CO2回収の最前線:DAC(直接空気回収技術)が示すカーボンニュートラルへの道

地球温暖化が進行し、気候変動の影響がますます深刻化する中、CO2削減は急務となっています。
従来の排出源での削減だけでは限界があり、過去に排出された二酸化炭素(CO2)の回収が重要な課題となっています。

ここで注目されるのが、DAC(直接空気回収技術)です。
DACは、大気中に拡散したCO2を化学的または物理的手法で回収する革新的な技術であり、気候変動の緩和において新たな解決策を提供する可能性を秘めています。

DAC技術の最大の特徴は、過去に排出されたCO2も回収できることです。
これにより、温暖化の進行を遡及的に修正できるため、排出源からの削減だけでは対応しきれない温暖化に対する補完的な解決策として位置づけられています。
ネットゼロ社会の実現に向けた重要な鍵として、世界各国での実証実験や商業化の動きが加速しています。

また、DACは単なるCO2排出削減技術ではなく、ネガティブエミッション技術として、すでに大気中に存在するCO2を積極的に除去する役割も果たします。
この技術が進展すれば、温暖化の進行を逆転させる可能性が広がり、カーボンニュートラル社会実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

現在、DAC技術は世界中で進行中のプロジェクトや企業の取り組みが注目されており、その商業化への道が着実に開かれています。

今後、社会全体での受容と政策支援が進むことで、DAC技術の普及が加速し、気候変動対策における重要な柱となることが期待されます。

目次

DAC(直接空気回収技術)とは?

DACの目的と重要性

DAC(Direct Air Capture、直接空気回収技術)は、大気中に存在する二酸化炭素(CO2)を直接取り出すための革新的な技術です。

この技術は、気候変動を緩和し、地球温暖化を抑制するために重要な役割を果たすと期待されています。
現在、世界的に温暖化が進行し、CO2の排出削減が急務となる中、DACは「ネットゼロ社会」を実現するための鍵となる技術として注目されています。

▼参考:地球温暖化の歴史 | 2050年ネットゼロ目標への道のり

従来のCO2削減技術は、主に二酸化炭素を排出する場所(例えば発電所や工場)で回収する方法でした。
しかし、DAC技術は、その名の通り、大気中に拡散したCO2を回収できるため、過去に排出されたCO2も取り除くことができます。

気候変動を遡及的に修正することが可能となり、排出源からの削減だけでは対応しきれない温暖化の進行に対して、補完的な解決策を提供するのです。

▼出典:経済産業省 DACロードマップの策定に向けた検討

DAC技術の基本的な仕組み

DAC技術の基本的な仕組みは、大気中のCO2を化学的または物理的手法を使って取り出すプロセスです。
簡単に言うと、空気を大規模に吸い込み、その中からCO2だけを選別して回収する技術です。
この回収方法には、いくつかの技術が使われており、代表的なものは化学溶媒や固体吸着材を使うものです。

例えば、化学溶媒を使う場合、大気中のCO2は水酸化カリウムなどの溶液と反応し、固体の炭酸塩として取り込まれます。
一方、固体吸着材の場合、CO2は多孔質な物質に吸着され、そこから再生プロセスを経て取り出されます。
回収したCO2は、そのまま地中に貯留したり、利用可能な形に変換して他の産業で活用したりすることができます。

このように、DAC技術は単なるCO2削減だけではなく、回収したCO2をどう活用するか、または安全に貯留するかといった点でも重要な役割を担っています。

これにより、ネットゼロの目標達成に向けて、新たな道を切り開くことが可能となるのです。

▼出典:経済産業省 DACロードマップの策定に向けた検討

DAC技術が注目される理由

環境問題への対応としてのDAC

DAC(直接空気回収技術)は、従来の炭素削減技術が取り組むことが難しい「過去のCO2」を回収するため、地球規模の環境問題に対する新たな解決策として位置づけられています。

これまでの技術では、排出源(発電所や工場など)からCO2を回収する方法が主流でしたが、DACはすでに大気中に拡散しているCO2を回収できるため、過去に排出された二酸化炭素も除去することが可能です。

地球温暖化は、すでに積み重ねられたCO2が大気中に蓄積されることで進行しており、その影響を抑制するためには、過去の排出分を取り戻す必要があります。

DAC技術は、この「過去のCO2」を回収できる数少ない技術の一つであり、未来の温暖化を防ぐために、過去に排出された二酸化炭素を積極的に取り除く重要な役割を果たすと期待されています。

▼出典:PRTIMES 大気中のCO2直接回収・貯留に関する事業可能性調査の共同実施について

ネガティブエミッション技術としての役割

DACは、単なる排出削減にとどまらず、大気中のCO2を積極的に除去する「ネガティブエミッション技術」として注目されています。
ネガティブエミッションとは、すでに大気中に存在する二酸化炭素を取り除き、正味で削減することを意味します。
この点で、DACは排出削減技術とは根本的に異なります。

これまでの温暖化対策は、主に排出量の削減に焦点を当ててきましたが、温暖化の進行を完全に逆転させるためには、過去に排出されたCO2を積極的に除去する必要があります。
DACは、温暖化の進行を食い止め、さらには逆転させる可能性を秘めており、地球規模の気候修復に向けた重要な技術です。

この技術が実用化されることで、温暖化の影響を食い止め、カーボンニュートラル社会を実現するための新たな一歩となります。

DACは、気候変動対策における重要な役割を果たす「ネガティブエミッション技術」として、今後ますます注目を集めることでしょう。

▼参考:【2025年最新】カーボンニュートラルとは?現状と今後のトレンド

▼出典:NTT技術ジャーナル 宇宙、環境、エネルギー分野における革新的技術への取り組み

DAC技術の課題と克服への道

コスト面での課題

DAC(直接空気回収技術)は、効果的な温暖化対策として大きな可能性を秘めていますが、実用化に向けては高コストという大きな課題があります。

特に、DAC技術は非常にエネルギー集約的で、回収するCO2の量に対して膨大なエネルギーを消費します。
このエネルギー需要が高いことから、初期投資も大きく、運用コストが高くなるため、商業化には長期的なコスト削減が求められます。

しかし、技術の進歩と規模の経済を活かすことで、コストは徐々に下がると期待されています。
例えば、モジュール型のDACプラントの導入や、効率的なエネルギー管理技術の開発が進むことで、今後はより低コストでの運用が可能になるでしょう。

また、政府の支援や民間企業による投資が加速すれば、コスト削減のペースはさらに早まる可能性があります。

▼出典:経済産業省 DACロードマップの策定に向けた検討

実用化に向けた技術的な挑戦

DAC技術の商業化には、いくつかの技術的な壁を乗り越える必要があります。
例えば、現在のDACシステムは、回収したCO2を処理するために大量のエネルギーを消費します。

そのため、効率性を向上させることが重要な課題です。
さらに、CO2を吸着するための素材や化学反応の速度、さらには再生可能エネルギーを利用する方法の改善が求められます。

これらの技術的な課題をクリアすることで、DACシステムはより効率的で安価に運用可能となり、商業化に向けた道が開けると予測されています。

技術の進展と共に、エネルギー消費の削減や回収効率の向上が期待されており、それによりDACがより現実的な選択肢となるでしょう。

▼出典:日本ガイシ 大気中からCO2を回収するダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)用セラミックス

社会的受容と政策の影響

DAC技術の普及には、社会的受容と政策支援が欠かせません。
特に、政府の支援策が重要な役割を果たします。

多くの国々では、気候変動対策としてDAC技術を導入するための補助金や税制優遇措置が検討されています。
例えば、米国の「インフレ削減法(IRA)」では、DAC技術の商業化に向けた税制優遇が提供され、企業の投資を促進しています。

また、企業の炭素オフセット需要が高まる中で、DAC技術に対する需要も増加しています。多くの企業がネットゼロ目標を掲げ、排出量のオフセット手段としてDACの利用を積極的に検討しています。
このような市場の動きが、DAC技術の普及を後押しし、社会的に受け入れられるための土台を築いていきます。

これらの要素が組み合わさることで、DAC技術は今後、より多くの国や企業によって採用され、気候変動への有効な対策となることが期待されています。

▼出典:経済産業省 DACロードマップの策定に向けた検討

DAC技術の最新動向

国内外のDACプロジェクト事例

世界各国でDAC技術の実証・商業化が進んでいます。
特に注目すべきは、米国のOccidental社が展開する「Stratos」プロジェクトで、これは世界最大規模のDAC施設となる予定です。

また、MicrosoftやAmazonなどの大手企業が、このプロジェクトからのCO₂削減クレジットを購入する契約を結んでおり、企業のカーボンニュートラル戦略における重要な要素となっています。

▼参考:石油会社は、炭素除去が次の大きな化石燃料ブームになるだろうと述べている

日本国内でも、双日株式会社やカーボンエクストラクト株式会社、清水建設株式会社で新築ビル等において大気中のCO2を除去し、様々な用途で活用する直接空気回収(DAC)システムを導入する共同事業などが行われています。


この取り組みは、東京都の委託事業として進められており、都市部でのDAC技術の実用化に向けた重要なステップとなっています。

▼出典:経済産業省 DACロードマップの策定に向けた検討

主要企業の取り組み状況

DAC技術の商業化に向けて、多くの企業が積極的に取り組んでいます。
例えば、Climeworks社はスイスに本社を構え、再生可能エネルギーや廃熱を利用したDAC技術を提供しています。
同社の施設は、CO₂の再排出率が10%未満とされ、環境への影響を最小限に抑えています。

また、米国のDeep Sky社は、カナダ・アルバータ州に「Alpha」テストサイトを設立し、複数のDAC技術の実証を行っています。
このプロジェクトには、Bill Gates氏の投資ファンド「Breakthrough Energy」から4,000万ドルの助成金が提供されており、技術の商業化に向けた重要なステップとなっています。

これらの企業の取り組みは、DAC技術の商業化と普及に向けた重要な前進を示しており、今後の展開が注目されます。

▼参考:「世界初の横断型CDR施設が完成」 Deep Sky、アルバータ州でDAC技術10種を同時運用へ

まとめ

DAC(直接空気回収技術)は、大気中のCO2を直接回収する革新的な技術で、地球温暖化の進行を遡及的に修正する可能性を秘めています。
従来のCO2削減技術と異なり、過去に排出されたCO2も回収可能で、気候変動への対応において重要な役割を果たします。

現在、世界各国で実証プロジェクトが進行中で、米国の「Stratos」プロジェクトや、Microsoft、Amazonなどがこの技術を支持しています。
日本国内でも、双日やカーボンエクストラクト、清水建設が新築ビルでの導入を進め、都市部での実用化に向けた重要なステップを踏んでいます。

DAC技術は今後、カーボンニュートラル実現に向けた大きな進展が期待されます。

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