IDEA Ver.3.3 海外版の発表

2023年12月7日にIDEA Ver.3.3 海外版リリースの発表が国立研究開発法人 産業技術総合研究所からありました。

環境省のサプライチェーン排出量算定のQ&Aでも、海外排出原単位を用いた算定は難易度が高く、まずは国内排出原単位を用いての算定をしている事業が多いと言及されていますが、海外の原単位データを探すのに苦労した経験がある算定の担当の方も多いと思います。

今回のIDEA Ver.3.3 海外版のリリースで算定する国によってはその苦労が軽減するかもしれません。

本記事では、IDEA Ver.3.3 海外版ついて詳しく解説していきます。

目次

IDEA ver3.3 海外版概要


海外版IDEA(Inventory Database for Environmental Analysis)は、日本国内で培われた環境負荷データベースの高精度な手法を基盤にしつつ、国際的な事業活動やサプライチェーンに対応するために拡張されたデータベースです。
グローバル化が進む中で、企業が製品のライフサイクル全体を通じて環境負荷を正確に把握し、国や地域ごとに異なる産業構造やエネルギーミックスを考慮した環境評価を行うことを可能にします。

海外版IDEAの最大の特徴は、国や地域の特性を反映したデータの提供です。例えば、欧州、北米、アジアなど主要地域ごとに電力構成や製造技術、物流手段が異なることを考慮し、各地域に特化した環境負荷原単位を用意しています。
同じ製品でも、再生可能エネルギー比率の高い欧州と、化石燃料への依存度が高い地域とでは、製品のカーボンフットプリントに大きな差が生じます。これにより、企業は各生産拠点や調達先ごとに実態に即した排出量を評価でき、国際市場における環境戦略の最適化を図ることが可能です。

課題は、地域ごとのデータ精度にはばらつきが存在することです。特に新興国では詳細なデータが不足するケースが多いため、海外版IDEAでは標準化されたモデリング手法や補間データの提供を通じて、そのギャップを補完しています。
これにより、データが不完全な地域でも一定の信頼性を維持しつつ、環境負荷評価を進めることが可能です。

データのカバー範囲は広く、素材の採掘・生産から部品製造、物流、エネルギー供給、廃棄段階までを網羅しています。この包括的なデータベースにより、製品のライフサイクル全体を俯瞰した評価が可能となり、企業はサプライチェーンのどの段階で排出が多いのかを可視化し、優先的に取り組むべき課題を特定できます。

総じて、海外版IDEAは、企業の環境負荷低減戦略を支える強力なツールです。国際的なサプライチェーンの複雑化に対応し、地域ごとの排出特性や国際基準を踏まえた評価を可能にすることで、持続可能な経営戦略の実現を支援します。
さらに、継続的なデータ拡充と精度向上により、環境負荷評価の国際標準としての役割が期待されており、企業のグローバル競争力強化にも寄与する重要な基盤と言えるでしょう。

IDEA ver3.2 海外版では、世界平均、日本、中国、インドネシアの4種類でしたが、IDEA ver3.3 海外版では20か国:世界平均、中国、韓国、インドネシア、インド、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、トルコ、カナダ、アメリカ、ブラジル、南アフリカ、オーストラリアの20種類まで拡張されています。

▼参考:IDEA海外版の開発

IDEAの提供会社


IDEAデータベースは、環境負荷の可視化を支援するため、4つの企業・団体を通じて提供されています。それぞれの提供会社は、特性や専門性を活かし、企業のLCA(ライフサイクルアセスメント)や脱炭素経営に貢献しています。

TCO2株式会社は、環境データの活用支援に強みを持ち、企業の脱炭素戦略策定や排出量可視化に向けたソリューションを提供しています。IDEAデータベースを通じて、事業活動の具体的な排出量評価や環境影響分析の精度向上を支援しています。

一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)は、持続可能な社会の実現を目指し、LCAを中心とした評価手法の普及や実践を推進しています。IDEAの提供を通じて、製品やサービスのライフサイクル全体における環境影響評価を支援し、企業の持続可能な経営戦略を後押ししています。

株式会社LCAエキスパートセンターは、LCAに関する高度な専門知識を基に、環境負荷評価やLCAツールの導入支援を行う企業です。IDEAデータベースを活用し、製品や事業の環境性能評価をサポートしつつ、効率的な環境改善策の提案に取り組んでいます。

株式会社AIST Solutionsは、産総研(AIST)の技術を社会実装する役割を担い、IDEAをはじめとする高度なデータベースや技術の普及に力を入れています。IDEAデータの提供を通じて、企業の環境分析や持続可能な製品開発をサポートしています。

これら4社は、IDEAデータベースの信頼性と実用性を最大限に活かし、企業の環境負荷可視化や持続可能な経営推進を支える重要なパートナーです。組織ごとの特性に応じた支援が可能であり、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強力に支援しています。

出典:IDEAの提供

まとめ


2023年12月にリリースされたIDEA Ver.3.3 海外版は、従来の4種類から20か国へ拡張され、企業が国や地域ごとの産業構造や電力構成を反映した原単位データを活用できるようになりました。

これにより、各拠点や調達先で異なる排出特性を考慮した精緻な算定が可能となり、サプライチェーン全体の環境負荷をより現実的に把握できます。
特に海外原単位データの入手に苦労してきた企業にとって、大きな前進といえるでしょう。データは素材採掘から廃棄まで幅広くカバーされ、優先的に削減すべき排出源の特定に役立ちます。

また、新興国などデータ不足の地域でも標準化された補完手法により一定の信頼性を確保しています。
提供はTCO2、SuMPO、LCAエキスパートセンター、AIST Solutionsの4組織が担い、企業のLCA評価や脱炭素経営を強力に支援。
IDEA Ver.3.3は、国際的な環境戦略の策定やグローバル競争力強化の基盤として今後の活用が期待されます。

▼参考:排出原単位(排出係数)は何を使う?データベースの選び方と活用事例

▼参考:海外で活用されている原単位紹介(ecoinventデータベース) 

▼参考:海外で活用されている原単位紹介(GaBiデータベース) 

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