健康と脱炭素の掛け算、時代に応じて変化をし続けるアプリ「SPOBY」開発の工夫

株式会社スタジオスポビー  代表取締役  夏目恭行(なつめ たかゆき)

本来乗り物に乗って移動すべき距離区間を、歩行または自転車で移動したときの二酸化炭素抑制量を見える化、健康と脱炭素のハイブリットアプリ「SPOBY」を展開する株式会社スタジオスポビー。今回は夏目代表に同社が健康に関する社会の行動変容を促してきた製品開発の軌跡を伺いました。(スタジオスポビーは、TBMの企業単位温室効果ガス排出量可視化・削減クラウドサービス「ScopeX」の削減パートナーです)

目次

エンターテイメント事業をきっかけに知った健康促進の可能性

― 脱炭素と健康促進を同時に叶える唯一無二のアプリ「SPOBY」の、開発のきっかけを教えてください。
 
前職の大手総合エンターティメント会社でシニア事業のプロデューサーをしていました。その時に、「健康になるためにジムに行こう」というマーケティングキャンペーンを、シニア層をターゲットに行っていました。体を動かして健康活動を継続しないと疾患発症や怪我のリスクが高まるという、いわゆる“恐怖訴求”を行ったところ、あっという間にユーザーが集まり、このキャンペーンは大成功でした。
しかし、ジムに入会しても運動するわけではなく、井戸端会議の場所としてなんとなく通う方が大半でした。そして知らぬ間に退会されていく会員も徐々に増えていったのです。実は思っている以上に、世間の健康意識は低いことに気がつきました。
 
そこで、もっと気軽に、日常の一環ですぐに始められるウォーキングはどうかと思い「SPOBY」の事業構想が始まったのです。

ドラマやゲーム会社でプロデュース業の経験があったので、楽しく、気楽に日本国民全員が1日プラス1000歩歩くきっかけになるアプリにしようと思い、開発を進めました。1000歩って10分間ぐらい歩くだけなので、決して難しくありません。ですが、国土交通省の調査によると、1日プラス1500歩ことで当たり1人年間3万5000円の医療費削減ができるんです(参考:国土交通省「まちづくりにおける健康増進効果を把握するための歩数調査のガイドライン」)。
 
SPOBYの叶えたい世界観に、多くのユーザーだけでなく自治体の方も賛同してくれて、アプリのリリース当初から官民連携で健康促進を進めてきました。

 ユーザーきっかけで知った脱炭素への貢献

― 健康促進にエンターテイメント要素を加えるというのはすごく相性がいいですね。その中でなぜ脱炭素経営も促進していこうと思ったのでしょうか。

歩くということは乗り物に乗っていないということなので、温室効果ガス排出量が減っています。アプリをご利用いただいているユーザーから、そんなヒントをいただき、2019年頃から「歩けば健康にもなれるし環境保全にもなる」というメッセージも打ち出したんです。でも、当時はそこまで刺さらなかったです。
2021年になって菅首相(当時)の「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする宣言」がされてからガラッと風向きは変わりました。多くのユーザーから脱炭素と健康経営できるのはとても素晴らしいというお声をいただき、それなら脱炭素できた分の可視化もできるようにアプリを改良しようと決め、約1年間研究を重ねました。環境省にも新機能の構想に関して示唆をいただき、2022年6月に出来上がったのが脱炭素量も可視化できる今のSPOBYアプリです。

脱炭素の言葉が浸透するにつれ変わり始めた企業の健康促進

― 今実際に導入されているユーザーとはどのように出会ったのでしょうか。

ローンチ前にもスタートアップピッチで登壇し、グランプリを受賞した背景から多くのメディアからも取材いただいたり、雑誌で「2023年ヒット予測」の製品として紹介いただいたりしました。そのおかげで地方自治体からのお問い合わせも殺到し、自治体住民の健康促進と温室効果ガス排出量削減の実証実験や、実導入が進むケースも増えてきました。すでに今年度は30カ所への自治体導入が見込まれています。
 
また環境省の調べによると、脱炭素という言葉の認知度はなんと9割もありながら、そのうち実際に何か行動している割合はたったの3割で、無行動なのが6割を占めているそうです。
この6割の方をなんとか動かそうと環境省では多くの脱炭素推進企業と連携をしているのですが、その中でSPOBYは唯一のスタートアップ企業です。そこからお問い合わせをいただくケースも多くございます。
 
例えば北海道帯広市とは2020年から、歩数など日々の運動量をポイント化して特典と交換できるという「健康マイレージ事業」を行っています。今まで120%車社会だったスタートから3年で、参加した市民1人当たりの歩数を1日平均980歩の底上げをすることができました。おかげで健康増進のみならず多くの排気ガスが削減できたと喜んでいただいています。
 
地方自治体との協業プロジェクトからSPOBYを知り、大手企業へも複数社導入が決まりました。大手企業では従業員の健康促進と企業としての脱炭素はどちらも重要課題なのですが、今までそれぞれ別で考えられていたところSPOBYを使うと一石二鳥だとお喜びいただいています。法人版を導入されている企業の従業員の方からは、「歩く時間を増やしたことによって今まで見たことのない景色が見えるようになり、楽しく脱炭素できている」といった嬉しい声もいただきました。
 
またこの度、株式会社パソナ(以下:パソナ)とも資本業務提携し、共に日本社会の健康経営と脱炭素経営を加速させようと奮闘しております。
 
2023年6月7日(水)にはパソナ社とSPOBYで共同セミナーを開催しました。
健康経営と脱炭素経営の両立について経済産業省、自治体担当者も交えて議論しました。

健康経営と脱炭素経営の両立アプリ「SPOBY」の今後の展開

― SPOBYは今後、どのように変革をしていくのでしょうか。

SPOBYの開発の過程には常に時代にあった変革がありました。プロダクトをリリースした直後にコロナが流行ってしまったので、元々構想していた万歩計アプリから健康経営と脱炭素経営の両立アプリへと進化しました。これからは歩くだけでなく他のエコライフもスコアリング化できるような機能を付けたり、世の中のニーズを汲み取って日本国民の環境配慮活動を後押ししたいと思っています。

 
その第一弾が、フードロスを減らすソリューションとしてリリースした、脱炭素をした分のポイントをその日を過ぎてしまうと廃棄になってしまう食品と交換できるような機能です。選ぶならエコなライフスタイルの方が楽しいよねと思ってもらえるように今後も製品開発を進めてまいります。

▼夏目様のプロフィール
夏目恭行(なつめ たかゆき):株式会社スタジオスポビー 代表取締役。

テレビ業界にてドラマ制作に携わった後、大手ゲーム開発会社にてプロデューサーとして従事、数多くのスポーツゲームをリリース。その後同社にて携わったフィットネス事業における経験から、日本の健康課題解決のために株式会社スタジオスポビー(旧:株式会社CUVEYES)を2017年に創業。現在、健康促進と脱炭素を楽しく同時にできるアプリケーションSPOBYを展開している。
 
【夏目様の脱炭素ルーティーン】
日々SPOBYを使ってウォーキング。忙しくない日などは最寄駅から二駅前で降りて歩いて帰宅。夏目様自身が見本となって環境を配慮したアクションをレクチャーするなど周りも巻き込みながら脱炭素を推進しています。

  ▼お問い合わせはこちらから

株式会社STUDIO SPOBYホームページ: https://spoby.jp/

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