IoTの力で新たな可能性を│建物の快適性と省エネを両立させる次世代サービスの誕生

cynaps株式会社
代表取締役 岩屋 雄介 

近年、建物の空調管理は急速に進化を遂げています。これまではエアコン管理が主流でしたが、新たな発展が今、業界に革命をもたらしています。それがcynaps株式会社が提供する「換気の自動制御」。コロナ禍での感染対策をヒントに事業開発を始めたこの会社は、今ではオフィスや商業施設、医療機関など、あらゆる建物で感染予防はもちろん、電気代削減に貢献しています。今日はcynaps株式会社 代表取締役の岩屋雄介様に、創業の背景やサービスへの想いをお伺いしました。

目次

大手企業で挑む新規事業の理想と現実

ーこれまでのご経歴と創業の背景について教えてください

高専(電子工学科)の4年が終わったタイミングで工学院大学(電気電子情報工学科)へ編入しています。高専のときから起業したいと思っていたので、卒業後、新卒では営業経験を積むために商社(旧昭和電線)へ入社しました。ここで9年ほど、スーパーゼネコンから電気サブコン、設備サブコンなど建設業界のお客様へ、電線や防振架台、免震アイソレータ等を提案していました。その後、事業の立ち上げを経験するためにベンチャー企業へ転職。そこでIoTの新規事業に4年以上携わりました。

より大きな資本やリソースがあればもっと面白いものが作れると思い、上場しているアプリ開発の会社へ転職。そこでもIoTの新規事業をやりました。事業計画書を作り経営陣へプレゼンしたところすぐに承認をいただき、社内で初めての新規事業担当へ就任、そこで事業責任者も務めました。その時に開発したのがAlexaのスキル開発運用クラウド「NOID(ノイド)」というサービスです。
しかし、事業化してからは困難の連続でした。

・限られた予算
・新規事業の生命線でもあるスピードが出せない(意思決定に時間がかかる、経理や法務・業務部門との調整が多い、稟議に時間がかかる等)
・組織全体でのシナジーが出せない(新規事業の製品を売るインセンティブがないので営業が既存顧客に提案してくれない等)

こういった経験から大手企業で新規事業を立ち上げることは難しいと判断し、自分でやろうと起業しました。このときはまだ詳細な事業アイデアはなく、得意なIoT領域でサービスを作るということだけ考えていました。

感染対策でヒントを得たサービスで新しい風を起こす

ー10名以下のベンチャーでも、上場している大手企業でも新規事業をされているのは、そこにどんな想いがあるからですか?

世の中の課題にテクノロジーという解決策をどう紐付けられるか、それを考えるのが凄く好きなんですよね。頭の中をテキストに落とし込んで整理することで、アイディアもたくさん出てきます。戦略には成果を何倍にもするポテンシャルがあると思っていて、私が新規事業に興味があるのは、この思考がベースにあることが理由の1つだと思います。

創業した2020年3月はコロナ渦で、メディアではマスクやアルコール消毒など感染対策が話題になっていました。何気なく換気についてのニュースを聞いていたときに、ふと「換気ってきちんと制御されているのかな?」という疑問が出てきました。

換気設備について調べてみると、一応建築基準法やビルの安全衛生管理法に沿って導入されているようでした。でもやっぱり、換気が基準値に合わせて制御されているという話は聞いたことがないし、従来の技術ではお金もかなり掛かるので、おそらく一部の施設を除いてまだ誰もやっていないだろうと疑問はなくなりませんでした。

そのあとさらに調べてみると、やはり建物の多くはエアコンの温度管理ばかりで、換気の管理を中心としているサービスや会社はほとんどありませんでした。もっと言うと、ほとんどの建物は「換気が過剰」に行われていました。空調で冷やした空気を入れても、換気ですぐに外へ出してしまっているというケースですね。換気効率アップは省エネにつながるというのはこれまでの経験から分かっていたので、換気をテーマにサービスを開発することにしました。

起業後も前職の引き継ぎがあり、本格的に事業を開始したのが2020年6 月。そこから7月にはCO2モニタリングシステム「hazaview(ハザビュー)」を完成させ、8月には販売を開始、展示会などへも出展していきました。この圧倒的なスピード感には、これまでの経験が凝縮されていましたね。ハザビューは換気のタイミングになるとアラートを出すというシンプルなものでしたが、立ち上げから2年間で延べ100社、1,000台以上の出荷実績を獲得できました。その技術を応用して2022年4月に提供開始したのが「BA CLOUD」です。

換気扇に焦点を当てた省エネ対策

ー「BA CLOUD」はどんなサービスですか?

企業の利益を増やす、経費を削減するサービスとして、特に経営層の方に興味を持っていただいています。事業部の方は売上アップを狙う傾向にありますが、経営者はコントロールが難しい売上アップよりも、確実に利益を増やすコスト削減のほうが興味・関心が高いのです。

BA CLOUDは、換気状態を監視して自動制御することで、エアコンの電力使用量と電気代を最大50%削減します。CO2濃度・温度・湿度の複合センサーにより室内の人の減少や不在を検知し、人がいない時の無駄な換気をカットしています。足元で大きな社会課題となっている電力需給逼迫や電気代高騰の対策はもちろん、脱炭素・カーボンニュートラルにも貢献するIoTソリューションです。

競合だと有線タイプがありますが、設置条件が難しくコストも高いです。あとは似ているものだと内容は異なりますがEMS(Energy Management System)やデマンド管理システムくらいですね。

ー脱炭素についてはどうお考えですか?

企業が提供している脱炭素サービスはまだまだコスト負担が大きいという印象です。日本は国からのインセンティブやペナルティもないため、企業も脱炭素に取り組む理由が少ないですから。企業のスピードに国や世間が追いついてほしいなと思っています。

ー今後の展望について教えてください

BA CLOUDのBAは「Building Automation」の略です。換気制御から空調制御へ、そしてビル全体を管理するシステムを目指します。ビルの管理システムとなると競合も増えるため、シェア拡大の難易度も高くなりますが、自分たちのIoT技術がどこまで通用するか挑戦したいです。今は既存の建物へ導入していますが、将来的には新築の設計段階で導入されるのを目標にしています。

【岩屋様のご経歴】
1982年生まれの東京都出身。大学卒業後、工事業界に9年従事し業界構造や慣習に精通する。ベンチャー企業にてIoTの新規事業を立ち上げ、その後、国内初のAlexaスキル開発運用クラウド・NOID(ノイド)を開発し、プロジェクト化。Amazon・LINEとの共催イベント実現などを経験。2020年3月、敷居の高いIoT技術を誰もが簡単に利用できる世界を目指し独立。cynaps株式会社を設立し、CEOを務める。

【岩屋様の脱炭素ルーティン】
やはり空調については特に意識していますね。エアコンの設定温度から始まり、除湿と冷房の使い分け。空気の循環が良くなるような部屋のレイアウト変更等、身近なところから始めています。

▼お問い合わせはこちら
cynaps株式会社ホームページ:https://www.cynaps.jp/ba-cloud/
お問い合わせ:https://www.cynaps.jp/ba-cloud/#contact

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