KES環境マネジメントシステムとは?取得のメリットと認証方法も解説 

環境意識の高まりとともに、企業に求められる環境マネジメントの重要性が増しています。
しかし、国際規格であるISO14001は取得のハードルが高く、中小企業にとって導入が難しいケースも少なくありません。

そこで、より手軽に環境経営を実践できる民間の環境マネジメントシステム「KES(Kyoto Environmental Management System)」が注目されています。

KESは、京都で生まれたNPO法人「KES環境機構」が策定した認証制度で、段階的に環境負荷の低減や省エネ対策に取り組める仕組みを提供します。
現在、日本国内で5,000社以上が登録しており、中小企業や地域コミュニティに適した柔軟な環境管理システムとして評価されています。

本記事では、KESの概要や4つの認証ステップ、導入プロセス、取得のメリットを詳しく解説します。
持続可能な経営を目指す企業にとって、KESがどのような役割を果たし、どのように活用できるのかを考える一助となれば幸いです。

目次

KESとは:基本情報

民間の環境マネジメントシステム

KESは、京都発の民間の環境マネジメントシステムです。
2007年に設立された特定非営利活動法人で4つの認証規格を用意していて、環境だけではなくCSR全体のものやエネルギー効率を高めるための規格などもあります。

取得には書類審査と実地審査に合格する必要があります。審査前の書類作成に必要な運営体制の構築などコンサルティング支援もしています。

登録件数

KESのWEBサイトに公開されている登録件数は、2024年5月末時点で5,363件となっています。4つの規格をステップという名称で表しているのですが、登録件数の内訳としては下記のようになっています。

ステップ1    1,977件
ステップ2   3,097件

また、業種別でのデータが出ていますが製造業が多く63%占めていました。

▼出典:特定非営利活動法人 KES環境機構 登録件数データ

環境マネジメントシステムとは

改めて確認をしておくと、環境マネジメントシステムとは、「事業運営を行う中で自主的に環境保全に関する取り組みを進めるために、環境方針や目標を自ら設定し、それを達成するために取り組む体制や仕組み」のことです。

自主的な取り組みを客観的にチェックを行う場合は、「環境監査」といいます。
ISOは国際規格、KESは民間の環境マネジメント、その他にも環境省が策定したエコアクション21や一般社団法人が策定したエコステージなどがあります。

▼出典:環境省「環境マネジメントシステム」

KESの背景と目的

ISO14001などの国際規格はやはり難易度が高いものとなっており、取り組みにも費用や人的コストがかかる取り組みとなっています。

そのため中小企業などの事業者が取り組むにもハードルがありました。
そこであらゆる事業者を対象に環境改善活動に参画できるようにすることを目的に策定されました。

KESの特徴

KES環境マネジメントシステムは、中小企業や地域コミュニティに適した環境マネジメントシステムとして設計されています。
特に、ISO14001のような標準規格に比べて導入や運用が容易で、コスト面でも負担を抑えられる点が大きな特徴です。

KESは、初級から上級まで段階的に環境目標を設定できる仕組みを持ち、企業は自社の状況に応じて無理なく環境パフォーマンスを向上させることが可能です。
こうした段階的なアプローチにより、企業が目標を段階的に達成し、着実な環境改善を進める道筋が提供されます。

さらに、KESは地域密着型のシステムであり、地方自治体や商工会議所といった地域の関係機関との連携が進めやすく、企業が地域社会と一体となって環境保護に貢献できる仕組みが整っています。

これにより、組織は単なる内部改善だけでなく、地域社会への貢献や信頼関係の構築といった効果も期待できる点で、KESはより幅広い社会的意義を持っています。
具体的なメリットとしては、エネルギー使用の効率化や廃棄物削減、法令の遵守に加え、従業員の環境意識の向上が挙げられます。

KESを通じてこれらの対策を効果的に進めることで、持続可能な事業運営の基盤を確立できます。

また、KESの柔軟な認証プロセスは、企業がISO14001への移行を視野に入れてステップアップする道筋も提供します。
中小企業が環境への取り組みを実践的かつ持続的に進めるための第一歩として、KESは極めて実用性の高いシステムです。

環境負荷の低減と地域社会への貢献を同時に実現できるKESは、現実的かつ効果的な環境マネジメント手法として、多くの企業から支持されています。

KESの4つの規格

・ステップ1
基本的な環境への取り組みの仕組みを作り、社内の環境意識醸成をしていきます。
 ー自社の活動が環境にどの程度影響を与えているかの実態を把握
 ー法規制等の対応が必要あるかを確認
 ー優先的に対応すべき環境における重点項目を特定
 ー環境の基本的な方針や目標・計画の作成
 ー環境マネジメントマニュアルの作成

・ステップ2
将来「ISO14001」の認証取得に必要な取り組みを追加で行います。
 ー自社内での環境評価が行える人員の養成
 ー法規制の遵守、改善活動の進捗などを自社で評価・報告

・ステップ2SR
ステップ2にISO26000(社会的責任に関する手引き)の要素を取り組みに追加して、環境以外も含めた持続可能な発展を目的としています。

・ステップ2En
ステップ2にISO50001(エネルギーマネジメントシステム)の要素を追加して、省エネを実践的に行います。コスト削減の効果も期待できます。

KES認証取得の流れと費用

KES認証取得の流れ(ステップ1・ステップ2)

KES認証は、環境マネジメントを段階的に進める仕組みです。ここでは、認証取得までの標準的な流れを8か月間のスケジュールに沿って説明します。

1か月目:準備と体制づくり

最初に、KES環境機構への相談構築講座の受講を行い、自社で取り組むための「活動組織づくり」を進めます。
ここで体制を整えることが、その後の活動の基盤になります。

2か月目:現状把握と課題整理

次に、環境実態調査や影響評価を行い、自社の活動が環境に与える影響を明確化します。
あわせて、関連法規やその他の要求事項のリスト化と確認を行い、法令順守に向けた整備を進めます。
この段階で、改善が必要な重要活動も特定します。

3か月目:方針・計画づくり

ここでは、自社の環境活動の方向性を示す環境宣言を作成します。
さらに、改善目標や計画を立て、日々の運営に必要な環境マネジメントマニュアルも作成します。

4〜6か月目:活動開始と実績づくり

方針に基づき、教育・訓練を行いながら活動を実践します。
ステップ2の企業では、この時期に自己評価を進める準備も始めます。
活動の実績が、審査時の評価ポイントになります。

7〜8か月目:審査・登録

審査登録申請 → 書類審査 → 実地審査という流れで審査が行われます。
最終的に認証が判定され、問題がなければ登録証が交付されます。

ステップ2では、より高度なマネジメントサイクルを求められるため、自己評価とトップによる評価・改善が審査に含まれる点が特徴です。

取得にかかる費用

詳細税込
資料一式規格書、構築の手引き1,621円
マニュアルサンプル(S1)
マニュアルサンプル(S2)
構築講座受講料資料代込み 1名11,500円
自己評価員養成資料代込み 1名(2日間)33,900円
ステップ1コンサルタント料金 
初年度標準 3回分39,600円
2年目以降 希望により随時1回13,200円
新規審査料金61,600円
確認審査(注4)並びに更新審査料金(2年目以降)34,650円
ステップ2コンサルタント料金 
初年度標準 4回分70,400円
2年目以降 希望により随時1回17,600円
新規審査料金216,700円
確認審査(注4)並びに更新審査料金(2年目以降)108,900円

▼参考:KES登録費用一覧

KES認証を取得することで得られる主なメリット

KES環境機構が実施したアンケートでは、認証を取得した企業が実際に感じた効果として、以下のような声が挙がっています。

  • 事業への具体的な効果
     例:環境配慮をきっかけに、ヘルシーメニューの開発が進んだ
  • 従業員の環境意識の向上
     例:事業所周辺の清掃を続けた結果、取引先からの評価が上がった
  • コスト削減
     例:暖房をガスに切り替えたことで、設備費用を2年で回収できた
  • 環境に配慮する企業として認識される
  • 従業員の経営参画意識が高まる
  • 社会的責任を果たしているという自覚が持てる
  • 自社で環境経営の仕組みを運用できるようになる

これらの結果からも分かるように、KES認証は中小企業や地域社会にとって実効性の高い取り組みといえます。

▼出典:KES新パンフレット 2024年 2月版

KESにおけるメリットの特徴について

段階的に取り組める仕組み
KESは初級レベルから無理なく始められるステップアップ型の仕組みです。
自社の状況に合わせて目標を立て、達成しながら環境負荷の低減を進められます。

法令遵守の強化
認証のプロセスには環境関連法令の定期確認が組み込まれており、法的リスクを減らし、コンプライアンスを徹底できます。
結果として、取引先や地域社会からの信頼が高まり、社会的信用の向上につながります。

組織全体の意識改革
日常業務の中で省エネや廃棄物削減が習慣化し、従業員一人ひとりが環境配慮を意識するようになります。
この姿勢が企業文化として根付き、ブランド価値の向上と持続可能な成長の基盤となります。

ISO14001へのスムーズな移行
KESで基礎を固めることで、将来的により高度なISO14001などの国際規格に移行する際もスムーズに対応できるようになります。

まとめ

KESについての基本情報や、取り組み方、そのメリットなどについて解説いたしましたがいかがでしたでしょうか。
環境マネジメントシステムは、環境負荷を低減させるための取り組みではありますが、その仕組みをうまく活用し継続することで経営にとってのメリットも十分に感じられるものです。

企業のサステナブルな姿勢が、多くのステークホルダーにプラスの影響を与えられる素晴らしい仕組みですので、まだ取り組めていないけれど、社内の環境意識を醸成したいとお考えが御座いましたら検討してみてがいかがでしょうか。

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