レーザープリンター販売終了、インクジェットに集中!エプソンの環境配慮とものづくりへの情熱

エプソン販売株式会社 グリーンモデル推進部 部長 子田 吉之(こだ よしゆき)
エプソン販売株式会社でグリーンモデル推進部 部長を務める子田 吉之氏に、同社が創業当初から取り組んできた環境と経営を両立する企業文化や、最近発表されたレーザープリンターの販売終了とインクジェットへの集中という経営戦略の背景を伺いました。
創業当初から変わらないものづくりへの情熱
― セイコーエプソン(以下エプソン)様は精密機器メーカーとして長年、創造と挑戦を繰り返してこられました。その基盤はどこにあるのでしょう。
いつの時代もエプソンの技術力を活かし、ものづくり魂と共に時代の変化に沿って変革してきたと感じています。
エプソンのデジタルプリンターの歩みは遡ること1964年10月。東京オリンピックにて採択された(セイコーの)時間計測と時刻印刷の機能を備えた「プリンティングタイマー」から始まります。そのタイマーの印字技術を応用して作られたのが、EPSONという名の由来ともなった小型軽量のデジタルプリンター「EP-101」でした。80年代に入ると小型軽量プリンターや、インクジェットプリンターの第一号製品も発表しました。
エプソンの祖業は時計製造なのですが、時計作りには高度な技術力が必要です。そこで培った様々な精密技術があったからこそ、今日の優れたプリンター事業があるのだと思います。
この時計で培った精密技術のことをエプソンでは以前から「省・小・精」という独自の言葉を使って表現しております。「省くこと、小さくすること、精緻さを突き詰めること」で、様々な分野でその時代にあったものづくりをしてきました。

環境と経営の両立にこだわる理由
― この度、2026年にオフィス向けレーザープリンターの販売を終了すると発表されました。これは業界内でもかなりの衝撃ニュースだと思いますが、決断に至った背景を教えてください。
これもまた技術力に自信があったからこそ、そして技術だけでなく、エプソンのパーパスである「省・小・精」の技術が顧客に価値をもたらすとともに、地球環境や社会にも貢献することに沿って経営判断をしているからこそこのような決断をしました。
オフィス向けビジネスインクジェットプリンターは80年代から研究を重ね、2008年ごろから販売を開始したのですが、その頃からインクジェットプリンターの方が従来のレーザープリンターよりも消費電力が少なく、結果排出するCO2量も少ない点に着目しておりました。
ただ、いかに早く、綺麗に出力できるかというお客様の選択基準では、正直、当時はレーザープリンターの方が評価は高かったのが現実でした。
しかし、現在はインクジェット技術の革新が進み、分速40枚~100枚のレーザープリンターと同等の生産性を有するインクジェットプリンターを続々と市場投入しています。
インクジェット技術は印字プロセスで熱を使わない為消費電力が非常に少なく、構造自体がシンプルな為、交換パーツが少なく廃棄物も少ない、つまり、インクジェットに置き換えるだけで、環境負荷の低減と生産性の向上を同時に実現することがでます。
今後の環境貢献のあり方を考えた決断です。
技術だけでなく、創業当初から現在に至るまで常に高い目標を掲げ、継続的に環境活動に取り組んでまいりました。昨年度には「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」というパーパスを制定しています。
世界に先駆けてフロンレスを達成したのも、創業時からの環境への想いがあってこそです。80年代、オゾン層を破壊するフロンは環境に大きく悪影響を与えることがわかり、エプソンでは1988年にフロンレスを宣言しました。全ての製品をフロンレスにするにはかなりの技術ハードルもあったので反発もあったのですが、創業当時からの高い環境意識と技術力を活かし、1992年、世界に先駆け日本で洗浄用特定フロン全廃達成し、1993年には日本だけでなく全世界で初めてフロンレスを達成しました。
正直、レーザープリンターの売上は大きいのですが、環境に配慮した製品であるインクジェットプリンターに集中することは、創業当時から環境と経営の両立にコミットしてきたエプソンとしては理にかなった判断だったなと思います。
自社のみではない共創で達成する環境目標
― まさに環境と経営を両立してきた貴社らしい判断だと感じました。ちなみにお客様で近年、環境への関心は変化が出てきましたか。

インクジェットプリンターが従来のレーザープリンターより電力消費量が少なく、CO2排出量も少ない点は、昔から営業活動の際には説明しておりました。しかし環境は付加価値であって、やはりコストや機能面に話が集中しがちでした。それが近年では、むしろ環境性能でインクジェットプリンターをお選びいただいているお客様が徐々に増えたと感じております。以前は全く環境分野に興味がなかったお客様からも、最近は環境に関する勉強会を開いてほしいという連絡があり、販売パートナー様からも環境性能についてぜひ詳細を勉強させてほしいとのお声もいただき、意識も変わってきていると感じております。
それは2020年に日本が「2050年カーボンニュートラル宣言」をしたのが後押ししていると思います。
インクジェットへの切り替えで省電力と脱炭素を実行
―そうなると価格が気になるところですが、従来のレーザープリンターと比べてどれくらい高くなるのですか。

いや、金額はほぼ同じです!インクジェットプリンターへの切り替えに別途投資費用を使わなくていいように様々な工夫をし、同等の水準に保っております。プリンターのランニングコストが同じであれば、電気代は下がりますのでコスト削減に繋がります。なので、既存のプリンターのリース契約が終了する際などに、インクジェットプリンターに切り替えてもらえれば、簡単に脱炭素が実行できます。
詳しく費用について詳しく知りたい方はぜひ下記のリンクからご確認ください。
【エプソンのスマートチャージ|料金シミュレーター】
https://www.epson.jp/products/bizprinter/smartcharge/simulation/
オフィスの使用電力の約10%は複合機やプリンターからの消費電力です。インクジェットプリンターに切り替えればそれを47%以上削減(注)することができます。
(注)エプソンのスマートチャージ対応A3複合機各機種のTEC値とENERGY STAR®画像機器基準Version3.0にて定められたTEC基準値で比較した場合の削減比率。
(<LX>シリーズは60ppm機、<LM>シリーズは40ppm機、<PX>シリーズは24ppm機のTEC基準値と比較)
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告によると「(産業革命前からの)気温上昇1.5度」は避けられない、地球温暖化の抑制は待ったなしの状態です。エプソンだけではこの状況を変えることはできませんが、多くのパートナー企業やお客様と共に実行すればこれ以上の気温上昇は抑えることができます。エプソンではパートナー企業様と共にカーボンマイナスを実現すると宣言しました。ぜひこの目標に向かって共に邁進してくれる企業様をお待ちしております。
▼子田様のプロフィール
子田 吉之(こだ よしゆき):エプソン販売(株) グリーンモデル推進部 部長。
1999年、エプソン販売株式会社入社。法人営業に従事。2019年から販売推進本部にてビジネスプリンター(インクジェット、レーザープリンター)、PaperLab(乾式オフィス製紙機)のマーケティングを担当。22年より現職。企業の脱炭素化への取り組みや働き方改革、紙の削減、電子ワークフロー、紙に依存しない働き方を紹介支援し、環境貢献活動を推進している。
【子田様の脱炭素ルーティーン】
プライベートでもペーパーレスを推進。メモはiPadで取り、そのiPadの充電は太陽光パネル搭載の充電器を利用している。また家では家庭菜園をしており、その栽培にはベランダに設置した太陽光パネルから電気を使っている。
▼お問い合わせ
EPSONインクジェットプリンターページ:https://www.epson.jp/products/bizprinter/smartcharge/?fwlink=productstop_4