小水力発電とマイクロ水力発電 | 再生可能エネルギーの可能性を解説

再生可能エネルギーは、太陽、風、水、地熱などの自然の力を利用して電力を生成する方法であり、古くから人類の生活に利用されてきました。

太陽光発電は、1990年代、風力は1981年に国内初の100kWという大型風車の開発が始まり、水力発電では1888年に日本で初めて導入、地熱発電は1966年に国内初の地熱発電所が建設されており、かなり歴史は深いです。

しかし、まだまだ国内で再生エネルギーの拡大余地はあり、現代においては、環境やエネルギーの持続可能性を確保するための重要な手段として、その普及と技術革新が進められています。

▼参考:エネルギーミックスとは | 日本の現状と未来を考える

出典:経済産業省 資源エネルギー庁HP

日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」

IEA「Data Services」、各国公表情報より資源エネルギー庁作成

本記事では、水力発電で今後の導入増が期待されている小水力発電、マイクロ水力発電について解説していきます。

目次

小水力発電とマイクロ水力発電の環境への優しさ


まず、規模の定義から正確に理解することが重要です。小水力発電は一般的に1,000kW以下、マイクロ水力発電は100kW以下の出力規模を見ていきます。
この規模の違いは最初の数値の違いではなく、環境への影響の度合いに直接関係してきます。規模が小さいながらも、大規模な土木工事を必要とせず、そこにある水路や自然の地形を考慮した設置が可能になります。

生態系と水質保全

生態系への影響について、具体的なデータを見ていきましょう。正しく設計された小水力発電施設では、魚類の累積上昇率が95%以上維持されることが、環境モニタリング調査で確認されています。

これは、最新の魚道設計技術により例えば、階段式魚道に加えて、自然石を用いた近自然型魚道を併設することで、様々な魚種の遡上をサポートすることができます。

水質保全の面でも優れた特徴を示しています。濁度の上昇が平常に0.5度以下と、環境基準(5度)を大きく下回っています。
水温変化も0.5℃以内に維持され、河川生態系への影響を最も考慮することができます。
これは、短時間の流水で通過させる設計により、水質変化のリスクを大きくに軽減できるためです。

建設時の負荷と運用中のライフサイクルアセスメント(LCA)

建設時の環境負荷については、具体的な数値で比較すると理解できます。小水力発電所の建設における資材使用量は、同規模の出力の発電所と比較して約5分の1ですこれにより、建設時のCO2排出量は1kWあたり約2.5トンに抑えられ、火力発電所建設時約12トン/kWと比べて大幅に撤去しています。
また、工期も短く、大規模な重機の使用も控えるため、建設時の騒音や振動による野生生物への影響も限定的です。

運用段階での環境性能はさらに注目に値します。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点から見ると、小水力発電のCO2排出量は発電量1kWh当たり約11gですが、太陽光発電(約38g-CO2/kWh)や風力発電(約26g-CO2/kWh)と比べても低く、再生可能エネルギーの中でも特に環境負荷の小さい発電方式と言えます。

データの活用と計画

さらに、地域水環境保全への貢献も重要な特徴です。 実際の運用データによると、小水力発電施設の設置地域では、定期的な水質調査と維持管理活動により、周辺水域の生物多様性に気を付けることが必要です。
発電事業者による定期的な環境モニタリングと、地域住民との協働による河川環境の保全活動が、生態系を守ることに繋がります。

発電効率の面でも、技術革新により優れた進歩が見られます。最新の水車技術では、低落差(2-3m)でも70%以上の発電効率を達成できるようになっています。
多くの地点で効率的な発電が可能となり、一か所あたりの取水量を抑えながら必要な発電量を確保できるようになっています。

例えば、最新のIoTセンサーを活用した水量管理システムでは、河川の流量変動に応じて水量を自動調整し、常に必要な環境流量また、魚類の増加時期には、魚道への導水量を増やすなど、生態系のニーズに応じた柔軟な運用も可能になっています。

しかし、これらの環境への優しさを最大限に引き出すためには、適切な計画と運用が必要です。具体的には以下のような管理が重要になります:

季節ごとの河川流量変動を考慮した取水計画の策定

生物多様性モニタリングの定期的な実施と結果の評価

地域住民との協働による水環境の保全活動

設備の定期的な点検と予防的なメンテナンス

緊急時対応計画の整備と訓練の実施

このように、小水力発電とマイクロ水力発電は、正しい計画と運用により、環境への影響を極力抑えながら、持続可能なエネルギー供給に貢献することができます。
自然環境と調和した再生可能エネルギーの普及に重要な役割を果たすことが期待されています。そうでしょう。

小水力発電とマイクロ水力発電の経済的利点とアクセス性


小水力発電とマイクロ水力発電は、環境への配慮だけでなく、経済的利点とアクセスの良さにおいても優れた特性を持つ発電技術です。
これらの特徴は、特に地域の持続可能なエネルギー供給を目指す取り組みにおいて重要な役割を果たします。それぞれについて詳しく解説します。

まず、経済的な利点として注目されるのは、設備の運用コストが低く、長期的な視点で見ると非常に経済的である点です。
小水力発電やマイクロ水力発電は、燃料を必要としない再生可能エネルギー源であるため、燃料価格の変動による影響を受けません。

これにより、運用コストが安定し、長期間にわたり低コストでエネルギーを供給できます。また、設備自体の耐久性が高く、適切なメンテナンスを行えば数十年にわたって運用が可能です。
このように、初期投資は必要ですが、運用後は安定したコストパフォーマンスを実現できる点が、地域の経済的負担を軽減する要因となります。

さらに、小水力発電とマイクロ水力発電は、地域経済の活性化にも寄与します。地元で設置・運用が行われることが多いため、地域の雇用を創出するだけでなく、電力を地域内で消費することでエネルギーの地産地消が可能になります。
これにより、外部からのエネルギー供給に依存する必要が減り、地域のエネルギー自立を促進します。
また、余剰電力が生じた場合には売電することができ、地域の収益源となる可能性もあります。

アクセス性の面では、設備の柔軟性が大きな強みです。小水力発電やマイクロ水力発電は、小規模で軽量な設備が特徴で、設置場所に制約が少ないため、都市部から山間部、孤立した地域まで幅広いエリアで利用できます。

特に、電力網が未整備の地域や離島などでの導入が進んでおり、これらの地域で安定的にエネルギーを供給する手段として重要な役割を果たしています。
例えば、山間部の小規模な集落では、既存の水路や河川を利用することで、住民の生活に不可欠な電力を供給することができます。

また、既存のインフラを活用できる点もアクセス性の高さを裏付けています。農業用水路や工業用水路を発電に利用することで、新たなインフラ整備のコストを抑えることが可能です。
このアプローチは、特に予算が限られた地域や国での導入に適しています。さらに、設備が比較的小型で設置が容易なため、現場での設置工事やメンテナンスの負担が軽減され、迅速な導入が可能です。

これらの経済的利点とアクセス性の高さにより、小水力発電とマイクロ水力発電は、地域ごとの特性やニーズに合わせた柔軟なエネルギーソリューションを提供します。
これらの技術は、持続可能なエネルギー供給の手段として、また地域経済の活性化やエネルギー自立を促進する重要なツールとして、今後さらにその役割を拡大していくことが期待されます。

事例

自治体で取り組んでいる吉野ヶ里町松隈の事例では、初期投資が5,900万円で年間売上が800万とのことです。

地区全戸が株主となって初期投資を出し合う形で運営がスタートしています。

出典:吉野ヶ里町で全国が注目する新たな取り組み「松隈小水力発電所」【佐賀県神埼郡】


企業でも取り組んでいる事例があり、飲食店の壊れていた木製水車を見て新しいものにするタイミングで小型水力発電が選択肢となりました。YouTubeで経緯が説明されています。

出典:水車型水力小型発電(シシクアドクライス株式会社)

まとめ


小水力発電、マイクロ水力発電は、環境、経済、地域社会の三つの側面から多くの利点を持ち、その小規模さゆえの柔軟性と低環境影響が魅力的であり、特に電力アクセスが難しい地域での利用が期待されています。

持続可能な未来を目指す上で、このような再生可能エネルギーの普及と活用は不可欠であると言えます。

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