海外拠点の脱炭素推進、最適な再エネソリューションを活用した企業全体温室効果ガス排出量削減を

株式会社ECOLOGICA 代表取締役 伊集院 誠(いじゅいん まこと)
TBMは企業単位で温室効果ガス排出量を可視化し削減施策までを提案するプラットフォーム「ScopeX」を展開しています。その削減施策パートナーとしてコラボレーションしている株式会社ECOLOGICA(エコロジカ:以下ECOLOGICA)は、世界110カ国で太陽光発電事業を展開する専門商社PROINSO(プロインゾ)の日本総代理店で、日本企業の海外拠点における再生可能エネルギー導入について、部材調達からコンサルテーション、管理まで幅広くサービスを展開しています。伊集院誠代表に、創業の背景やサービスの現状について伺いました。
3.11の震災が契機、再生可能エネルギーで社会を豊かに
―ECOLOGICAを創業した経緯を教えてください。
私は10歳からオーストラリアで育っているのですが、心は日本人です。2011年の東日本大震災をオーストラリアの報道で知ったとき、日本に対して何か社会貢献ができないものかと、2012年末に当社を起業しました。震災によって、人々の生活だけでなく美しい自然も破壊されました。そこで、人々が楽しく暮らしていける環境を守り、残していくことができるビジネスをしていこうと思い、脱炭素社会構築の鍵となる再生可能エネルギーに注力することにしました。
そこで、グローバルに太陽光発電事業を展開する専門商社のPROINSOと業務提携を行い、日本をはじめ日本企業の海外拠点に再生可能エネルギーを導入するサービスを展開したのです。
日本企業の多くはアジア圏に製造拠点や事業所を持っています。そして多くの場合、その企業で最も温室効果ガスを排出している拠点が海外だったりするのです。PROINSOはイギリスに本社を構え、アジア圏をはじめ世界20ヶ国に事業所がありますので、企業の課題を幅広く解決できる仕組みを提供しています。

(左:経営戦略部 マネージャー 河合氏)
業種ごとに異なる再エネ導入効果、それぞれに最適な方法を設計
― 脱炭素経営に関して近年注力している企業が増えてきたかと思いますが、日本市場はいかがでしょうか。
2017年、2019年とCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に参加させていただいた際に、グローバル市場はすでにネットゼロ(温室効果ガスの排出量と除去量の差し引きがゼロの状態)に向かって歩み始めているのだなと感じました。自社の温室効果ガス排出量を測り、管理し、削減して排出量ゼロにする流れが始まっており、カーボンクレジットによるカーボンオフセットの活用も活発でした。
カーボンオフセットとは温室効果ガス排出量を吸収できる特定のプロジェクトへ金銭的支援を行い、対価として支援金額に応じた温室効果ガス排出量分を相殺できる制度のことです。私たちも2019年より、日々の削減努力に加え、カーボンクレジットを使ってECOLOGICAで排出している温室効果ガスをゼロにする、カーボンニュートラルを達成し続けています。
自分たちでも自社排出量をゼロにできたので他の企業もできると思い、日本企業へ再生可能エネルギーだけでなくカーボンクレジット利用を促したのですが、その頃まだまだ日本市場では温室効果ガス排出量削減に関する取り組みは活発ではありませんでした。転機が訪れたのは2020年10月、当時の菅義偉首相による「日本は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という宣言です。そこから主にプライム市場上場企業からのお問い合わせが増え、特に海外拠点に関して温室効果ガス排出量を削減したいリクエストが増えました。
再生可能エネルギーによる温室効果ガスの排出量削減は、業種によってその効果がバラバラです。例えば半導体や電子部品だと屋上設置型の太陽光発電よりも小規模のバイオマス発電が温室効果ガス削減効率が良いですし、家電やコンピュータ製造工場だと屋上型の太陽光発電の方が効率が良かったりします。

(ECOLOGICA社提供:再生可能エネルギー最適ソリューション業界マッピング)
立地や想定する電力利用量も再生可能エネルギーを検討するのに大切な要素なので、私たちは太陽光だけでなく各企業の需要に沿って様々な項目に関してヒアリングをさせていただき、スコアシートを使って最適な温室効果ガス排出量削減の方法を提案します。
日本本社だけで意思決定しても海外拠点の賛同は得られない
―海外拠点の再生可能エネルギー導入はどのように進めていくのでしょうか。
通常は、日本の本社に所属するサステナビリティ推進チームが主体となって推進してくれます。ですが、度々ぶつかる課題として、海外の現地工場と脱炭素に関する温度感が違うことや、工場に工事が入ることにより通常業務に支障が生じるのではないかという心配から協力を得にくいことがあります。日本本社だけで意思決定して海外拠点に再生可能エネルギーの導入を推進させようとすると、現場から反発されます。
導入前にまず、なぜ今このような取り組みが必要なのか現状を説明し、ご理解いただくところから私たちはサポートに入ります。電力を再生可能エネルギーに替えることによって自社で発電をし、結果的には電力使用料金削減につながることもありますので、その試算も併せて本社と工場現場にご提案させていただいています。
メディアも運営、行動変容はまず知ることから始まる
―脱炭素に関する記事や用語に関する解説もECOLOGICAさんが運営するメディア「NET ZERO NOW」で数多く配信してますが、メディアを立ち上げた背景を教えてください。
前述した通り、同じ企業でも担当する部署によって脱炭素に関しての知識の差があったり、そもそも脱炭素に関して知らない方がいたり、まだまだ情報が周知されていない状況です。まずは知って関心を持つことが行動変容の始まりです。今のままでは2050年に温室効果ガス排出量削減実質ゼロには到底できません。情報を入手して、周りと語って、興味ある分野をさらに学んで、その後に排出量の算定をして削減していく。この一連の流れが成立して初めて目標達成に近づけます。
本当に温室効果ガスだけが問題なのか、二酸化炭素だけが悪なのか、疑問も持って正しい情報を調べて知ってほしいと思っています。正しい情報を知ることができれば、どのような行動をするべきなのかはっきりと見えてきます。NET ZERO NOWでは国内外の環境関連ニュースや関連用語を解説し、一人でも多くのビジネスパーソンに正しい現状理解をしていただけるよう情報発信をしています。
▼NET ZERO NOW(https://netzeronow.jp/)
日本はグローバル市場から見ると脱炭素の動きが遅いと言われていますが、実は日本人が最も脱炭素に向いているといえます。「もったいない」という言葉は日本にしかありません、そしてこの道徳観から、日本には古来よりものを大切に長く使う習慣が根付いています。この素晴らしい地球の環境を次の世代へ良い状態で渡すために、ぜひ共に行動していきましょう。
▼伊集院様のプロフィール
伊集院 誠(いじゅいん まこと):2012年ソーラー・フォー・ジャパン株式会社を創業、太陽光をはじめ再生可能エネルギーの仲介・部材調達・コンサルティング業務に従事。2017年環境経済人賞を受賞、同年および2019年にCOPに参加。2020年から国連Climate Neutral Nowに参加、カーボンニュートラルを達成。現在日本企業の海外拠点に対し再生可能エネルギー導入のコンサルティングサービスを提供、国内外環境情報を発信するメディア「NET ZERO NOW」を運営している。
【伊集院様の脱炭素ルーティーン】
幼少期よりオーストラリアで育ち、現在もオーストラリア在住。自宅の電力は太陽光を使い、雨水も使いながら節水。ものはなるべく使わず、長く利用する。自然豊かな場所で暮らしている背景から、休日もサーフィンやピクニックを楽しんで温室効果ガスをできるだけ排出しない過ごし方をしている。
▼お問合せはこちらから
PROINSO JAPANホームページ:https://proinso.co.jp/
お問合せ:https://proinso.co.jp/contact/