日本のカイゼンが更に進化│業務効率化や脱炭素を超えた、エイトスが目指す個人のエンパワーメントとは?

株式会社エイトス 代表取締役 嶋田 亘(しまだ わたる)

カーボンニュートラルの潮流に乗って、企業のIT化やDXの業界にも追い風が来ています。背景には、ITによる業務効率化がCO2削減につながる可能性があるからです。そんな中、現場作業者向けSaaS「Cayzen(カイゼン)」は目の前の業務効率化やCO2削減だけにとどまらず、さらにその先を見据えたサービスとして展開されていました。

トヨタのカイゼンが生まれた地、愛知県豊田市に本社をおく株式会社エイトス、代表の嶋田亘様に、プロダクトへ込めた想いや今後の展望についてお伺いしました。

目次

経営戦略とテクノロジーの融合。カイゼンから始まった多彩なキャリアパス

― これまでのご経歴を踏まえながら、製造業向けサービスで起業しようと思ったきっかけを教えてください

   トヨタ自動車をはじめ製造業が盛んな愛知県豊田市で生まれ、高校まで地元で過ごしました。祖父や父がサラリーマンではなかったこともあり、キャリアの選択肢に漠然と「起業」はありましたが、当時は全く意識していませんでした。大学に入るタイミングで上京、起業への想いが強くなったのは4年生の時期です。経営者の話を聞きに行ったり、バックパッカーをしながら多様な価値観に触れたりするなかで、よく自己対話を繰り返していました。そこで、一過性ではなく継続的に社会へインパクトを与え続ける仕組みを作りたい、より個人がエンパワーメントする仕組みをつくりたい、という想いがどんどん強くなりました。私の場合、その手段が起業だったというイメージです。

日本だけでなく海外も含めた商流を学びたいという想いから、新卒では豊田通商へ入社。自動車部品のサプライチェーン管理を行いました。倉庫や工場など現場へよく足を運びました。ここでのオペレーション改善経験が、今のCayzen(カイゼン)開発のヒントにもなっています。総合商社と言ってもトヨタの名前が付く会社ですので、業務のカイゼン意識はとても高かったです。当時はそれが当たり前だと思っていたので、3年後に退職したときに初めて、特別な環境だったことに気づきました。

起業する前に、経営の修行を積もうとコンサル会社へ転職。経営戦略やM&A後のPMI(Post Merger Integration)設計、自動車部品の新規事業コンサルなどを行いました。ここで企画書のアウトプットや、中期経営計画書の作成等、ほしいスキルを身につけることが出来ました。

その後、テクノロジーについての知見を深めるためにITベンチャーへ転職。ブロックチェーンを活用する会社で経営企画や社長室長を務めました。ここで働きながら起業するためのビジネスモデルも探していたときに、サンフランシスコに3ヶ月ほどアクセラレータプログラムに参加する機会がありました。海外でデスクレスSaaSが増えていたタイミングということもあり、このとき今のカイゼンのヒントとなるデスクレスSaaSに出会いました。
日本でも働き方はトップダウンより個人が尊重される時代と言われるようになっていたため、「個人をエンパワーメントする」という価値観と今の時代がマッチするのを感じました。

自己対話を通して気づいた「エンパワーメント」という価値観とその原体験

― 社会人になってからのご経験は、自己実現に向けて一直線という印象ですね。エンパワーメントというキーワードはどんな体験を通して生まれたのでしょうか。

   これは私自身が、エンパワーメント(能力開発)される仕組みのおかげで今がある、ということに気づいたのがきっかけです。もう少し具体的に言うと例えば学生時代。私は奨学金のおかげで大学に行くことができました。それは、奨学金という選択肢を作ってもらえたからです。新卒で入った会社でも、新入社員には教育の仕組みがあって、育ててくれる人がいる環境がありました。そう考えると、これまで自分は引き上げてもらってきた、エンパワーメントされる仕組みのおかげで今の自分がある、という感謝の気持ちでいっぱいになりました。それと同時に、「もっと個人が輝ける仕組み」をきちんと次の世代に残すべきだと強く感じたのが原体験です。

弊社が掲げているMission「Innovation by All~すべての労働者が当事者として変化を起こせる社会をつくる~」もここから生まれました。

エイトスがサービスを通して実現したいのも本質はここです。もっと輝ける・才能を発揮できる人たちの可能性を、外部の環境や仕組みによって制限しない社会を作りたいです。

現場のヒアリングを通して見えてきたプロダクトの正解

― サービスの先に「個人のエンパワーメント」があるのはユーザーとしても嬉しいですね。そんなデスクレスSaaS「Cayzen(カイゼン)」について、開発のこだわりやエピソードを教えてください。


今でこそ「デスクレスSaaS」という言葉が定着するくらい市場は拡大していますが、当時はこれといったプロダクトの型や正解がなかったため、開発ももちろん大変でした。ユーザーの労働環境が特殊なのが大きな要因です。合計30社以上にヒアリングの依頼をし、現場作業者のところへ何度も出向いてヒアリングを繰り返しました。労働時間や労働環境、業務フローや抱えているミッション等、ユーザー様の解像度を上げるところから始めました。

現場作業者ならではの機能として、モニタの利用があります。現場の方は1人1台パソコンや社用携帯をもっているわけではないため、情報共有はモニタに表示するケースが多かったです。そのためモニタ表示を前提としたレイアウト設計やUIを意識しました。

また、お客様ごとに仕様の違いが多かった評価とフィードバックの工程を、お客様ごとにカスタマイズできるようにした点も好評です。

プロダクトの進化で広がる創造性とコミュニケーション│業務効率化からエンパワーメントへ

―プロダクトの型や事例がない中で、形を作っていくのは、想像以上に大変だったと思います。そんなCayzenもリリースから2年が経ちます、今後の展望について教えてください。

大きく3つあります。
1つ目は、昨今の気候変動対策に合わせた開発です。具体的には脱炭素やESGについても現場の改善活動により削減したインパクトを見える化できるような開発を進めています。

2つ目はAIの実装です。個人のアウトプットに対してAIからアイディアをもらうことで、個人の発想や考え方がより膨らみ、社内のコミュニケーションも活発になります。
現場のカイゼン活動を通して部署間のコミュニケーションも増えるため、これが社員の教育や育成、オンボーディングのきっかけになると嬉しいです。このAIが本格的に実装すると業務効率化や原価低減だけでなく、本来やりたかった個人の「エンパワーメント」に向けた成果が期待できるので、ここからの開発フェーズは特に楽しみです。

3つ目はグローバル展開です。
日本のカイゼンが世界の基準になったように、もう一度日本からグローバルスタンダードを作りたいと思っています。2,3年後には海外展開も視野に入れて事業を推進しています。

業務効率化

▼嶋田様プロフィール
嶋田 亘(しまだ わたる)
1988年生まれ、愛知県豊田市出身。早稲田大学法学部卒業後、豊田通商株式会社に入社。自動車部品のサプライチェーン管理や、現場における物流改善等に従事。その後コンサルティング会社、ITスタートアップを経て現職。2021年5月に改善提案クラウド「Cayzen」をリリースし、改善提案制度をDX化することを通して、全ての労働者の方がよりエンパワーメント(能力開発)出来る仕組みづくりを支援。

【嶋田様の脱炭素ルーティーン】
身近なところだと、エアコンの温度設定や無駄な電気をつけない省エネと節電、これは徹底しています。あとはマイボトルの利用ですね、外出するたびに出ていたペットボトルのゴミ、これから解放されたのは大きいです。

▼お問い合わせはこちらから
株式会社エイトスホームページ:https://eitoss.com/company
お問い合わせ:https://eitoss.com/form/contact

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