パーパス経営とサステナビリティ経営

パーパス経営とは、企業が単に利益を追求するだけでなく、社会的な目的や意義(パーパス)を持って運営されることを指します。このアプローチは、企業がその存在理由として利益追求を超えた価値を提供しようとするものです。

資産運用会社のブラックロックのラリー・フィンクCEOが2018年に投資先企業への書簡で提起したことにより広く伝わったと言われています。

サステナビリティ経営(持続可能性経営)は、企業が環境的、社会的、経済的な持続可能性を重視して行う経営のアプローチです。この概念は、企業が単に短期的な利益を追求するのではなく、長期的な視点で環境や社会に対して責任を持ち、持続可能な発展を目指すことを意味します。

パーパス経営とサステナビリティの関係は密接で、パーパス経営を行う企業は単に経済的な利益を追求するだけでなく、社会や環境に対しても責任を持つことを重視しますが、これはサステナビリティの要素を多分に含んでいます。

本記事では、パーパス経営とサステナビリティ経営ついて詳しく解説していきます。

目次

パーパス経営とサステナビリティ経営の特徴

パーパス経営とサステナビリティ経営は、現代の企業経営において密接に関連しながらも、それぞれ異なる特徴を持つアプローチです。それぞれの本質と特徴について、体系的に説明していきましょう。

パーパス経営は、組織の存在意義(パーパス)を中心に据えた経営手法です。単なる利益追求や事業の継続を超えて、社会における組織の意味や価値を明確にし、それを経営の根幹に位置づけます。
このアプローチの特徴は、組織の活動すべてがパーパスという一貫した軸に基づいて展開される点にあります。従業員の行動指針となり、意思決定の基準となり、さらには企業文化の形成にも大きな影響を与えます。

パーパス経営のもう一つの重要な特徴は、社会的価値と経済的価値の統合を目指す点です。組織の存在意義は必然的に社会への貢献を含むため、事業活動を通じて社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現することを志向します。これにより、持続的な成長と社会的責任の遂行を両立させることが可能となります。

一方、サステナビリティ経営は、環境・社会・経済の三側面における持続可能性を追求する経営アプローチです。特に、地球環境の保全、社会の持続的発展、そして企業としての経済的持続可能性のバランスを取りながら、長期的な価値創造を目指します。

サステナビリティ経営の特徴的な要素は、その包括性にあります。環境負荷の低減、人権の尊重、多様性の推進、ガバナンスの強化など、幅広い領域での取り組みが求められます。また、これらの取り組みは個別に行われるのではなく、統合的なアプローチとして展開される必要があります。

両者の関係性を見ると、パーパス経営はサステナビリティ経営の基盤となり得ます。組織のパーパスが明確であることで、サステナビリティへの取り組みがより戦略的かつ一貫したものとなります。また、パーパスを通じて従業員のサステナビリティへの理解と共感を深めることで、より実効性の高い取り組みが可能となります。

具体的な実践においては、パーパス経営では、存在意義の明確化から始まり、それを組織全体に浸透させ、日々の業務や意思決定に反映させていく過程が重要となります。一方、サステナビリティ経営では、具体的な目標設定、実行計画の策定、進捗管理など、より実務的なアプローチが求められます。

しかし、両者に共通するのは、長期的な視点での価値創造を重視する点です。短期的な利益追求ではなく、持続的な成長と社会への貢献を両立させることを目指します。また、ステークホルダーとの対話や協働を重視し、社会との関係性の中で企業価値を創造していく姿勢も共通しています。

このように、パーパス経営とサステナビリティ経営は、それぞれの特徴を活かしながら、相互に補完し合う関係にあります。両者を効果的に組み合わせることで、より強固な経営基盤を構築し、持続的な価値創造を実現することが可能となります。今後の企業経営においては、これらのアプローチをいかに統合し、実践していくかが重要な課題となるでしょう。

▼出典:BYWILL 「パーパス浸透」を成功させるポイントは?~社員の「自発的な行動」を促すために~

▼参考:脱炭素経営を始めるにあたっての方針検討  

パーパス経営とサステナビリティ経営のそれぞれの利点


パーパス経営とサステナビリティ経営のそれぞれの利点について、それぞれの特性を踏まえながら詳しく説明していきましょう。

まず、パーパス経営の利点から見ていきます。パーパス経営の最も大きな利点は、組織全体に明確な方向性と一貫性をもたらす点です。
存在意義が明確になることで、経営判断から日常の業務まで、すべての活動が統一された軸に基づいて展開されます。これにより、組織としての一体感が醸成され、より効果的な事業運営が可能となります。

さらに、パーパス経営は従業員のモチベーション向上にも大きく貢献します。自分たちの仕事が社会にどのような価値をもたらすのかが明確になることで、仕事への意義や誇りを見出しやすくなります。
特に、若い世代を中心に広がる「社会的意義のある仕事」への希求に応えることができ、優秀な人材の獲得と定着にもつながります。

また、パーパス経営は新規事業開発やイノベーションの推進においても有効です。パーパスという明確な指針があることで、新たな事業機会の発見や、既存事業の革新的な展開が促進されます。
社会課題の解決と事業成長を結びつける視点が組織に根付くことで、より創造的な取り組みが可能となります。

一方、サステナビリティ経営の利点は、まず環境・社会リスクへの体系的な対応が可能となる点です。気候変動、資源枯渇、人権問題など、現代企業が直面する様々なリスクに対して、包括的な管理体制を構築することができます。これにより、事業の継続性と安定性が高まります。

サステナビリティ経営は、投資家との関係においても大きな利点をもたらします。ESG投資の拡大により、環境・社会・ガバナンスへの取り組みは、企業価値評価の重要な要素となっています。
体系的なサステナビリティへの取り組みは、投資家からの信頼獲得と、資金調達の円滑化につながります。

さらに、サステナビリティ経営は、製品・サービスの差別化や市場競争力の強化にも貢献します。環境配慮型製品の開発や、サステナブルな事業モデルの構築により、変化する消費者ニーズに応えることができます。また、規制対応の先取りにより、将来的な事業機会の創出も期待できます。

サステナビリティ経営はまた、コスト削減や経営効率の向上にも寄与します。省エネルギー、資源効率の向上、廃棄物削減など、環境負荷低減の取り組みは、同時にコスト削減効果ももたらします。長期的な視点での投資判断により、より効率的な事業運営が実現できます。

このように、両者はそれぞれ異なる観点から組織に価値をもたらします。パーパス経営は組織の方向性と求心力を高め、サステナビリティ経営は具体的なリスク管理と機会創出を可能にします。これらの利点を効果的に組み合わせることで、より強固な経営基盤を構築することができます。

▼参考:経済産業省 事務局説明資料

パーパス経営とサステナビリティ経営の違い


パーパス経営とサステナビリティ経営の違いについて、それぞれの本質的な特徴を踏まえながら詳しく説明していきましょう。

まず、両者の最も根本的な違いは、その出発点にあります。パーパス経営は組織の存在意義(Why)から始まり、そこから具体的な活動を導き出していきます。
一方、サステナビリティ経営は、環境・社会・経済の持続可能性という具体的な課題(What/How)から出発し、それらへの対応を体系化していきます。

次に、アプローチの方向性にも大きな違いがあります。パーパス経営は、組織の内側から外側に向かって展開されます。つまり、組織の存在意義を起点として、それを実現するための活動を外部に向けて展開していきます。
これに対し、サステナビリティ経営は、外部環境や社会的要請を起点として、それに応える形で組織内部の活動を構築していきます。

時間軸の捉え方も異なります。パーパス経営は、組織の永続的な存在意義を追求するため、より長期的で普遍的な視点を持ちます。
一方、サステナビリティ経営は、現在直面している、あるいは将来予測される具体的な課題に対応するため、より明確な時間軸と目標設定を必要とします。

組織への浸透方法も異なります。パーパス経営では、存在意義への共感と理解を通じて、自発的な行動変容を促すアプローチを取ります。
これに対し、サステナビリティ経営では、具体的な目標設定と実行計画に基づく、より構造化されたアプローチを採用します。

また、評価指標の性質も異なります。パーパス経営では、存在意義の実現度合いという、やや定性的な評価が中心となります。
一方、サステナビリティ経営では、CO2排出量や資源利用効率など、より定量的な指標による評価が重視されます。

意思決定プロセスにおいても違いが見られます。パーパス経営では、「この判断は組織の存在意義に合致しているか」という観点からの検討が重視されます。
サステナビリティ経営では、「この判断は持続可能性の観点から適切か」という、より具体的な基準に基づく検討が行われます。

ステークホルダーとの関係性の構築方法も異なります。パーパス経営では、組織の存在意義を共有し、それに基づく共創的な関係性を目指します。サステナビリティ経営では、具体的な課題に対する協働や、目標達成に向けたパートナーシップの構築が中心となります。

さらに、イノベーションへのアプローチも異なります。パーパス経営では、存在意義の実現に向けた創造的な解決策の探索が促されます。一方、サステナビリティ経営では、具体的な持続可能性の課題に対する技術的・制度的なソリューションの開発が重視されます。

まとめ


両者は独立しているものの、類似点があり多くの企業ではこれらが相互に補完し合っていることが多く、パーパース経営を採用する企業はしばしばサステナビリティの原則を組み込み、その社会的目的の達成に貢献します。

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