農業で脱炭素ブランドを築く│北海道のスタートアップが掲げる挑戦と決意

株式会社H.Eファーム
取締役社長 都筑 憲一 様
ScopeX導入前のお困りごとについて教えてください
弊社はH.Eグループの子会社として2020年に創業した農業生産者ですが、農業大国の北海道では超後発となります。そのため品質や販路も競合と比べて弱く、農地も耕作放棄地を利用しているため収穫量もそこまで多くない、そういった逆風だらけのスタートでした。
しかし企業である以上、競争が起こるのは当然ですし、生産者として生き残るためには、お客様に自社の製品を「良いモノ」と認識してもらわないといけません。そのためにはブランドを作っていくしかない、しかし私達にどんなブランドが作れるのか。2021年に私が入社して最初に取り組んだ課題は、このブランド作りでした。
自分たちの活動を振り返ると、農地は耕作放棄地を開墾して利用しているため、一般的に言われている耕作放棄地のデメリット解消に貢献していました。トラクターの稼働効率UPによる運行回数削減やバイオディーゼルの利用もCO2削減になります。また、もともとH.Eグループの祖業である営農型太陽光発電も、再エネ調達として脱炭素に貢献していました。こういった普段当たり前だと思っていた取り組みをヒントに、「脱炭素の農業」を自社のブランドとすることにしました。既に他の農家さんで実施されている「生産者の顔の見える化」も考えましたが、それだけでは先輩農家を追い越すのに時間がかかると思っていたので。

今年は収穫量増加に伴い全体のCO2は多少増加していますが、単位面積あたりの排出量は変わっていませんし、収穫量(kg)当たりのCO2排出量も減っている可能性が高いです。
このように農家として本気でCO2削減に取り組んでいる、きちんと成果も出ているという姿勢を見せることによって、お客様から共感される、信頼される。これが目指すブランドの1つだと思っています。
脱炭素をブランドにしている農家はまだほとんどないですし、農業に再生可能エネルギーを使っているところも多くありません。今は製造業に対して再生可能エネルギーでのものづくりが求められていますが、食べている農産物は再生可能エネルギーを使わなくていいの?脱炭素していなくていいの?っていう時代が来ると思うんです。その時代を待つのではなく、自分達から提案してブランドとして作りに行く。そこで自分たちがイニシアチブを持っていく。そういうことをやっていけば後発の農業者でも、もっと楽しくスタートを切れるのではないか。そういう事例ができれば日本の農業ももっとよくなると思います。
CO2算定サービスの導入と、ScopeXを選んだ決め手を教えてください。
脱炭素の取り組みは創業から行っていましたが、見える化ができていないため、どのくらい削減できているかも分かりませんでした。そこでCO2見える化サービスの情報を取り始めました。そんなときにScopeXのWeb広告を見つけて問い合わせをしたのがきっかけです。
導入の決め手は、TBMがものづくりをしていた、LIMEXを作っていたという点です。やはりメーカーとして同じ環境課題に取り組んでいるというところは心強かったです。ものづくりのことを考えている会社が、ものづくりのお困りごとを解決するのは、すごく自然で違和感がない。同じ目線でものづくりを見られると思うんですよね。そこへの共感や安心感は大きかったです
具体的なCO2算定作業は正直めんどうだと思いました(笑)。しかしブランディングの背景もあったし、やらない選択肢はなかったですね。大変だけど絶対にうちには必要だと思ったので。会社の脱炭素は私の考え、私の判断で進めていますが、正直社内からの反対も多かったです。実際に作業をする部署は負担が増えますし、本当にメリットあるの?CO2見える化して増えていたらどうするの?という意見もありました。しかし、その現実に向き合って改善することが企業活動じゃないですか。中長期で考えた時に目先のCO2が増えた減ったはそこまで重要ではないので。
ScopeXを導入して良かった点はありますか?
今は2022年だけでなく、2023年も6月まで算定しています。これにより前年比で見られるようになったのですが、これがすごく大きい。営業ツールにこれから活用できると思うと楽しみだし、わくわくしますね。増えた、減ったが分かること、今まで見えなかったことが見えるようになるって本当に大きい変化なんです。見えることにより改善策もより的確になりますしね。
今後サービスへ期待することはありますか?
社員のCO2算定に関する知識はもっと必要なので、研修や勉強会の要望はする可能性が高いです。あとは日本の排出係数だけでなく、輸出先のEU排出係数にも対応できると嬉しいですね。「輸出EXPO」に参加してみたところ、食品はEU基準が一番厳しくて、そこが基準になっていました。これまでのようにオーガニック訴求はそれほど強くなくて、今は脱炭素訴求が主流のようですね。
今後の展望について教えてください
世の中の脱炭素はまだ点の状態だと思うので、これを線にしていきたいです。横(物流/商社/店舗等)と連携して業界全体で一緒に削減して、より大きな脱炭素活動にしていきたい。それが、業界全体の脱炭素への理解にもつながると思います。
あとは、今の取り組みでより優位性を確立したいですね。一般社団法人を立ち上げ、脱炭素した農産物に対して付与できる認証機関(脱炭素認証農産物)も作成したので、この普及も進めていきます。
うちもベンチャー企業なので、出来でき上がったソリューションに乗っかるのはつまらない。我々ももっと突き抜けた、新しくて、楽しい農業を作っていきたいですね。

【都筑様の脱炭素ルーティン】
出張時の航空機利用はCO₂排出量で選択しています。あとは家の裏庭を芝生に変更したり、今後は駐車場をアスファルト舗装を取りやめてDIYでカバークロップにする予定です。
(イワダレソウやスベリヒユなどで自生可能な植物を選別中)
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