剰使用されると土壌劣化や水質汚染を引き起こす恐れがあります。
さらに、収穫後の輸送や加工にかかるエネルギーコストを考慮すると、エネルギーバランスがプラスになるような効率的なシステムの構築が欠かせません。

これらの課題を解決するには、技術革新と政策的支援が必要です。たとえば、非食用作物や未利用地の活用を促進することで、食料生産への影響を最小限に抑えることができます。
また、エネルギー作物の育種技術や加工技術の向上により、生産効率を高め、環境負荷をさらに軽減することが可能です。さらに、地域特性に応じたエネルギー作物の導入を進めることで、地域ごとに最適なエネルギー供給モデルを構築することができます。

▼出典:バイオマスの活用をめぐる状況

バイオマス発電


バイオマス発電は、植物や動物由来の有機物(バイオマス)を利用して電力を生産する再生可能エネルギー技術です。この発電方式の特徴は、再生可能資源を用いることで環境への負荷を軽減し、廃棄物を資源として活用できる点にあります。

バイオマスの原料には、上記で解説している、木材や農業残渣、食品廃棄物、家畜排せつ物、さらにはエネルギー作物などが含まれ、それぞれの地域で発生する資源に応じた活用が可能です。

この発電の仕組みは主に二つに分けられます。一つ目は、木材ペレットやチップなどをボイラーで燃焼し、発生する熱で水を蒸気に変え、その蒸気でタービンを回して発電する燃焼型バイオマス発電です。この方法は、森林資源が豊富な地域で間伐材や端材を利用する場合に適しています。

二つ目は、食品廃棄物や家畜排せつ物を微生物の力で分解し、メタンを主成分とするバイオガスを生成する方法です。
このバイオガスは、ガスタービンや内燃機関を駆動する燃料として使われ、電力が生み出されます。嫌気性消化によるこの手法は、廃棄物処理とエネルギー生産を同時に行えるため、循環型社会の構築に特に有用です。

バイオマス発電の大きな魅力は、カーボンニュートラルとみなされる点です。植物は成長過程で光合成により二酸化炭素を吸収するため、その植物を燃焼して排出される二酸化炭素と相殺することができます。この仕組みにより、全体として温室効果ガスの排出を抑えられる可能性があります。

また、廃棄物をエネルギーに変換することで廃棄物処理費用を削減し、廃棄物がもたらす環境への負担を軽減できます。
例えば、農業残渣を燃料として利用すれば、廃棄物を焼却する代わりに有効活用でき、森林間伐材の利用は森林管理の効率化にもつながります。

一方で、バイオマス発電には課題も存在します。まず、バイオマス燃料の安定供給が必要ですが、これには収集や輸送の効率化が欠かせません。
例えば、広い範囲から燃料を集める場合、輸送コストが高くなるとともに、輸送そのものがエネルギー効率を損ねるリスクがあります。

また、燃焼型バイオマス発電では、大気汚染物質(微粒子や硫黄酸化物)が発生する可能性があり、これを防ぐためには高度な排ガス処理設備が必要です。
さらに、燃料となるバイオマスの乾燥や加工にエネルギーを要する場合、全体のエネルギーバランスを慎重に評価する必要があります。

政策的には、固定価格買取制度(FIT)や補助金による支援がバイオマス発電の普及を後押ししています。
これにより、多くの事業者が発電プロジェクトを立ち上げる環境が整備されました。しかし、こうした政策への過度な依存は、長期的な持続可能性を損ねる可能性もあるため、地域や事業者の自立的な運営が求められます。

また、地域密着型の「地産地消」モデルも注目されています。地域で発生した廃棄物を燃料とし、発電した電力をその地域で消費する仕組みは、輸送コストを削減し、地域経済の活性化にも寄与します。

将来的には、技術革新による燃料収集・加工の効率化や排ガス処理技術の向上が課題解決の鍵となります。
また、非食用作物や未利用地でのエネルギー作物栽培を推進することで、食料生産と競合しないバイオマス発電モデルを構築することが重要です。
さらに、地域特性に合わせたバイオマス利用戦略を策定し、持続可能性を重視した発電インフラを整備することが求められます。

バイオマス発電は、気候変動の緩和、廃棄物管理、地域経済の振興といった多方面で社会に貢献するポテンシャルを持っています。
これを最大限に活用することで、持続可能なエネルギー供給と環境保護を実現し、循環型社会への移行を促進する重要な柱となるでしょう。

▼出典:バイオマスの活用をめぐる状況

バイオマス燃料


バイオマス燃料は、植物や動物由来の有機物を原料とした燃料で、再生可能エネルギーの中でも重要な位置を占める資源です。従来の化石燃料とは異なり、自然のサイクル内で再生可能であるため、持続可能なエネルギー供給を実現する可能性を秘めています。

その形態は固体、液体、気体に分かれ、それぞれが異なる用途と特性を持ちながら、発電、熱供給、輸送燃料などさまざまな分野で活用されています。

固体バイオマス燃料の代表例には、木材ペレットや木質チップ、薪などがあります。これらは主に燃焼によって熱エネルギーを供給したり、発電の燃料として利用されます。

たとえば、木材ペレットは、森林管理で発生する間伐材や製材過程で生じる端材を圧縮して作られます。この圧縮によりエネルギー密度が高まるため、燃焼効率が向上します。
また、農業廃棄物から作られる固体燃料も増えており、地域の農業残渣を活用してエネルギーを生み出す取り組みは、廃棄物管理の課題解決にもつながっています。

液体バイオマス燃料にはバイオエタノールやバイオディーゼルが含まれます。バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビなど糖質やデンプン質を含む作物を発酵させて作られ、主にガソリンとの混合燃料として自動車用に使われます。

一方、バイオディーゼルは、大豆油や菜種油、使用済み食用油などの油脂を化学処理して製造されます。ディーゼルエンジンでの使用が可能なこの燃料は、輸送分野での化石燃料代替として注目されています。
液体燃料はエネルギー密度が高く、既存の供給インフラや機械での利用が可能であるため、普及のしやすさが特徴ですが、原料の生産に伴う環境負荷や食料との競合が課題となります。

気体バイオマス燃料としては、バイオガスや合成天然ガス(SNG)が挙げられます。バイオガスは、食品廃棄物や家畜排せつ物、農業残渣を微生物が分解することで生成されます。
このプロセスは嫌気性消化と呼ばれ、生成されたガスはメタンを主成分としています。バイオガスは発電や熱供給の燃料として利用されるほか、都市ガスの代替としても活用されます。

一方、合成天然ガスは、バイオマスを高温でガス化し、精製することで作られます。
これらの気体燃料は、クリーンで効率的な燃焼が可能であり、既存のガス供給インフラを活用できる点が大きな利点です。

▼出典:環境省 廃棄物・リサイクル対策

バイオマス燃料の環境的意義は、カーボンニュートラルである点にあります。燃料の燃焼時に排出される二酸化炭素は、植物が成長過程で吸収した二酸化炭素と相殺されるため、全体としての炭素収支がゼロに近いと考えられます。

この特性により、化石燃料の使用に伴う温室効果ガスの排出削減に大きく貢献します。
ただし、燃料の製造や輸送、加工の過程でもエネルギー消費や二酸化炭素排出が発生するため、これらを含めたライフサイクル全体での環境影響評価が不可欠です。

技術革新により、バイオマス燃料の生産効率が向上し、原料の多様化が進めば、化石燃料に代わる主要エネルギー源としての地位を確立する可能性があります。
藻類を活用したバイオ燃料の研究や、未利用地でのエネルギー作物栽培、地域特性に応じた最適な利用モデルの構築がその鍵となるでしょう。

バイオマス燃料は、気候変動の緩和、エネルギー安全保障、廃棄物管理といった地球規模の課題解決に寄与する可能性を持つ資源です。
その普及には政策的支援や社会の意識向上が欠かせませんが、これらが整えば、持続可能な社会を実現するための重要な柱として、さらなる発展が期待されます。

▼参考:SAF(持続可能な航空燃料)とは?その重要性と導入の現状、未来の可能性を解説

バイオマスマテリアル産業について

他にもバイオマスの活用を進めているバイオマスマテリアル産業は、植物や動物由来の有機物(バイオマス)を原料として、さまざまな製品や材料を製造する産業分野であり、持続可能な社会の実現に向けた重要な柱です。

この産業は、化石資源から再生可能資源への移行を進め、環境負荷を低減し、資源の循環利用を促進することを目的としています。
特に、気候変動への対策や廃棄物の有効活用、地域経済の活性化といった多岐にわたる課題に対応する役割を果たしています。

この産業の中核となるバイオマスプラスチックは、トウモロコシやサトウキビなどから得られる糖類やデンプンを主成分として製造されます。バイオプラスチックには、生分解性プラスチックと非生分解性プラスチックの二種類があります。

生分解性プラスチックは、使用後に微生物の働きによって分解され、食品包装材や農業用フィルムなど、廃棄後の環境負荷を軽減する用途で広く活用されています。

一方、非生分解性のバイオプラスチックは、石油由来プラスチックに代わる素材として、自動車部品や家電製品の構成部材などで使用されています。
このタイプは、製造時の化石燃料使用を大幅に削減し、温室効果ガス排出の抑制に寄与しています。

繊維産業においても、バイオマスマテリアルは革新をもたらしています。セルロースを原料とする再生繊維(レーヨンやテンセルなど)は、従来の石油由来の化学繊維と比べて環境負荷が低いことから、持続可能なファッションの潮流を支えています。

製造過程での水消費量や化学物質の排出が削減されるため、より環境に優しい選択肢として注目されています。
また、農業廃棄物や食品廃棄物を原料に繊維を作る技術も進化しており、これにより廃棄物の新たな利用価値が生み出されています。

化学品分野では、バイオマス由来のポリ乳酸(PLA)やバイオポリオールが注目されています。ポリ乳酸は、食品容器や医療用材料として使用され、廃棄後の分解性や生産時の低炭素特性が評価されています。

一方、バイオポリオールは、ウレタンフォームや接着剤の原料となり、石油化学製品の代替品として広がりを見せています。
これらのバイオマス由来化学品は、製品の環境負荷を軽減しつつ、高い性能を維持することが可能であり、さまざまな産業分野での応用が進んでいます。

建築分野でも、バイオマスマテリアルの利用が進んでいます。木材を用いたCLT(直交集成板)やバイオコンクリートは、建築物の炭素固定効果を高め、建設分野の脱炭素化を推進する素材として注目されています。

また、地域の特性を生かした稲わらや竹を原料とする建材も、地元の資源を活用しながら廃棄物を減らす取り組みとして期待されています。
これらの建材は、環境負荷を低減しつつ、耐久性や性能を維持できる点が大きな利点です。

バイオマスマテリアル産業の特筆すべき点は、再生可能資源を利用することで、資源の枯渇リスクを低減しながら、循環型経済を促進できる点にあります。

さらに、従来は廃棄物とされていた食品残渣や農業副産物を活用することで、廃棄物管理のコスト削減と付加価値の創出が可能となります。このような取り組みは、持続可能性と経済性を両立させる手段として大きな可能性を秘めています。

一方で、バイオマスマテリアル産業にはいくつかの課題もあります。
まず、原料供給の安定性が重要です。バイオマス資源の収集、加工、流通には効率的なインフラが必要であり、特に輸送コストが製品価格に与える影響が大きいため、地域での生産と消費を基本としたモデルが求められます。

また、バイオマス由来製品の性能や耐久性の向上も課題であり、これを解決するためには技術開発への投資が不可欠です。
さらに、消費者の認知度を高めるための啓発活動も重要です。
環境価値を伝えることで、製品の選択において環境配慮が重視されるようになることが求められます。

未来に向けて、バイオマスマテリアル産業はさらなる発展が期待されています。
藻類や微生物を活用した新たなバイオマス素材の開発や、製造プロセスの効率化、さらには地域資源を最大限に活用した地産地消型の生産モデルの導入は、この産業が抱える課題を解決し、持続可能な社会を実現する大きな力となるでしょう。

この産業は、環境問題の解決と経済的価値の創出を両立するポテンシャルを持ち、グローバルな視点での課題解決に貢献する存在として、その重要性をさらに高めていくことが期待されます。

▼出典:バイオマスの活用をめぐる状況

まとめ


バイオマスは、植物や動物由来の有機物を活用した再生可能資源であり、エネルギー供給や材料生産を通じて持続可能な社会の実現に大きく貢献します。

この資源を活用したバイオプラスチックやポリ乳酸、木材由来の建材などは、化石資源の代替として脱炭素化を推進し、環境負荷を軽減する製品として注目されています。

また、廃棄物や農業残渣を原料とする技術は、廃棄物管理の課題を解決しながら循環型経済の基盤を支えます。
しかし、原料供給の安定化や製品性能の向上、製造コストの削減が課題として残っており、これを克服するためには技術革新や政策的支援が不可欠です。

未来に向けて、未利用資源の活用や地域特性を生かした生産モデルの発展により、環境保全と経済成長を両立する新たな社会モデルが期待されています。

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