海外で活用されている原単位紹介:LCA for Experts (旧称 GaBi)データベース

カーボンフットプリントやLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施する上で、信頼性の高いデータベースの活用は欠かせません。

日本では3EIDやIDEAといったデータベースが主に用いられていますが、海外ではさらに多様な選択肢が存在し、特にヨーロッパで高い評価を得ているのがLCA for Experts (旧称 GaBi)データベースです
LCA for Expertsは製造業や化学、エネルギーなどの産業分野で広く採用され、製品やプロセスの環境影響を高精度に評価できる点で定評があります。

本記事では、LCA for Expertsの成り立ちや特長、どのような企業や場面で活用されているのかを詳しく解説します。
欧州市場に対応するためのLCAデータベースを検討している方にとって、有力な選択肢となるでしょう。

目次

LCA for Expertsとは、ヨーロッパでの位置付け

LCA for Expertsは、ライフサイクルアセスメント(LCA)分野において、特にヨーロッパで非常に重要な位置を占めるデータベースの一つです。
ヨーロッパにおける環境評価や持続可能性の取り組みにおいて、LCA for Expertsは信頼性の高いデータベースとして広く認識されており、特に産業界での使用が目立ちます。

ヨーロッパの産業界、特に製造業や化学工業、エネルギー産業などで広く利用されており、
企業は、製品やプロセスの環境影響を詳細に分析し、持続可能な製品設計や生産プロセスの最適化を行うためにLCA for Expertsを使用しています。
さらに産業プロセスの詳細なモデリングや特定の業界向けにカスタマイズされたデータセットに強みがあります

LCA for Expertsデータベースの概要

LCA for Expertsデータベースは、もともとドイツのthinkstep社によって開発されました。
旧称のGaBiは「Ganzheitliche Bilanzierung」(総合的評価)の略で、製品やサービスのライフサイクルにわたる環境影響を評価するためのデータベースとして知られていました。

2019年、Spheraはthinkstep社を買収し、それによりGaBiデータベースもLCA for Expertsと名称を変えSpheraの製品ポートフォリオに加わりました。
上記からデータベースは、さらに進化を遂げています。

SpheraのLCAツールにも、勿論組み込まれており、日本語対応が行なわれていたり、ecoinvent Databaseなど他のデータベースも活用できるツールであることからヨーロッパ企業に提出するLCA算定を行なうツールとして選択肢の1つとして考えれます。

▼参考:Sphera社、LCAツールサービスサイト

LCA for Expertsデータベースの特長

LCA for Expertsデータベースは、ライフサイクルアセスメント(LCA)を行う際に必要な情報を網羅的に提供する、信頼性の高いデータベースです。

その主な特長は次のとおりです。

1. 幅広い分野をカバー

20,000件以上のデータセットを収録しており、製造、エネルギー、輸送、化学、農業、廃棄物管理など幅広い産業分野を網羅。
資源採取から生産、使用、廃棄まで、製品・サービスのライフサイクル全体を対象に環境影響を評価できます。

2. 地域特性に対応したデータ

ヨーロッパ、アジア、北米など、地域別の特性を反映したデータを提供。
各地域特有のエネルギーミックスや産業プロセスを考慮した、より現実的な分析が可能になります。

▼参考:エネルギーミックスとは | 日本の現状と未来を考える

3. 国際基準に準拠

ISO 14040シリーズに準拠しているため、信頼性の高いデータを用いたLCAの実施が可能です。国際的にも通用する基準に基づいて評価を行うことができます。

4. 最新データへの更新とサポート体制

GaBiデータベースは継続的に更新され、新しい技術やプロセスにも対応。さらに専任スタッフによるトレーニングやサポートが用意されており、企業が効果的にデータを活用できる体制が整っています。

LCA for Expertsデータベースの利点と主な活用分野

LCA for Expertsデータベースは、環境影響評価を行う上で世界的に利用されているツールであり、以下のような利点があります。

LCA for Expertsデータベースの利点

精度の高い環境評価
産業プロセスを細部までモデリングできるため、製品やプロセスの環境影響を非常に高い精度で分析できます。

産業界での幅広い採用実績
世界中の多くの企業が、GaBiを活用して持続可能な製品設計やサステナビリティ戦略を立案しています。実務での利用実績が豊富なことも安心材料です。

強力なユーザーコミュニティ
LCA for Expertsには活発なユーザーコミュニティがあり、ベストプラクティスの共有や技術サポートを受けられる環境が整っています。

主な用途

  • 製品設計・エコデザイン
    製品のライフサイクル全体で発生する環境影響を分析し、設計段階から環境配慮型の製品づくりを支援します。
  • 持続可能性戦略の策定
    サプライチェーン全体にわたる環境負荷を可視化し、持続可能な調達・生産戦略を構築するためのデータ基盤として活用できます。
  • 環境製品宣言(EPD)の作成
    LCA for Expertsで算出したデータをもとに、製品の環境影響を透明性高く示すEPD(Environmental Product Declaration)を作成できます。
  • 規制対応のサポート
    環境関連の法規制や基準を満たすための評価ツールとしても有効で、法的要求事項への適合状況を確認できます。

導入費用の目安

用途やライセンス形態によって異なりますが、年間費用は数千ユーロから数万ユーロ程度が一般的です。企業の規模や活用範囲に応じたプランが用意されています。

▼出典:ライフサイクルアセスメント(LCA)ソフトウェア

まとめ

LCA for Expertsデータベースは、ヨーロッパにおける産業界でのLCA実施において不可欠なデータベースとして位置づけられています。
特に製造業やエネルギー産業において、その精密なデータと柔軟なモデリング能力が評価されており、ヨーロッパの持続可能性を支える重要なリソースとなっています。
ヨーロッパの取引先から製品のLCA提出の要請があった企業は、LCAツールと同時の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

▼参考:排出原単位(排出係数)は何を使う?データベースの選び方と活用事例

▼参考:海外で活用されている原単位紹介(ecoinventデータベース) 

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